企業におけるAI活用の深さの差を示したイメージ。OpenAIの調査では、アクティブユーザー1人当たりの出力トークン数でみた上位10%の「フロンティア企業」と中央値周辺の企業との差は、1月の2.6倍から6月には8.3倍へ拡大した(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
OpenAIの調査では、企業のAI活用が質問への回答などの「支援」から、複数の作業をAIに任せる「実行」へ移りつつあります。アクティブユーザー1人当たりの出力トークン数で上位10%に入る企業と中央値周辺の企業の差は、1月の2.6倍から6月には8.3倍へ拡大しました。先行企業では、AIを企業データやツール、業務手順と結び付ける機能の利用が進んでいます。また、Codexの利用は法務や営業、採用、マーケティングなどにも広がっています。今後はAIそのものを導入するだけでなく、既存業務とどのように接続し、安全に実行させるかが企業間のAI活用の深さを左右しそうです。
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OpenAIは12日(現地時間)、企業における生成AI活用の実態を詳細に分析した調査レポート「From assistance to execution: How enterprises put AI to work」を公表しました。企業におけるAI利用は、質問への回答や文章作成といった人間を補佐・支援する段階から、複数の手順を伴う複雑な業務をAIに委ねる「実行(Execution)」の段階へ移行しつつあるとしています。一方、AIを積極的に活用する上位企業と中央値周辺の企業との利用量の差は、1月の2.6倍から6月には8.3倍へと拡大しており、AIの業務プロセスへの組み込みの深さに企業間で差がみられます。
■企業AI、「質問する」から「仕事を任せる」へ
OpenAIはレポートの中で、企業でのAI利用スタイルが「Assistance(支援)」から「Execution(実行)」へ変化していると分析しています。
従来型の活用法は、人間が「提案書の構成をどうすべきか」などとAIに問いかけ、回答を参考に人間が作業を進める「支援」が中心でした。これに対し足元では、AIエージェントが複数の情報源から必要な情報を集め、ファイルや資料を作成し、最終的な確認を人間が行うといった「実行」の形へと移行しつつあります。
同社によると、ChatGPT WorkやCodexといった企業向けツールは、ファイル作成やツール操作を含む複数ステップのタスクを実行可能です。6月時点における企業顧客のChatGPTとCodexを合わせた合計出力トークンのうち、Codexが64%を生成しました。OpenAIは、エージェント型のワークフローでは長い複数ステップのタスクを実行するため出力が多くなる傾向があり、この数字はCodexの利用頻度と、タスクごとの出力量の双方を反映していると説明しています。
■先行企業と中央値企業、利用差は2.6倍から8.3倍へ
企業間におけるAI利用の「深さ」の乖離も示されています。OpenAIは毎月のアクティブユーザー1人あたりの出力トークン数で企業顧客を比較し、上位10%を「フロンティア企業(frontier firms)」、中央値周辺(45〜55パーセンタイル)に位置する企業を「標準的な企業(typical firms)」と定義しています。両者の平均利用量の差は、1月時点の2.6倍から、6月には8.3倍へ拡大しました。
わずか5ヶ月で差が広がっていますが、この「8.3倍」は成果や生産性が8.3倍になったという意味ではありません。出力トークン数は、企業が業務プロセスにAIをどれだけ深く関与させているか(depth of use:活用の深さ)を測定するための代理指標としてOpenAIが位置付けているものです。
■先行企業で進む「会社の仕事」とAIの接続
活用の深さの差とあわせて、OpenAIはAIエージェントを社内固有のデータや既存ツール、業務手順と接続させる高度な機能の利用状況にも着目しています。
週次アクティブユーザー(WAU)に占める関連機能の利用割合を比較すると、以下のようになります。
・Plugins(社内システム・外部ツール連携)
・フロンティア企業:21%
・標準的な企業:9%
・Skills(業務手順やノウハウの組み込み)
・フロンティア企業:19%
・標準的な企業:3%
「AIツールを導入したか」という段階にとどまらず、「自社固有の業務手順へAIを組み込む」高度な機能の利用についても、フロンティア企業と標準的な企業との間に差がみられます。
■Codex、法務では108倍 AIエージェントが非技術部門へ
AIエージェントの利用が、従来のソフトウェア開発領域を超えて広がっている点も調査の特徴です。
2月以降における企業向けCodexの週間アクティブユーザー数(WAU)の伸び率を見ると、技術部門以外の領域で著しい増加が観察されました。
・法務部門:108倍
・営業部門:41倍
・採用・人事部門:41倍
・マーケティング部門:26倍
・エンジニアリング部門:5倍
これは業務効率が108倍になったことを意味するものではなく、週間アクティブユーザー数の増加を示す指標です。Codexの利用がソフトウェア開発部門だけでなく、法務や営業、採用、マーケティングなどの知識労働部門にも広がっていることが示されています。
レポートの中でOpenAIが紹介した企業事例によると、英航空大手ヴァージン アトランティック(Virgin Atlantic)では、エンジニアリング部門が従来2週間を要していたレガシーコードのリファクタリング(再構築)を30分で行ったほか、製品部門では数週間かかっていた競合調査を数時間で終え、5カ年のデジタル戦略策定に活用したとしています。
■若手社員の利用が多い傾向
組織内における利用主体の傾向についてもデータが示されています。AI導入から6カ月が経過した企業では、キャリア初期の若手社員(early-career employees)が経営幹部(executives)に比べ、週平均で13件多くメッセージを送信していました。利用量は若手社員で最も多く、職位が上がるにつれて低下する傾向がみられました。
OpenAIは企業側への示唆として、AIを効果的に活用している社員を見いだし、そのワークフローを可視化することで、有効な活用方法を組織全体へ広げることができるとしています。
■「AIを導入したか」から「AIに何を任せるか」へ
生成AIの企業導入が進むなか、焦点は単にAIを利用できる環境を整える段階から、自社固有のデータやツール、業務手順と結び付け、実際の仕事をどこまで安全に委ねられるかという「組み込み」の段階へ移行しています。
一方で、AIエージェントに企業データや社内業務を扱わせるには、アクセス権限の明確な管理やガバナンス、人間による確認が欠かせません。AIを導入する段階から「既存の仕事の仕組みへ組み込む企業」へと進められるかが、今後の企業間のAI活用の深さの差を左右する可能性があります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













