動き出したメガソーラーで変わる日本

2013年05月21日 20:21

 東日本大震災以前の日本は、ソーラー発電に対して積極的な国とはいえなかった。
 
 世界第3位、17箇所54基もの原子力発電所を保有する原発大国にとって、自然エネルギーを利用した発電設備は、あまりにも魅力に乏しいものだったのだ。環境問題もかえって、原発推進の意識を助長していた。石油や石炭、天然ガスなどの枯渇性のいわゆる化石燃料にくらべ、二酸化炭素を排出しないクリーンな原子力発電は、燃料消費も少なく、地球温暖化にも貢献するという考えが蔓延していた。

 震災と、それに続く福島第一原子力発電所の事故、そしてそれに伴う大規模な電力不足を経験したことによって、国民の意識はこれまでの原発依存から、太陽光や太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱など、長い将来に渡って安定的に確保できる安全・安心な再生可能エネルギーを利用する方向へと移っていった。

 たとえば、神奈川県では「かながわスマートエネルギー構想」を立ち上げ、県を上げて創エネ、省エネ、蓄エネに取り組んでいる。

 同県では、「原子力発電に過度に依存しない」「環境に配慮する」「地産地消を推進する」という3つの原則を軸に新たなエネルギー政策を中長期的に推進しており、これまでの電力会社を中心とした集中型のエネルギー体系から、地域が中心となった分散型のエネルギー体系を新たに構築し、2020年度には県内の電力消費量に対する割合を、創エネと省エネ、蓄エネで20%以上の水準に高めることを目標としている。

 「かながわスマートエネルギー構想」の具体的な動きとしては、去る5月14日、神奈川県と県南西部に位置する中井町、神奈川県住宅供給公社が、公募によって選定されたスパークス・グループ株式会社<8739>の子会社「スパークス・グリーンエナジー&テクノロジー」とメガソーラー事業の基本協定を締結。総事業費約40億円を投じて、出力約10メガワット、年間発電量約1000万キロワットアワーを見込むメガソーラーを建設する計画が動き出している。今年10月に着工し、完成予定は15年4月。完成すれば県内第2の規模となる見通しだ。

 また、一般企業のメガソーラーへの取り組みも積極的になっている。たとえば、環境省が認定する「エコ・ファースト企業」でもある積水ハウス株式会社<1928>は、全国に展開する5つの工場すべてに、合計約6.7メガワットの太陽光発電システムを設置し、3月29日から発電を開始している。

 同社によると、年間での発電量は607万キロワットアワーと予測されており、これは、一般家庭1680世帯分の消費電力量に相当する。

 大手企業、しかも日本を代表するハウスメーカーが、自社の工場にメガソーラーを設置し、積極的に太陽光発電に取り組んでいることは、これからの一般住宅への太陽光発電システムの設置普及に向けても大きな意義があることだ。震災から二年が過ぎ、日本がようやく変わり始めたようだ。(編集担当:藤原伊織)