大規模データ保存基盤を表現したイメージ。OpenAIは、オンラインストレージ「Habitat」が500PB超のデータを扱い、読み取り処理の遅延中央値を約12分の1に短縮したと発表した。(画像はイメージ)
今回のニュースのポイント
OpenAIは10月23日、ChatGPTなどの基盤となるストレージ「Habitat」の性能改善を公表しました。同基盤は40地域・10億人超のサービスを支え、保存データは500PB(約5億GB)を超えます。Microsoft Azure Cosmos DBとの共同改善、分散キャッシュの導入、Rustへのコード書き換えを通じ、要求の90%超を占める読み取り処理の遅延中央値を約120ミリ秒から約10ミリ秒へ12分の1に短縮しました。次世代の独自技術も開発中です。
本文
米OpenAIは2026年10月23日、ChatGPTをはじめとするAIサービス群のデータを管理するオンラインストレージ基盤「Habitat(ハビタット)」の機能拡張と性能改善に関する公式技術文書を公表しました。同基盤は現在、世界40の地理的地域にわたる10億人超の利用者向けサービスを支えるデータ基盤として機能しています。データ管理の効率化と応答性能の短縮を進めた結果、世界全体におけるデータ読み取り処理の遅延中央値(p50)を従来の約120ミリ秒から約10ミリ秒へと約12分の1に短縮させたことを明らかにしました。
Habitatは、AIモデルの学習や文章生成を行う計算設備そのものではなく、利用者の設定情報や過去の対話データ、各種サービス状態などを保持するオンラインストレージ基盤です。同基盤が扱う保存データ規模は500ペタバイト(PB、1PBは100万ギガバイト)を超えており、約5億GBに相当する大規模なデータを扱っています。この500PB超という数字は現在管理・運用している総データ量を指すものであり、今回新たに増設されたストレージ装置の容量を示すものではありません。
OpenAIは同基盤の運用において、Microsoftのクラウドインフラサービス「Azure Cosmos DB」を採用しています。しかし、急速な利用者増加に伴い、特定ユーザーや処理の過重負荷がシステム全体に及ぶリスクが課題となっていました。これに対しOpenAIとAzureの技術チームは共同で改良を進め、高負荷処理を自動的に制限する制御機構や優先順位付け、サーバーレスモードの最適化を実施しました。共有型のマルチテナント構成を安定化させたことで、製品開発チームによる個別の容量設計の負担を大幅に削減しています。
同社によると、Habitatに寄せられるデータアクセスの90%以上が「読み取り処理」で占められています。そのため、データアクセスの高速化がサービス品質を左右する重要課題となっていました。対策として、需要の高い重要データの地域間複製や、利用者の近くでデータを一時保持するValkeyを用いた「分散キャッシュ」を導入しました。さらに基盤ソフトウェアのコードをPythonから処理効率の高いRustへ書き換えたことで、世界全体の読み取り処理の中央値で約120ミリ秒から約10ミリ秒という大幅な応答時間の短縮を実現しました。
データを地理的に利用者の近くへ分散配置する施策は遅延削減に有効である一方、物理的なインフラの課題も存在します。地域によってはクラウド拠点の設備容量や電力供給、冷却能力に制限があるため、すべてのデータを利用者の最寄り拠点に均一配置することは不可能です。OpenAIは、利用頻度の高い小規模データを複数地域に複製しつつ、その他の巨大なデータ群については世界各地のキャッシュ基盤を活用して配信する制御手法を組み合わせ、物理的な制約に対応しています。
大規模運用の現場では、最大規模のAzure Cosmos DBアカウント単体で数十PBのデータを保存し、毎秒2,000万件を超えるクエリーを処理する規模に達しています。また、変更データキャプチャー(CDC)技術を駆使し、毎秒数百万件におよぶデータの更新情報を取り出しています。取得した更新情報は100を超えるKafkaトピックなどを通じて、検索用インデックスや分析、データ移動などに利用されています。また、CDCは世界各地の分散キャッシュに変更を反映させる仕組みにも活用されています。
さらにOpenAIは、将来のさらなる利用拡大を見据え、エクサバイト(1,000PB)規模に対応する次世代の独自オンラインストレージシステムを開発中で、RocksDB Cloudの中核技術とRaftに基づく複製技術を組み合わせる方針です。大規模AIサービスの提供においては、GPUなどによる計算能力の確保だけでなく、データストレージの応答性能や運用安定性の確保が不可欠となっています。なお、今回の発表は運用ソフトウェアおよび構成の技術的な性能改善報告であり、新たなデータセンターの建設や個別の設備投資金額が開示されたものではありません。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













