政府の「サイバーセキュリティ戦略」を読む

2013年05月23日 09:32

 政府・「情報セキュリティ政策会議」(議長・菅義偉官房長官)は、巧妙、複雑化しているサイバー攻撃への対策強化を図るために「サイバーセキュリティ戦略」の最終案をまとめた。国家機密を狙うような外国政府や軍の関与が疑われるサイバー攻撃が増えていることを受け、安全保障の観点からの態勢強化の必要性を説いている。

 サイバー攻撃に自衛隊が対応できるよう法整備を進めることも検討しており、自衛隊に「サイバー防衛隊」を新設することがうたわれている。意見公募を経た上で6月に正式決定となる。 

 サイバー攻撃とは、コンピュータシステムやインターネットなどを使って、標的となるコンピュータやネットワークに不正侵入してデータの破壊や詐取、改ざんなどを行なったり、標的のシステムを機能不全に陥らせることである。

 安倍首相は、会議で「国家の安全保障や危機管理の観点からはもちろん、国民生活の安定と経済の発展のために、速やかにかつ強力に対応していく必要があると認識しております」と強調し、「内閣が一丸となり、世界最高水準のIT(情報技術)国家にふさわしい安全なサイバー空間の構築を目指していく」と述べている。

 「サイバー防衛隊」以外にも犯罪の足取りを追うために、インターネット利用者の通信履歴を通信事業者が一定期間保存することを求めたり、憲法で保障された「通信の秘密」を維持しながら事件捜査への利用の在り方について検討することなどの提案も盛り込んでいる。
 
 また、サイバー攻撃を受けている事業者に対して、またウィルスに感染する可能性の高いサイトにアクセスしようとするインターネット利用者に対し、通信事業者が「通信の秘密」に配慮しつつ注意を促す方法の構築や、第三者による通信内容の解析が可能か否かについても検討課題に挙げた。

 とはいえ、やはり「サイバー防衛隊」の新設や、「通信の秘密」に関する問題に絡めて、今後、議論が出てくることは充分考えられる。注意深く推移を見守っていく必要があると、筆者は考える。(編集担当:久保田雄城)