【日経平均今週の展望】ショックを通り越しクールな夏相場が来るか

2013年05月26日 18:12

 5月第5週(27~31日)は5日間の取引。27日はNY市場は「メモリアルデー」、ロンドン市場は「バンクホリデー」で休場になる。月末なので予想されるのが「ドレッシング買い」だが、31日は「利益確定売りの金曜日」でもある。どちらが優勢になるか。

 国内の経済指標は、28日は4月の企業向けサービス価格指数、29日は4月の小売業販売額、大型小売店既存店販売額、30日は5月上旬の貿易統計、4月の自動車各社の生産・販売実績、31日は4月の全国消費者物価指数(CPI)、4月の失業率、有効求人倍率、4月の家計調査、4月の鉱工業生産指数速報値、4月の新設住宅着工戸数が、それぞれ発表される。31日の午前8時半は経済指標発表ラッシュになる。

 来週はインドのシン首相が来日し、29日に日印首脳会談が行われる。市場が期待するのはインフラ輸出の目玉、原発のセールスに成功するかどうか。日銀関係では27日、4月26日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事録が公開され、29日は黒田日銀総裁が「2013年国際コンファレンス」で挨拶する予定で、また言葉尻をとらえて株価が動くのだろうか。債券先物市場の混乱が続いているが、28日と30日には国債の入札が行われる。スムーズに終わるだろうか。

 海外の経済指標は、28日はアメリカの3月のS&Pケース・シラー住宅価格指数、5月のコンファレンス・ボード消費者信頼感指数、リッチモンド連銀製造業指数、29日はユーロ圏の4月のマネーサプライM3、30日はユーロ圏の5月の消費者信頼感指数確定値、アメリカの1~3月期実質GDP改定値、4月の住宅販売保留指数、31日はユーロ圏の5月の消費者物価指数(HICP)、4月の失業率、アメリカの4月の個人所得、個人消費支出(PCE)、5月のシカゴ購買部協会景気指数、ミシガン大学消費者態度指数確報値、6月1日には中国の5月の製造業購買担当者景気指数(PMI/物流購入連合会)が、それぞれ発表される。アメリカの雇用統計は6月7日発表でまだ先だが、毎週木曜の新規失業保険申請件数の発表あたりから次第に意識されてくるだろう。アメリカの主要企業決算は28日にティファニーが予定している。

 今週23日に1143円安を喫した「東京の暗黒の木曜日」については、「いいクスリになっただろう」というニュアンスの感想が少なくない。日経平均は終値ベースで12000円台乗せが3月8日、13000円台乗せの「甘利越え」が4月8日、14000円台乗せが5月7日という「月1000円」ペースで上昇してきて、順当にいけば15000円台乗せは6月上旬になるはずだったが、それを1週間と1日後の5月15日に早々と達成してしまった。さらにまた、1週間と1日後の5月23日の前場で、7月上旬到着予定の16000円にあと58円まで迫った。そんな度重なるスピード違反が取り締まりを受けた、というのである。

 「アベノミクスついに破たん」などと大げさに言っている人がいるが、この出来事はたとえて言えば電車に乗っていて、「後続の電車が遅れているため、時間調整のため当駅でしばらく停車します」というアナウンスが流れるようなもの。それをしないと後続の電車は乗客がスシ詰めになって駅での乗り降りに時間がかかり、ダイヤが乱れてしまう。「スピード調整」「日柄調整」とは、まさにそういうことで、相場が健全性を保つためには、むしろ望ましいことでもある。
 
 だが、プロの投資家なら平気でも、個人投資家にはショックの後遺症が残るかもしれない。一つは参加者の減少で、興味本位、遊び半分でやって来て運よく千円、万円単位の小遣い銭稼ぎに連続成功した個人は、数千円程度損しただけで逃げていくもの。連休明けから盛り上がっていた低位株物色が薄らぐ可能性がある。もう一つはリスクがより強く意識されることで、銘柄選びは慎重になり、せかされてテーマにやみくもに乗ったりしない。指標を調べて割安株は買うが上昇中の銘柄の高値を追いかけることはしない。少し上がれば利益確定売りする。そんなことでは上値は抑えられる。「個人投資家の正常な姿ではないか」と思うかもしれないが、熱に浮かされて正常でない投資家が大勢いたからこそ、これまで半年間のアベノミクス相場は尋常でないパフォーマンスを見せてくれていた。
 
 ということで来週以降、増えてきそうなのはいい方でも悪い方でも「クールな反応」。新興市場はともかく東証1部では棒上げの「ストップ高」も、逆の「ストップ安」も、値上がり率が10%を超える銘柄も、売買高が1億株を超える銘柄も減っていくのではないだろうか。もちろん為替にもクール、政策にもクール、業績報道にもクールに反応し、熱くなったりしない。商いは減り、低体温でボラティリティが下がってパフォーマンス的には面白くないかもしれないが、落ち着いた「大人の相場」にも、それはそれで投資の妙味がある。
 
 来週、外部要因で話題の焦点になりそうなのは、バーナンキFRB議長や地区連銀総裁の言葉尻をとらえてNY市場がセンシティブに反応しているQE3の出口論議の行方だが、日経平均に与える影響は為替のドル円相場を通じた間接的なものになりそうだ。それでも円高が進行して1ドル=100円割れになったり、日銀が巨額の国債買入オペを実施しても債券先物市場の混乱が続いて長期金利が1%をたびたび超えるようになったら、日経平均にとって大きな下振れ要因になる。それでもおそらく25日移動平均線に接近する14500円あたりがサポートラインになるだろう。
 
 それとは逆に、為替の円安や経済指標や政策あたりの好材料をきっかけに買い戻され、大幅高になる局面もありそうだ。
 
 ショックを乗り越え、ひと皮むけた〃成熟した市場〃になることに期待しながらも、大波乱の余韻が残って変動幅がしばらくは大きくなりそうな来週の日経平均のレンジは、15000円を軸に14500~15500円とみる。(編集担当:寺尾淳)