【日経平均】来週の展望

2013年06月02日 20:29

 ポジティブサプライズが日本株を明るくする

 6月第1週(3~7日)は5日間の取引。5月はさんざんな目にあい、「月が変わればツキも変わる」と多くの投資家が期待しながらの6月相場入りになる。

 国内の経済指標は、3日は1~3月期の法人企業統計、5月の新車販売台数、百貨店販売額、4日は5月のマネタリーベース、毎月勤労統計調査、6日は5月の東京都心部オフィス空室率、7日は4月の景気動向指数速報値、5月の携帯電話各社の契約件数が、それぞれ発表される。なお、債券先物市場が不安定な中、4日には10年国債、6日には30年国債の入札が行われる。

 主要企業の決算発表は、3日に伊藤園<2593>の4月期本決算、ピジョン<7956>の第1四半期、6日にクミアイ化学<4996>の第2四半期、積水ハウス<1928>の第1四半期、7日にエイチ・アイ・エス<9603>の第2四半期、カナモト<9678>の第2四半期、クックパッド<2193>の4月本決算、SUMCO<3436>の第1四半期が、それぞれ発表される予定。4日には毎月注目のファーストリテイリング<9983>の5月の国内ユニクロ既存店売上高が発表される。
 
 政治日程では5日、安倍首相が成長戦略第3弾を発表する。6日から8日までフランスのオランド大統領が来日し、7日に日仏首脳会談が行われる予定。原発の再稼働やインフラ輸出に関係する声明内容が注目される。
 
 海外の経済指標は、3日は中国の5月のHSBC製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値、ユーロ圏の5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値、アメリカの5月のISM製造業景況指数、4月の建設支出、5月の新車販売台数が、4日はユーロ圏の4月の卸売物価指数(PPI)、アメリカの4月の貿易収支が、5日はユーロ圏の5月のサービス部門購買担当者景気指数(PMI)、1~3月の域内GDP成長率改定値、4月の小売売上高、アメリカの5月のADP雇用統計、4月の製造業新規受注、5月のISM非製造業景況感指数、1~3月期の非農業部門労働生産性改定値、地区連銀の経済報告「ベージュブック」が、6日はアメリカの5月の小売各社の既存店売上高が、7日はアメリカの5月の失業率、非農業部門雇用者数、4月の消費者信用残高が、それぞれ発表される。土曜、日曜も中国では経済指標の発表があり、8日に5月の貿易統計、9日に5月の消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)、工業生産高、小売売上高が発表される予定である。
 
 経済指標で最大の注目は言うまでもなく7日のアメリカの雇用統計で、悪すぎればもちろんのこと、良すぎてもFRBの量的緩和政策の縮小が早まりそうだとNYダウの下落要因になるというデリケートさがある。
 
 ヨーロッパでは5日から6日までイングランド銀行金融政策委員会が開かれるほか、6日にドイツのフランクフルトでECB理事会が開催され、終了後ドラギ総裁が記者会見を行う。イングランド銀行は7月に総裁が交代するので利下げなど大きな動きはないとみられ、ECBは5月に利下げしたばかりなので焦点は銀行への流動性供給になりそうだ。
 
 7~8日には、アメリカのカリフォルニア州でオバマ大統領と習近平国家主席が米中首脳会談を行う。日仏首脳会談ともども、16~18日のロックアーンG8サミットに向けて国際政治が動きそうだ。

 5月23日の「日本株・暗黒の木曜日」の引き金は、中国の5月のHSBC製造業購買担当者景気指数(PMI)の速報値が49.6で、好・不況の境目といわれる50を7ヵ月ぶりに割り込んだことだった。これが「中国の景気はそこまで悪いのか」と、16000円寸前に迫っていた日経平均を押し下げた。1143円安の暴落にまで至った原因はそれだけではないが、無理して伸びきったゴムを、絶妙のタイミングの悪さでネガティブサプライズが切断した、と言えそうだ。

 ネガティブサプライズと言えば、4月5日に発表された3月のアメリカの雇用統計の非農業部門雇用者数の増加数「8万8000人」もそうだった。2月の26万8000人の3分の1以下、市場予測平均19万人の半分以下という衝撃でNYダウは一時170ドルを超える下落を喫したが、アメリカの労働省はこの数字を5月3日、悪びれもせず13万8000人に修正している。

