原子力燃料の製造工程をイメージした画像。米ウェスチングハウスは、サウスカロライナ州の既存拠点に約10億ドルを投じ、次世代核燃料「LEU+」の新工場を建設する。2030年の操業開始を予定している。(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
米ウェスチングハウスは2026年10月21日、サウスカロライナ州の既存拠点隣接地に約10億ドルを投じ、次世代の「LEU+」核燃料製造工場を建設すると発表しました。2030年の操業開始を目指す新工場では、濃縮度5〜8%の燃料を製造し、加圧水型原子炉の燃料交換間隔延長や既存原発の出力増強を支援します。自社委託調査では今後10年間で州内に約49億ドルの経済効果をもたらすと予測されています。
本文
米原子力大手のウェスチングハウス・エレクトリックは2026年10月21日、サウスカロライナ州リッチランド郡ホプキンスにある既存の燃料製造拠点「コロンビア・フューエル・ファブリケーション・ファシリティ」に、約10億ドルを投資して新たな核燃料工場の建設を進めていると発表しました。新工場は次世代の低濃縮ウラン燃料である「LEU+」の商業規模での製造を目的としたもので、2030年の操業開始を予定しています。今回の取り組みは原子炉自体の新設ではなく、既存原発の稼働率向上や新規原発の展開を支える燃料供給体制の強化を目的とした設備投資です。
既存のコロンビア拠点は1968年に建設された同社の主要な核燃料製造施設であり、これまで多くの原子力発電所向けに燃料ペレットや燃料棒、燃料集合体を供給してきました。しかし、既存設備の構成や製造工程では、濃縮度5%を超える次世代のLEU+燃料を製造することができません。そのため同社は、既存拠点に隣接する敷地を確保し、最新の設備を備えた専用の新工場の建設に着手しました。
新工場で製造されるLEU+燃料は、ウラン235の濃縮度を従来の5%未満から5%を超え8%以下に引き上げた核燃料です。同社の説明によると、LEU+を採用することで、加圧水型原子炉(PWR)における燃料交換に伴う運転停止の間隔を、従来の18カ月から24カ月へと延長できる可能性があります。燃料交換の頻度を減らすことができれば、発電所の年間稼働率を高め、運用コストの削減や電力供給の安定化につなげられると期待されています。
ウェスチングハウスは、LEU+燃料の供給能力を拡大することが、既存の原子力発電所における出力増強や燃料交換間隔の延長だけでなく、同社が世界展開を進める大型軽水炉「AP1000」の導入推進にも寄与すると位置付けています。米国をはじめとする各国で原発の活用が進む中、発電設備そのものの導入と並行して、それを足元から支える高品質な核燃料の製造基盤を確立することが、電力インフラの成長において重要な要素となっています。
新工場には最新の自動化技術や先進的な製造プロセスが導入される計画です。製造工程においては、従来の手法と比較して化学薬品の使用量や洗浄に伴う環境負荷を抑える「乾式工程」を採用する設計方針が示されています。
今回の約10億ドル規模におよぶ投資決定の背景について同社は、米エネルギー省による税制上の支援策や、サウスカロライナ州・リッチランド郡政府による誘致・協力体制が後押ししたと説明しています。米国政府もエネルギー安全保障の観点から、国外への依存を減らし、国内におけるウラン濃縮および燃料加工サプライチェーンの再構築を重視しており、こうした政策的な方向性が企業側の投資判断の背景となっています。
コロンビアの既存拠点では現在1,200人を超える従業員が勤務しており、地域の雇用基盤を支えています。同社が第三者のサウスカロライナ大学研究者に委託して実施した経済効果調査によると、新工場の建設および操業開始に伴い、今後10年間でサウスカロライナ州全体に約49億ドル、うちリッチランド郡に約38億ドルの経済効果がもたらされると予測されています。これらは建設資材の調達や工事に伴う一時的な需要、地域ビジネスへの波及効果などを試算した予測値です。
AI(人工知能)データセンターの急速な増加や製造業の電化に伴い、世界的に、24時間安定した電力供給が可能で、発電時の二酸化炭素排出量が少ない電源への需要が高まっています。今回のウェスチングハウスによる大型設備投資は、そうした電力需要の拡大局面において、単に新炉を建設するだけでなく、既存および新規の原子炉に供給する「燃料の加工能力」をいかに確保するかという新たな課題に対応するものです。2030年の操業開始に向け、建設の進捗と安定供給網の確立が今後の焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













