年々減少するビール類(ビール・発泡酒・新ジャンル)の出荷量。発泡酒や新ジャンルがまだ市場に無かった時代の平成4年にはビールのみで約703万kl出荷されていたものが、発泡酒の登場した平成6年に合計約725万klとなったのをピークに平成14年頃から顕著に減少を始め、2012年の日本国内出荷量は555万klにまで落ち込んでいる。ビールのみに限ると、平成23年で約280万klとピーク時の3分の1に迫る勢いである。
こうした中、「ほとんど毎日酒を飲む」と言う人が7割を占めるモニターを対象に、酒文化研究所が実施した家庭でのビールの飲用についてのアンケートによると、ビール派が47%、発泡酒・新ジャンル派が53%となっている。これはビール類総出荷量の内訳と大差ない数字である。しかし注目すべきは、普段飲用している銘柄である。
2012年の国内ビール販売量は、1位がアサヒGH<2502>のスーパードライで販売量は10590万ケースと群を抜いており、ついでキリンHD<2503>の一番搾りの3296万ケース、サッポロHD<2501>の黒ラベルの1705万ケース、サントリーのザ・プレミアム・モルツの1656万ケースとなっている。一方前出アンケートによると、ビール派が家庭で普段飲用している銘柄を3種類まであげた結果は、多い順に一番搾り、スーパードライ、ザ・プレミアム・モルツ、ヱビスとなっており、また、家庭で最もよく飲む銘柄をひとつだけ選択した結果では、ザ・プレミアム・モルツが20%、一番搾り19%、スーパードライ18%の順となっている。さらに、新ジャンル・発泡酒派が飲みたいビールのトップもザ・プレミアム・モルツとなり、以下、ヱビス47%、一番搾り37%と続いている。つまり、国内ビールの市場シェアと家で飲む・飲みたいビールの銘柄とが大きくかけ離れているのである。
ビールの市場の半分は業務用である。その為、いかに多くの飲食店でスーパードライが提供されているかが分かるであろう。アサヒビールの企業努力の賜物と言ってしまえばそれまでであるが、飲食店では、自分の嗜好と関係なく、取り扱っているビールを飲むことになる。しかしこれが、自分で好みの銘柄を選べるようになれば、ビールのシェアが変わり、ビール市場の縮小を食い止め得るものとなることを、本アンケートは示しているのではないだろうか。飲食店のスペースが限られており複数銘柄のサーバーを常備出来ない、サーバーのメンテナンスが面倒である、ビールは鮮度が味に大きく影響するため在庫として抱えるにはリスクが大きいなど、どの飲食店でも好みの銘柄を選べるというのは非現実的なのかもしれない。確かに若者のビール離れも大きな要因ではあろうが、こうした課題をクリアできなければ、出荷量の減少はいつまでも続くことになるのではないだろうか。(編集担当:井畑学)