NYダウは80ドル安。景気先行指標総合指数、フィラデルフィア連銀景況指数など経済統計が市場予測を下回り、モルガンスタンレーなど主要企業決算も下方修正か、どこかケチのつく内容ばかりでモヤモヤとした状況。
19日朝方の為替レートはドル円が98円台前半、ユーロ円が128円台前半と少し円安で、日経平均は48.36円高の13268.43円で始まった。しかし徐々に下落しTOPIXが先にマイナスになり、日経平均も前日終値近辺でプラスとマイナスを行ったり来たりで、商いも細り東京市場もモヤモヤ感が漂う。やはりG20結果待ちの雰囲気は重苦しい。
それでも昔のギャングの格好でワシントンDCに乗り込んだ麻生財務大臣が会議の合間に「(黒田総裁の政策の説明に)批判はなかった」と答えると安心感で為替は円安に振れ、日経平均も前引けで13300円台に乗せTOPIXもようやくプラスに浮上した。
後場は13290円をはさむ一進一退でもマイナス圏まで下がらず、午後2時台にはドル円が99円に接近する円安の追い風を受けた一段高で13300円台に乗せた。終値は96.41円高の13316.48円で、2勝3敗、前週末比マイナス168円と軟調だった今週の取引を終えた。
TOPIXは+3.70の1126.67。市場全体がG20の様子見ムードに支配され、売買高は35億株、売買代金は2兆5504億円と3兆円を大きく割り込んだ。
値上がり銘柄は878、値下がり銘柄は708。業種別騰落率のプラス上位は電気・ガス、海運、金属製品、非鉄金属、不動産など。マイナス下位は石油・石炭、保険、鉱業、銀行、パルプ・紙などだった。
メガバンクが揃って下落するなど銀行株は不調で、証券はSBI<8473>は13日続伸したが野村HD<8604>は4円安でこれで5日続落。大和証券G<8601>も12円安と下げた。円安傾向なので輸出関連株は値を戻し、自動車はトヨタ<7203>がアメリカで増産投資を行う報道が出て50円高で、マツダ<7261>は6円高。コマツ<6301>は35円高。ハイテク系ではファナック<6954>が210円高、ソニー<6758>が27円高、キヤノン<7751>が35円高、京セラ<6971>が50円高と株価を上げていた。
アップルが大幅に続落して株価が400ドルを割ったため「アップル関連銘柄」への悪影響が出て、16円高だった太陽誘電<6976>以外は、東芝<6502>は12円安で続落し、TDK<6762> は80円高、村田製作所<6981>は90円安、日東電工<6988>は90円安、フォスター電機<6794>は7円安と下げた。アップル関連にも数えられるシャープ<6753>は提携先の韓国のサムスン電子にノートパソコン用の11.6型の省エネ液晶パネル「IGZO」を供給し亀山工場の稼働率を向上させるという報道が好感されて14円高になった。
一方、半導体製造装置関連は好調で、東京エレクトロン<8035>は前日、今期の最終利益を60億円に上方修正したこともあり300円高で約1ヵ月ぶりに年初来高値を更新。日経平均プラス寄与度トップに立った。アドバンテスト<6857>は31円高で、大日本スクリーン<7735>は41円高と大きく上昇して値上がり率8位に入った。
前日後場に出たマンション販売動向の好調さは1日遅れで効き、長谷工<1808>は16円高で年初来高値を更新し値上がり率1位、売買高3位、売買代金9位。大京<8840>は27円高で売買高8位。大手不動産は住友不動産<8830>が130円高、東急不動産<8815>が94円高で値上がり率14位と活発に買われ、マイナス圏に何度も沈みながら三菱地所<8802>は15円高、三井不動産<8801>は35円高で終えている。
前日に盛り上がったゲーム関連の一角、カプコン<9697>は前期決算見通しの最終利益を57%下方修正しても経常利益を9%上方修正したほうが評価され、140円高で年初来高値を更新し値上がり率10位。12位にはドワンゴ<3715>が入ったが、この銘柄はネット選挙関連としても買われている。
3月期決算を発表した安川電機<6506>は、中国での不振で前期の最終利益は19%減だったが、今期の業績は営業利益は84%、経常利益は71%の増益で2円増配するというアナリスト予想を上回る強気の見通しで、前場は一時60円高で年初来高値を更新した。しかしその後は何度もマイナス圏に落ち込み結局5円安。見通しが強気すぎて「調子に乗りすぎ」と投資家に疑われたと思われるが値動きが極端。
光世証券<8617>は午後2時に3月期決算を発表し、黒字転換した内容は悪くなかったが「今期の業績見通しを開示しない」という理由で売買高15位の売り浴びせ攻勢という〃無慈悲な懲罰〃を受けて急落し終値は11円安だった。
逆に、エアバッグの不具合で自動車業界に大量のリコールを発生させたタカタ<7312>は、この件で300億円の特別損失発生と発表して23円安で始まったが結局3円高。
ダイエー<8263>はとりたてて材料がないのに後場いきなり73円高まで上がり年初来高値を更新した直後に急落し終値は32円高。それでも値上がり率7位だった。
東京電力<9501>は前日に原子力規制委員会が柏崎刈羽原発直下の活断層の存在を示すデータを出して年内再稼働期待どころかこのまま廃炉の可能性も浮上し、今期の黒字化は風前の灯にもかかわらず51円の大幅高で値上がり率2位、売買高2位、売買代金1位。様子見、薄商いの地合いでは怪情報や誰かの仕掛けに乗せられたりして、こうした謎めいた値動きが出やすい。
この日の主役は、バイオ関連の中でも京大の山中伸弥教授がノーベル賞を受賞後、世界をリードできる分野とみなされている「iPS細胞」関連銘柄。iPS細胞で網膜を再生する技術を開発中の日本網膜研究所の鍵本忠尚社長がインタビューで「IPOを検討」と答えたことが報じられ、色めき立った投資家がこの会社に出資予定の新日本科学<2395>、テラ<2191>、大日本住友製薬<4506>に買い向かった。
新日本科学は183円高で値上がり率3位に入り、テラは432円高、大日本住友製薬は20円高。住友化学<4005>傘下で本社が大阪の大日本住友製薬は創薬研究を通じて山中教授とは長い付き合いで、iPS 細胞を使った難病治療の共同研究を始めている。
それも含め同社のiPS細胞関連の研究プロジェクトは4つもある。タカラバイオ<4974>など新興市場銘柄ばかり注目されるが、この製薬メーカーも見逃せない。(編集担当:寺尾淳)