【日経平均】大型株中心に買われ13500円台一気乗せ

2013年04月11日 19:10

 NYダウは128ドル高。議事録公表でFOMCでのQE3出口論議が明るみに出ても「それも景気がいい証拠」と都合よく解釈され株価が高騰。5日発表の雇用統計であぶり出されたアメリカ経済の不安要素はもう気にも留めないらしい。11日朝方の為替レートはドル円が99円台後半、ユーロ円が130円台前半と円安が進んでも、ドル円は「ガラスの天井」があり100円に乗りそうで乗らない。取引時間前に発表された2月の機械受注は前月比+7.5%で2ヵ月ぶり増加、3月のマネーストック(M2)は3.0%で前月から0.1ポイント拡大し、どちらも市場予測を上回った。日経平均は216.82円高の13444.95円の大幅高で始まり、翌日がマイナーSQ算出日なのでオプション取引の250円刻みの13500円が意識され、先物は一時それにタッチし現物も13496円まで上昇した。その後は13400円台の落ち着いた動きだったが、10時30分を過ぎて13400円を割り込む。それでも後場は上海や香港や台北などアジア市場の全面高を受けて13400円台を回復し、大引け間際に2008年7月以来の13500円にタッチ。さらに終値は高値引けで261.03円高の13549.16円に上昇した。TOPIXも高値引けで+26.25の1147.29になり4月3日から7日続伸。売買高は51億株、売買代金は3兆9802億円で、「クロダ・リスペクト」する海外投資家の日本株買いの勢いは止まらない。結局大引けまでドル円は100円にタッチせず、北朝鮮のミサイルは飛んでこなかった。韓国総合指数(KOSPI)も大幅上昇で3日続伸し、脅しに負けていない。

 値上がり銘柄1125に対して値下がり銘柄は480と意外に多かったが、業種別騰落率のマイナスは石油・石炭、倉庫、建設の3業種のみ。プラス上位は証券、ゴム、保険、輸送用機器、電気・ガスなどだった。

 大引けの急騰劇の主人公は「日経平均寄与度御三家+1」で、1050円高のファーストリテイリング<9983>は42円、550円高のファナック<6954>は22円、105円高のソフトバンク<9984>は12円、310円高で売買代金3位のトヨタ自動車<7202>は12円、それぞれ日経平均に寄与。合計88円でこの日の上昇幅の3分の1を占めていた。とはいえ、前日に引き続きTOPIXの上昇率も大きく、海外投資家とみられる時価総額の大きい大型株の物色が目立っていた。時価総額最大のトヨタをはじめ、ホンダ<7267>は120円高、マツダ<7261>は12円高、日産<7201>は44円高、富士重工<7270>は119円高、日野<7205>は91円高と自動車大手は快調だった。「重厚長大」の鉄鋼の新日鐵住金<5401>は6円高で売買高8位に入り、「重工株」の大御所で防衛関連株でもある三菱重工<7011>は65円高で年初来高値を更新し値上がり率14位、売買高13位に入った。「重電株」と呼ばれた日立<6501>は43円高で売買高11位、東芝<6502>は16円高で売買高10位に入り、両社とも7日続伸して年初来高値を更新している。東芝は「ウインドウズXP」サポート打ち切りでパソコンの買い換えが進む観測が出ている他、金融子会社の東芝ファイナンスが60億円でイオン<8267>に買収されるニュースも材料になっていた。

 タイヤ大手もブリヂストン<5108>が195円高と急騰し、横浜ゴム<5101>は60円高、住友ゴム<5110>は66円高で、265円高のデンソー<6902>、130円高の京セラ<6971>などとともに調子よく株価を上げた。かつては時価総額が巨大だった東京電力<9501>は41円高で値上がり率4位に入り、売買高4位、売買代金7位とランキング入りした。中国関連銘柄は前週までの出遅れを取り戻すようにこの日も盛んに買われ、ファナックが7日続伸し、コマツ<6301>は126円高で6日続伸、日立建機<6305>は25円高で5日続伸、キヤノン<7751>は150円高で5日続伸している。

 証券セクターを騰落率トップに押し上げたのが野村HD<8604>で、58円の大幅高で年初来高値を更新し売買高3位、売買代金1位。だがそれ以上に驚かせたのがJPX<8697>で、1410円高で値上がり率5位に入った。メガバンクはみずほ<8411>は1円高だったが、三菱UFJ<8306>は17円高、三井住友FG<8316>は75円高。内需系で時価総額の大きいJT<2914>は180円高で売買代金10位に入り、NTTドコモ<9437>も続伸したが、KDDI<9433>は40円高にとどまった。

 3月の東京都心部のオフィス空室率が発表され、0.01ポイント改善して1月の水準に戻ったもののほぼ横ばい。それでも不動産関連は後場に上昇する銘柄が目立ち、三井不動産<8801>は115円高、三菱地所<8802>は95円高、住友不動産<8830>は85円高になった。しかし長谷工<1808>が3円安、含み資産株の三菱倉庫<9301>が64円安など、プラスに浮上できない銘柄もみられた。

 前日にコンビニ各社の2月期決算が出揃い、セブンアイHD<3382>こそ180円高で年初来高値を更新したが、ファミリーマート<8028>は225円、ローソン は400円安で、どちらも9日につけた年初来高値から大幅続落。前日発表のローソンの決算は他の2社と同じく営業利益過去最高で今期も最高益を見込むが、6%増では市場予測を下回り「弱気すぎる」というアナリストの評価だった。この日はイオンが22円安、丸井G が28円安、三越伊勢丹HD<3099>が23円安など小売業は全般的にふるわなかったが、「東京靴流通センター」とカジュアル衣料の「マックハウス」を傘下にもつチヨダ<8185>は前日に発表した2月期決算の今期最終利益が過去最高になる業績見通しを材料に買われ、351円の大幅高で値上がり率ランキング3位に入った。

 この日の主役はシャープ<6753>。売買高7位と買われ、23円高で4月3日取引時間中につけた234円の年初来安値からリカバリーし株価300円台を回復した。コスト削減が功を奏して3月期下期の営業損益が従来予想の138億円を上回り200億円を超える黒字を確保したという業績観測報道が出たためで、前年同期は711億円の大赤字だった。省エネ型液晶「IGZO」をドコモ、ソフトバンクに続きauにも供給する報道もあり、液晶の生産稼働率が高まると買いを集めた。シャープについて昨年から何度も話題になったのが9月30日に償還を迎える約2000億円の第20回CB(転換社債型新株予約権付社債)で、昨年秋に株価が150円を割っていた時期にはCB価格が48円のストップ安で最終利回りが141%にはね上がった日もあり、財務の「時限爆弾」とみなされていた。しかし、3月のサムスン電子との資本・業務提携後は償還のメドがついたとみられCB価格は上昇。この日は年初来高値の93.45円をつけて最終利回りが15%台に下がる時間帯もあった。このCBはもう時限爆弾ではなく、シャープは半年前の地獄の淵から生き返った。(編集担当:寺尾淳)