南海トラフ地震、いま何が起きている? 気象庁「特段の変化なし」でも切迫性は高い

2026年08月11日 11:38

南海トラフ

地震への備えとして確認しておきたい、スマートフォンの緊急地震速報設定、家族との連絡方法、集合・避難場所のイメージ(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

気象庁は7日、南海トラフ周辺の最新の地殻活動について、現時点では大規模地震の発生可能性が「平常時」と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていないと発表しました。しかし、その「平常時」自体が決して安全を意味するわけではありません。南海トラフ沿いではM8~9クラスの大規模地震が今後30年以内に発生する確率は高いと評価されており、昭和東南海・南海地震から約80年が経過していることから、気象庁は「平常時であっても切迫性の高い状態」と説明しています。お盆休みを前に、観測の現在地と警戒の捉え方を整理します。

■ 結論は「特段の変化なし」――プレート境界に変化を示すデータなし

 気象庁は7日午後5時、南海トラフ周辺の地殻活動の最新状況をまとめた「南海トラフ地震関連解説情報」を発表しました。それによると、南海トラフ地震の想定震源域において、プレート境界の固着状況に特段の変化を示すデータは確認されていません。
現時点で、平常時と比べて大規模地震の発生可能性が相対的に高まったと考えられる特段の変化は確認されていない、というのが今回の観測上の結論です。

■ 「異常なし」ではなく、「平常時との比較」である理由

 注意が必要なのは、「特段の変化がない」という発表を「当分は地震が起きない」と受け止めてはならない点です。

 気象庁は資料の注記において、南海トラフ沿いで発生するM8~9クラスの大規模地震について、「平常時」においても今後30年以内の発生確率は高く、昭和東南海地震(1944年)や昭和南海地震(1946年)の発生から約80年が経過していることから、「切迫性の高い状態」にあると説明しています。

 今回の発表は、大規模地震の発生可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化が確認されなかったことを意味しており、「地震が起きる可能性が低い」という意味ではありません。平常時そのものでも大規模地震の切迫性が高いことが、この情報を理解する上での前提になります。

■ 8月2日の日向灘M5.3はどう評価されたか

 直近で発生した具体的な地震についても評価が示されています。8月2日午前4時10分、日向灘の深さ21kmを震源とするマグニチュード(M)5.3(最大震度3)の地震が発生しました。

 発震機構は東西方向に張力軸を持つ正断層型で、フィリピン海プレート内部で発生したものです。気象庁は、その規模から「南海トラフ沿いのプレート間の固着状態の特段の変化を示すものではない」と評価しています。

■ 四国・紀伊半島で観測された「ゆっくりすべり」、でも従来から観測される現象

 観測データでは、四国中部(7月16日~23日)、紀伊半島西部(7月20日~23日)、四国西部(7月29日~継続中)などで、深部低周波地震(微動)と、それに同期するわずかな地殻変動(ひずみ変化)が観測されました。また、2022年初頭からは静岡県西部から愛知県東部にかけて長期的ゆっくりすべりも観測されています。

 これらはプレート境界深部における「短期的ゆっくりすべり」や「長期的ゆっくりすべり」に起因すると推定されています。

 気象庁は、これらを「従来からも繰り返し観測されてきた現象」としたうえで、今回の総合評価では大規模地震の発生可能性が平常時より相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていないとしています。

■ 7月28日の熊本M7.1の掲載と評価

 今回の資料には、7月28日に熊本県熊本地方で発生したM7.1の地震(最大震度7)についても一覧に掲載されています。気象庁は、この地震を「地殻内」で発生した地震として整理しています。

 その上で、今回の各種観測結果を総合的に判断し、南海トラフ地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すデータは得られていないと評価しています。

■ 制度解説:今回の「関連解説情報」は定例評価

 そもそも、なぜこのタイミングで「南海トラフ地震関連解説情報」が提示されたのでしょうか。

 気象庁では、南海トラフ周辺の地震活動や地殻変動の状況を定期的に評価するため、有識者で構成される「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を毎月1回開催しています。今回の発表も、前回の検討会(7月7日)以降の調査結果を取りまとめた「定例」の評価報告です。何か突発的な異常事態が発生したために急遽出された情報ではありません。

■ 「臨時情報」との違いを理解する

 ただし、「南海トラフ地震関連解説情報」という名称の情報が常に定例発表というわけではありません。この情報自体は定例評価だけに使われるものではなく、南海トラフ地震臨時情報の発表後に、地震活動や地殻変動の推移を説明する際にも発表される仕組みになっています。

 一方、「南海トラフ地震臨時情報」は、南海トラフ沿いで異常な現象が観測され、大規模地震との関連について調査を開始する場合などに発表される情報です。調査結果に応じて「巨大地震警戒」「巨大地震注意」「調査終了」などのキーワードが付されます。今回発表されたのは、そうした臨時情報ではありません。

■ お盆の帰省・旅行中に確認しておきたい備え

 お盆休みに向けて、普段とは異なる土地へ帰省や旅行に出かける人が増える時期です。南海トラフ地震の発生時期や場所、規模を高い確度で予測することはできません。だからこそ、旅先や移動先で地震に遭遇した場合を想定した備えが実効性を持ちます。

・滞在先や宿泊施設周辺の避難場所・避難ビルの位置確認

・海沿いに滞在する場合の津波避難経路の把握

・スマートフォンの緊急地震速報設定や家族との連絡方法の事前確認

 「特段の変化がない」との評価であっても、平常時から地震への備えを続ける必要があります。帰省や旅行で普段と異なる場所に滞在する機会が増える時期だけに、避難場所や津波避難経路を確認しておくことが重要です。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)