 6月1日、物流購入連合会のほうの中国の5月の製造業購買担当者景況指数(PMI)が発表され、50.8で50を割っていないばかりか、4月の数値を0.2上回った。50超えは8ヵ月連続になる。これで、問題のHSBC製造業購買担当者景況指数(PMI)の改定値が6月3日の午前10時45分(日本時間)に発表される際、50を超える数字に直される可能性が高まった。もしそうなったらHSBCは「5月23日に発表したのはあくまでも速報値です」とシレっと言い訳しそうだが、その東京支店は、「暗黒の木曜日」に大きな損失を被った投資家から、「HSBCは不正確な統計数字で東京株式市場をかく乱した」と恨まれて石を投げられてもしかたない。

 中国のPMIにしてもアメリカの雇用統計にしても、経済指標のネガティブサプライズの正体とはそんなものなのだ。でも、起きてしまったことや、そこから連鎖して起こったことはもう、元には戻らない。

 そんな嫌な流れを断ち切って、弱気に支配された市場の停滞感、投資家心理のモヤモヤ感を一掃してくれるものは何か。それはネガティブサプライズとは正反対の「ポジティブサプライズ」なのではないか。

 4日の夜にサッカー日本代表がオーストラリア代表を破ってワールドカップ・ブラジル大会への出場を決めて、若者が深夜まで祝勝ムードで大騒ぎをしても、それはそれなりにインパクトがある。だが、4回連続出場の日本代表はアジア予選を勝ち抜ける十分な実力があるので、サプライズと言ったら代表選手に失礼だろう。

 ポジティブサプライズとは、もっと世間を驚かせ、喜ばせるような出来事である。経済の分野にとどまらず、国際政治でも、スポーツの快挙でも、皇室の慶事でも、日本人が芸術や科学の分野で賞を取ることでも、何でもかまわない。たとえば、山中伸弥教授のノーベル賞受賞のニュースがもし今、もたらされたら、まさにポジティブサプライズで、市場の停滞感を吹き飛ばしてくれたはず。もし、あの北朝鮮が改心してミャンマーのような経済開放政策に踏み切る決断をしたら、それはスーパー級のサプライズになることだろう。

 アベノミクス相場も、11月14日の大引け後に国会の党首討論で、野田首相(当時)が安倍自民党総裁(当時)に向かって「解散・総選挙しましょう」と言い放った政界のサプライズから始まった。4月上旬に短い低迷期に入った時も、黒田新総裁率いる日銀の異次元金融緩和というサプライズで息を吹き返した。今、切れかけている相場のエネルギーを補給するには、ポジティブサプライズが起きるのが一番いい。

 こんなことを言うと、「『何か、いいことないかな~』と言っている子どもと一緒だ」「サプライズ待ちとは世も末だ」などと批判されそうだが、市場とは、サプライズをきっかけに次のフェーズに入り、サプライズに刺激されて新しい風が入り、サプライズを境に投資家の気分が一変するもの。市場は常にポジティブサプライズを待望している。

 ということで、ビッグなネガティブサプライズに振り回された5月が終わって、6月の株式市場では、ポジティブサプライズで日本株が明るくなることにぜひ期待したい。

 とはいえ市場の現状は、呼吸数や血圧や脈拍や脳波が突然乱れる症状にようやく改善の兆しが出て、病院の集中治療室から一般病棟に移ったばかりの患者のようなもの。来週は、1ヵ月に1000円上昇するペースで5月7日に到達していた14000円台を早期に回復するために「リハビリ」を開始する週になる。それには取引時間中の為替レート、債券先物市場、長期金利などの安定が前提。もし来週もそれらの「急変」が頻繁に起きるようなら、リハビリどころではなくなり集中治療室に逆戻りだ。週前半の3日か4日に終値で14000円を回復できれば安心感がひろがりそうだが、それでもしばらくは急変に注意なので、来週の日経平均のレンジは13300~14300円とみる。5月下旬の「急性期」の症状が相当ひどかったので、15000円台回復は6月いっぱい、かかるかもしれない。(編集担当:寺尾淳)