JAL<9201>やANA<9202>といった大手航空会社に独占されていた日本の空に変革をもたらし、その後も低価格を武器に成長を続けてきた新規航空会社だが、最近になって、その勢いに陰りが見え始めている。その原因は、やはり日本国内でのサービスが本格化したLCCの存在にあることは確かなようだ。大手航空会社と戦うために生み出した低価格という鋭い刀を、今度は逆にLCCからつきつけられている状況にあるのだ。
その苦境に立たされた新規航空会社を象徴するかのように、スカイマークが3月31日、関西国際空港と札幌、那覇を結ぶ2路線を休止し、関空路線から撤退した。スカイマークの関空発着便は昨年3月に羽田、札幌、那覇路線にて再開。オペレーションを効率化し搭乗率の向上を図ったが、羽田便は早々に休止しており、札幌、那覇便もついに休止し、再開の見込みもないという。
スカイマークは、関西の拠点において神戸空港発着路線は好調を維持していたが、片道3千円台からという破格の安さを武器に2012年3月に関空に就航したLCC、ピーチ・アビエーションに多くの利用者を奪われる形となったようだ。2011年は全路線で平均して8割を超える高い水準をキープしていた搭乗率も、関空発着便に関しては月によっては4割を切るほど低迷していた。
スカイマークは羽田—札幌便や羽田—福岡便など羽田発着便は好調を維持しており、関西でも神戸空港を拠点に6路線を展開し、神戸発着の1日18往復を運航。2012年3月期までは最終利益が3期連続で増加していた。しかし、2013年3月期は関空路線の低迷などで、前期の77億円から35億円に減収の見込みだ。
LCCの勢いにより、国内線での劣勢を強いられたスカイマークは、状況を打破するため、その視線を海外へと向けはじめたようだ。超大型機「エアバスA380」を使って国際線に進出、成田—ニューヨーク間に大型機を飛ばし、大手の牙城を切り崩そうとしている。しかも、このA380ではエコノミー席を設けずに、ビジネスクラスとプレミアムエコノミーの上級2クラスだけという大胆な機内レイアウトで勝負するという。思いきって新型機を採用し燃費を抑え、また大型機により輸送力を高めることで、運賃も大手航空会社の半額程度まで抑える方針のようで、往復運賃でプレミアムエコノミーが24万円から、ビジネスクラスは30万円台で販売する予定だという。
さらに、国際線だけではなく、国内で最も需要の多い羽田発着の札幌、福岡便にも大型機のエアバス330を2014年に投入する予定だという。搭乗率も9割以上と、全便でほぼ満席状態の人気路線だが、羽田空港の規制上これ以上の増便が見込めないため、大型機を投入し供給力を高める戦略のようだ。
LCCは驚異の低価格で利用客を獲得し、JALやANAといった大手航空会社はサービスを向上し付加価値を高めている中、その中間に位置するスカイマークなどの新規航空会社がどのような存在価値をしますのか。LCCが定着したこれから、価格やサービスなど航空会社間の競争がますます多様化し、真の空の戦いが本格化していくだろう。(編集担当:北尾準)