今回のニュースのポイント
会計検査院は2026年10月19日、会計検査院法第36条に基づき、政府開発援助(ODA)の無償資金協力2事業について「援助の効果が十分に発現していない」とする意見を表示し、外務省と国際協力機構(JICA)に改善を求めました。対象はモザンビークの移動式変電所整備(贈与額10億5,957万円余)とウズベキスタンの点字機材整備(同985万円余)の計10億6,943万円余です。現地の運用環境や事前確認の不備が主な原因として挙げられています。
本文
会計検査院は2026年10月19日、外務大臣および独立行政法人国際協力機構(JICA)理事長に対し、政府開発援助(ODA)の実施状況に関する意見表示を行いました。検査の対象となった5カ国の無償資金協力82事業(贈与額計357億328万円余)のうち、2事業(贈与額計10億6,943万円余)において事業目的が十分に達成されず、援助の効果が十分に発現していない事態が認められました。
不十分と指摘された一つは、モザンビークでの無償資金協力「送変電網緊急改修計画」(贈与額10億5,957万円余)です。同事業では首都近郊の変電所改修とともに、事故や点検時に柔軟に対応できる移動式変電所を2020年1月に導入しました。しかし2021年11月、現地変電所の不具合に伴い多重接地システムから切り離して単独運用していたところ、落雷により変圧器が故障しました。JICAの説明によると、単独運用時の避雷対策が不十分で接地抵抗値が基準を超え、雷電流を十分放電できなかった可能性が高いとされています。
さらに、修理に向けた手続きの長期化やモザンビーク国内の金融機関の外貨不足により修理代金の支払いが滞り、南アフリカで修理が完了した変圧器が返送されない状態が続きました。この間、移動式変電所は地上に固定した代替変圧器を接続して運用されていたものの、当初想定された移動配置による運用はできませんでした。結果として、2021年11月の故障から2026年4月の実地調査時点まで約4年半にわたり本来の目的で運用できない状況となりました。なお、現地機関が2026年5月に支払いを完了し、同年7月に変圧器が現地へ返送されたため、試運転を経て運用が再開される見込みとなっています。また、同事業で併せて改修された据置型の既設変圧器は支障なく運用されています。
もう一つの事例は、ウズベキスタンでの草の根・人間の安全保障無償資金協力「ウズベキスタン視覚障害者協会点字作成機材整備計画」(贈与額985万円余)です。同事業では点字書籍等を毎月約400冊製作・配布する計画で2022年に機材5セットを供与しました。しかし、同国政府からの要請に応じるにはA3両面印刷の機材が必要だったのに対し、事業実施機関には点字作成機材を使った書籍等の製作実績がなく、必要な仕様についての知見も十分ではなかったため、A4片面印刷の機材を調達していました。
この結果、供与された機材による点字書籍の製作実績はなく、2026年4月時点で機材は視覚障害者学校等へ貸与されていました。付属のスタータキット4組(約48万円相当)の紛失も判明しましたが、同機関が後に自己負担で再購入したほか、A3両面印刷機も自費調達して書籍製作を行っています。会計検査院は、在ウズベキスタン日本国大使館による事前調査において、同機関の過去の活動実績や必要な機材仕様の確認が不十分だったと指摘しました。
会計検査院はJICAに対し、モザンビークの変圧器返送後の運用状況を適時適切に把握するとともに、今後の移動式変電所整備において単独運用時の避雷対策を十分講じるよう現地機関へ助言することを要求しました。また外務省に対しては、草の根無償の事前調査で継続的な活動実績を確認することや、使用実績のない機材を調達する際は現地政府の専門部署等へ仕様の妥当性を確認することを在外公館へ周知徹底するよう求めています。
今回の2事業では、現地の設備環境に応じた避雷対策と、供与する機材の仕様確認に課題がありました。会計検査院は、JICAと外務省に対し、事業の実施状況の把握や事前調査の徹底を求めています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













