中小企業のIT関連支出予算に見るアベノミクス効果

2013年03月27日 20:47

 アベノミクス効果による円安、株式市場の好況などといった国内経済の明るい兆し。実体経済にまでその影響が伝わるにはまだ時間がかかるとされ、今恩恵を受けているのは一部の大手企業だけであるとも言われてきたが、2013年春闘において、金属関連の中堅・中小企業でベアを獲得した企業が前年実績を上回るなど、徐々に裾野に向けて好感触が広がっている。この傾向は、IDC Japanが国内中堅中小企業ユーザーを対象に実施したIT関連支出の調査結果にも表れている。

 これによると、2013年度のIT支出予算が前年度から103%以上「増加する」と回答した企業の割合は39.7%と、前年度比97%未満にまで「減少する」と回答した企業の割合17.1%を大幅に上回る結果となっている。また、2014年度以降も同様に「増加する」と回答した企業が「減少する」と回答した企業を上回っており、従業員規模や産業分野、地域においても同様の傾向となった。

 重点項目としては、2012年度は「情報漏洩対策」といったセキュリティ関連の項目の他、「社内情報共有」「社内ネットワーク強化、高度化」「基幹系/勘定系システム刷新、改修」の優先度が高くなっている。一方2013年度は、「情報漏洩対策」に加えて「ID/アクセス管理強化」「脅威管理強化」などのセキュリティ関連の項目の優先度が更に上がった上、「ビジネス継続性/災害対策」「ERPなどバックオフィス系システムの導入、刷新」の優先度も2012年度から上がっている。これは、先日富士キメラ総研が発表したデータセンターサービス市場の伸長予測とも合致するものである。

 IT支出の中心がセキュリティ関連であるとはいえ、これまでIT活用による課題解決への期待度が比較的低かった中小企業における関心の高まりは好材料である。これは、景気の好感触がなければ表れなかった傾向であろう。多くの中堅中小企業は、「売上拡大」といった経営課題を抱えている。セキュリティ関連での導入・支出拡大を皮切りに、業務改善の面でもITを積極活用する傾向が強まれば、景気回復に向けた勢いがより堅調なものになるであろう。(編集担当:井畑学)