【日経平均】大引け直前に乱高下に襲われたった14円高

2013年05月29日 20:11

 3連休明けの28日のNYダウは106ドル高。ティファニーの予想外の好決算、S&Pケース・シラー住宅価格指数の大幅改善、消費者信頼感指数の高水準を受けて1週間ぶりに史上最高値を更新し、火曜日のダウ平均はなんと20連勝。29日朝方の為替レートは、ドル円は102円台前半、ユーロ円は131円台半ばで、円安と言うよりドル高が進行した。
 
海外株価と為替の好条件が揃った日経平均は180.57円高の14492.55円で始まり、14500円にタッチして上を目指すかと思いきや、この日もズルズルとマイナス圏の14200円台まで下落。「午前9時台のマイナス」はこれで今週3日連続。長期金利が上昇し為替も円高に戻して日経平均はたびたびマイナスになりながらTOPIXはずっとプラスを維持した。この日も前場は先物の乱高下に振り回され、後場に落ち着くパターン。午後2時前には14500円に再びタッチするなど堅調で14400円台で終わるかと思いきや、大引け5分前から突然マイナスまで下げる大波乱に襲われ、終値はたった14.48円高の14326.46円で25日移動平均線を上回れず。TOPIXも下げて+10.60の1178.87。売買高は39億株、売買代金は3兆1269億円だった。
 
 とはいえ、実は値下がり銘柄342に対し値上がり銘柄は1288もあり約4分の3を占める全面高。業種別騰落率でマイナスは不動産、鉄鋼、パルプ・紙、非鉄金属の4業種だけだった。プラスが小さかったのは海運や電気機器などで、大きく上昇したセクターは電気・ガス、保険、金属製品、サービス、その他製品、水産・農林などだった。
 
 750円安のファーストリテイリング<9983>が日経平均を30円も押し下げては、安全保障上の対策でアメリカ当局と合意しスプリント買収承認へ前進し110円高のソフトバンク<9984>、153円高のクレディセゾン<8253>、午後にアムジェンとの抗がん剤の共同開発を発表し100円高のアステラス製薬<4503>が束になってもプラス寄与度は23円で及ばない。そんなメカニズムで日経平均は小幅安で終わった。
 
 債券先物市場はいまだに安定せず、午前中0.965%、午後も0.96%と一時1%寸前まで上昇。東証REIT指数も3日ぶりに下落し、不動産銘柄はプラスとマイナスの間で揺れ動く。三井不動産<8801>は1円高だったが、三菱地所<8802>は15円安、住友不動産<8830>は70円安だった。
 
 経済産業省が開発費を支援して産官学連携による次世代3D プリンターの開発計画が動き出すと報じられ、参加するIHI<7013>は14円高、日産<7201>は13円高、群栄化学工業<4229>はストップ高比例配分で年初来高値を更新し値上がり率2位に入り、キーエンス<6861>、ローランドDG<6789>、JBCCHD<9889>が大幅高になるなど3Dプリンター関連銘柄がブレーク。自動車株は富士重工<7270>が「今期自己資本比率が初めて40%を超える見通し」と日経新聞が報じて10円高になり、ダイハツ<7262>が40円高で年初来高値を更新した。

 「南海トラフ地震は予知困難」というニュースが流れ、6月に南海トラフ地震発生時の企業の営業利益の減少を補償する保険を発売する損保ジャパンの持株会社、NKSJHD<8630>が179円高。産業競争力会議が示した「ハローワーク情報の民間開放」に反応してフルキャストHD<4848>、テンプHD<2181>、アウトソーシング<2427>など人材ビジネス関連銘柄が買われていた。
 
 小売では23日の「逆行高17人衆」の一角だった名古屋・栄のデパート丸栄<8245>が売買高13位と買われ一時ストップ高の50円高で年初来高値を更新し値上がり率1位。紳士服チェーンのAOKIHD<8214>は新規出店を5年で320店舗に拡大すると報じられ50円高。ポイント<2685>は自社株の公開買い付けを好感され110円高だった。
 
 売買高、売買代金1位の東京電力<9501>は来日中のインドのシン首相と安倍首相の日印首脳会談で日印原子力協定の締結期待が高まり、原発運転の経験が生かせるという読みで53円高。過酷事故の経験もある。北海道電力<9509>は泊原発全3基の再稼働を申請し151円高で値上がり率9位。東北電力<9506>が4位、九州電力<9508>が6位、関西電力<9503>が10位と、電力株が値上がり率トップ10に4銘柄も入り業種別騰落率でも1位になっていた。
 
 この日の主役は「新幹線車両メーカー」。日印首脳会談でムンバイ・アーメダバード間の高速鉄道の共同調査に合意し、受注の公算大と日経新聞1面で報じられた。東海道新幹線最新の「N700Aのぞみ」を製造する日本車輌製造<7102>は32円高、「はやて」「はやぶさ」を製造する川崎重工業<7012>は2円高、日立製作所<6501>は5円高。かつて川崎重工が中国版新幹線のために技術を供与した国有企業、中国南車がアメリカで新幹線技術の特許を申請するという事件が起きたが、英国仕込みの法制度が浸透しているといわれるインドの遵法精神(コンプライアンス)はどうなのだろうか。(編集担当:寺尾淳)