2013年4月よりスタートした教育資金贈与非課税制度。スタート当初は取扱い金融機関が少なく、利便性の悪さが感じられたが、6月に入り株式会社三井住友銀行や株式会社横浜銀行<8332>、株式会社武蔵野銀行<8336>などが相次ぎ取扱いを開始し、大きな動きを見せている。
教育資金贈与非課税制度は、15年末までの間に、祖父母などの直系尊属が30歳未満の子や孫のための教育資金を金融機関の専用口座に預け、金融機関を経由して所轄税務署長に教育資金非課税申告書を提出することにより、子や孫1人当たり1,500万円(学習塾や水泳教室など学校以外の支払いについては500万円)までの贈与が非課税になるというものだ。ただし、この制度はごく一部の富裕層を対象とした措置とも考えられ、一般的には浸透しにくい背景がある。
金融機関からの教育資金の払い出しには、請求書ではなく領収書が必要である。例えば、大学入学のために一括で100万円が必要になったとすれば、その100万円はどこか別で工面し、支払い後にその領収書を教育資金専用口座を開設した金融機関に持参し、払出請求をすることになる。そこで考えたいのは、贈与税の基礎控除についてである。年間110万円までの贈与に関しては、そもそも非課税であり、孫の高校入学時や大学入学時などに祖父母が110万円までの金銭を贈与する場合には課税対象にはならない。また、親が子どもの学費をその都度負担する場合については、その金額に関わらず非課税である。これらから、教育資金贈与非課税制度により恩恵を受けることのできる利用者は、孫に年間110万円を超える教育費を必要とする可能性があり、孫の両親に教育費を立て替えられるだけの資力があるなど、かなり限定的であることが想像される。また、この制度は13年4月から15年末までの期間限定措置であるために、この期間中に口座を開設し、教育資金を預け入れる必要がある。
贈与税が非課税になると聞けば、孫のために口座を開設する祖父母もいるであろう。もし、どの金融機関に預け入れるか迷うのであれば、いくつかの金融機関に対し、払出請求に係る手続きの流れについて確認すると良いであろう。金融機関により、請求を行ってから実際の引き出しまでの日数や現金での持ち帰りが可能か、もしくは孫の口座に入金になるかなど、若干の差があるからだ。(編集担当:中村小麦)