核融合研究に用いられる実験装置とプラズマを表現したイメージ。カナダのGeneral Fusionは、実証装置「LM26」で電子温度1.1keV(約1,260万度)を達成した。英国原子力公社(UKAEA)が測定技術で協力した。(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
英国原子力公社(UKAEA)は2026年10月8日、カナダの核融合開発企業General Fusionの実証装置「Lawson Machine 26(LM26)」において、プラズマの電子温度1.1キロ電子ボルト(keV)を達成したと発表しました。UKAEAの説明によると、これは約1,260万度に相当します。General Fusionが開発する磁化標的核融合(MTF)方式において、比較的速度の遅い機械的圧縮を用いて1keVを超える電子温度を実測した重要な技術進展となります。測定にはUKAEAの高度な診断技術が用いられ、論文は査読誌へ提出される段階にあります。今回の成果は測定技術上の節目ですが、核融合による正味エネルギーの獲得や商用発電の成功を示すものではありません。
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英国原子力公社(UKAEA)は2026年10月8日、カナダの核融合スタートアップであるGeneral Fusionが開発を進める実証装置「Lawson Machine 26(LM26)」において、プラズマ内の電子温度が1.1キロ電子ボルト(keV)に到達したと発表しました。UKAEAによると、この測定値は摂氏換算で約1,260万度に相当します。同社が推進する「磁化標的核融合(MTF)」方式において、ミリ秒単位という比較的低速な機械的圧縮を用いながら1keVを超える電子温度を実測した点に技術的な特徴があります。今回の測定とデータ検証にはUKAEAの専門チームが直接参画しており、公的機関と民間企業による技術協力の成果として公表されました。
General Fusionが取り組む磁化標的核融合は、磁場によってあらかじめ閉じ込めたプラズマを、外部からの金属壁による機械的圧縮によって絞り込み、急速に加熱・高密度化させる方式です。同社は、高出力レーザーや超電導磁石を用いない構成によって、将来の核融合発電設備の実用化を目指していますが、今回実証されたのは初期段階の物理現象と計測技術であり、直ちに低コストでの商業発電が確定したことを意味するものではありません。
今回測定された1.1keVという電子温度は、プラズマが最大圧縮に達する直前のタイミングで計測された数値です。なお、現在稼働している実証装置LM26では、プラズマを圧縮するための壁面として固体金属ライナーが使用されています。同社が将来の商用プラント設計で構想している液体金属壁を用いた運用とは条件が異なり、今回の実験で液体金属技術そのものが確立されたわけではありません。また、電子温度の向上は重要な通過点であるものの、核融合反応によって投入エネルギーを上回るエネルギーを取り出す「正味エネルギー獲得」を達成したものではありません。
実験成果の確証において主導的な役割を果たしたのが、UKAEAによるプラズマ診断技術です。今回の計測には、プラズマへレーザー光を照射して散乱光を分析する「トムソン散乱法」が採用されました。金属壁で覆われ高速で縮小する構造内部のプラズマ挙動を正確に把握することは極めて難しく、UKAEAとGeneral Fusionは専用の診断システムを共同で設計しました。特に、UKAEAが英国カルハムの診断イノベーションセンター(DICE)で開発・製作したポリクロメーターが、圧縮過程における電子温度の測定に重要な役割を果たしました。
UKAEAとGeneral Fusionは、低速圧縮を用いる核融合装置で電子温度が1keVを超えたことを、技術開発上の重要な節目と位置付けています。研究成果をまとめた論文はUKAEAとの共著で作成され、査読付き学術誌「Review of Scientific Instruments」へ提出される段階であり、正式な査読は完了していません。
今後の開発プロセスとして、General FusionはLM26の機器改修を進め、圧縮比を高めることで次の技術目標である電子温度10keV(約1億1,600万度)の達成を目指します。その後は、プラズマの温度、密度、エネルギー閉じ込め時間に関するローソン条件の達成を目指す計画です。同社は2035年頃に初号となる商用プラントの運転開始を目標に掲げていますが、これは企業側が設定した長期的なロードマップであり、発電設備としての正味電力供給には、さらに装置全体のエネルギー収支や運転性能の検証が必要となります。
今回の成果は、磁場閉じ込め方式やレーザー慣性閉じ込め方式とは異なるMTF方式において、機械的圧縮による加熱効果が実測データとして示された点に主要な意義があります。しかし、実際の発電設備として成り立たせるには、さらなる高温化に加え、プラズマの密度や閉じ込め時間、繰り返し運転の実現、装置全体のエネルギー収支や経済性の検証など、解決すべき課題が多く残されています。最先端の公的診断技術と民間の技術開発が結びつくことで、実用化に向けた定量的・科学的な検証が一段と進むことが期待されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













