豪州、アンチモン国内加工へ事業化調査 年5000トン施設構想も浮上

2026年10月16日 11:50

オーストラリアの鉱物処理工場イメージ

アンチモンなどの重要鉱物を加工する産業施設のイメージ。豪州ビクトリア州は、精鉱から金属への国内加工能力を育成するため、技術検証や事業化調査への支援を進める。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

豪州ビクトリア州政府は2026年10月14日、重要鉱物であるアンチモンの国内加工能力の育成に向け、Southern Cross GoldとGekko Systemsを助成制度(Advancing Antimony Grants)の対象に選定したと発表しました。両社は計75万豪ドル超の支援対象となり、精鉱の加工技術や供給網の検証を行います。採掘(上流)にとどまらず国内で製錬・加工(中下流)まで手掛ける供給網の構築を目指すもので、将来の商業施設を見据えた事業化調査を支援します。また、州選挙の公約として年間最大5,000トン規模の国内加工施設構想も提示されています。

本文
 オーストラリアのビクトリア州政府は2026年10月14日、アンチモンの州内加工産業の育成に向け、探査・開発を手掛けるSouthern Cross Goldと鉱物処理技術を持つGekko Systemsの2社を助成プログラム(Advancing Antimony Grants)の対象に選定したと発表しました。両社は合わせて75万豪ドル超の支援枠の対象となり、資金契約の最終化が進められています。

 今回の助成措置について、州政府の鉱物資源担当部門であるResources Victoriaは初期開発段階(early-stage development)の取り組みと位置付けています。商業加工工場の直接的な建設資金ではなく、ビクトリア州内でアンチモンを精製・加工するための技術的選択肢やサプライチェーンの実行可能性を調査し、将来的な設備投資判断に向けた事業計画(business case)を構築することが目的です。制度上、対象活動の完了・報告期限は2027年3月となっています。

 助成対象となったSouthern Cross Goldは、同社がメルボルン北約60kmで開発を進める「サンデー・クリーク(Sunday Creek)」金・アンチモンプロジェクトに関連し、同案件由来の精鉱を使ったパイロット規模の加工・金属化試験を計画しています。同試験では、アンチモンおよび金の回収率、精製されるアンチモン金属の品質、環境許認可に必要なデータの収集や残渣の評価を行い、商業施設の設計に必要な基本プロセスを検証する方針です。

 ビクトリア州政府は9月、サンデー・クリークにおける地下探査坑道の開設を新たな鉱山開発への重要な一歩と評価しています。現在約100人が従事する同プロジェクトは、順調に進展した場合、約500人の恒常雇用を創出し、事業開始後の最初の10年間で55億豪ドル超の経済効果を州内にもたらすと試算されています。

 また、Southern Cross Goldが10月15日に公表した資料によると、与党労働党(Carroll Labor)は11月28日の州選挙で再選された場合、州北部のアンチモン加工施設整備に2,000万豪ドルを投入するとの選挙公約を示しました。同社によれば、この構想は国内の生産者が広く利用できる施設として年間最大5,000トンのアンチモン金属を生産できる能力を想定しており、建設時に約200人、稼働時に約60人の雇用創出を見込んでいます。

 重要鉱物であるアンチモンは、難燃剤や半導体、蓄電池、防衛用部材など多岐にわたる用途を持ちます。しかし、鉱床から掘り出した鉱石や選鉱後の精鉱を製品化するには、製錬・精製などの加工工程が不可欠です。採掘能力を有していても加工工程を国外に依存している場合、加工段階で生じる付加価値や供給管理を国外に委ねることになります。

 今回のビクトリア州による支援は、鉱石・精鉱の供給に加え、国内での製錬・加工能力を高める動きの一環と言えます。重要鉱物を巡る施策では、単なる採掘だけでなく、国内に加工・精製能力を持つことがサプライチェーン強化の課題となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)