成田空港自由化2 進化する空港と、地域の壁

2013年04月19日 11:02

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成田国際空港のオープンスカイに合わせて、これまでの離着陸可能時間が緩和されることになれば、空港周辺住民の反発が強まることが予想される。

  今年、開港35周年を迎える成田国際空港グループは先日、2013~2015年度中期経営計画として「イノベイティブNarita2015~選ばれる空港を目指して~」を策定した。

  節目の年であるとともに、オープンスカイという開港以来の大きな変化を迎えて、本当の意味での国際空港として大きな一歩を踏み出した成田空港は、世界のゲートウェイとしての確固たる地位を築けるのだろうか。

  成田空港では「選ばれる魅力ある空港」となるために、3年間で総額1450億円を投じて、設備の改修と拡充を行なっていくという。まず、今後拡大余地のあるアジア近距離路線、国内路線を拡充するための取り組みを積極的に展開する方針で、とくに将来的にも需要が拡大すると思われるLCCの対応には力を注ぎ、専用ターミナルビルを整備するとともにLCC専用ターミナルビル前面や第1旅客ターミナルビル第5サテライト南側地区などに駐機場を整備し、2014年度中の空港容量30万回化の実現を目指す。

  もちろん、これまで同空港の主要路線であった中長距離路線の強化も行なう。3大アライアンス拠点化のためのピーク時間の運用効率化を図るため、第1旅客ターミナルビル第4サテライト南側と第2旅客ターミナルビル南側地区に駐機場を整備。また、第1旅客ターミナルビル南ウイングの処理能力を強化すべく、入国審査場と税関検査場の拡張、旅客手荷物処理システムを増強するという。さらに、エアバスA380などの大型航空機の就航を受け入れるための施設整備を改修する模様。その他、貨物などに対しても、将来的な展開を見越して施設の拡張や改修、改善を積極的に行なっていく方針のようだ。成田空港ではこれらの施策を通して、数値目標として2015年度の航空発着回数26万回、航空旅客数3700万人、経営目標では営業利益360億円以上を目指すという。

  また、空港内の設備だけでなく、成田空港は日本国内の人々にも「選ばれる」空港を目指すためのアクションを起こしている。成田空港35年の歴史は、激しい反対運動の歴史でもある。78年の開港以来、成田空港では侵入する鉄道客と車に対して検問を設け、身分証の提示や車内の確認を行なってきた。物々しい警備は、良い意味でも悪い意味でも成田名物でもあった。これでは確かに「選ばれる空港」「開かれた空港」というイメージからは程遠い。そこで空港側は、人間の目による警備の縮小を検討し、それに代わる機械警備の実証実験として、監視カメラ約20台と最新の危険物探知装置を設置し、JR、京成電鉄が乗り入れる空港第2ビル駅で試験的に実施している。

  しかし、オープンスカイに合わせて、これまでの離着陸可能時間の緩和が行なわれることについて地元住民の反発が強まっていることもあり、不安視する声もある。内陸空港である成田空港はこれまで、騒音問題に配慮して、午後11時から翌朝6時までの離着陸制限があったが、今後は他空港の悪天候など、やむを得ない事情のある場合に限り、午後11時台と午前5時台の離着陸を条件付きで認める方向。国際空港として進化を遂げ「選ばれる」ハブ空港化を目指すのであれば、将来的には24時間営業の眠らない空港となることが必須だが、地域住民との間に立ちはだかるこの壁が取り払われない限り、難しいだろう。(編集担当:藤原伊織)