国の重要政策のひとつである「社会保障と税の一体改革」。その一環であり2012年8月に成立した、パート労働者などの短時間労働者に対する社会保険の適用拡大執行日まで、時間は刻々と迫っている。現在のパート労働者の勤務状況としては、主婦層を中心に課税所得をゼロとするために年収103万円以下に収める者が多く、また、雇用主もそのような働き方を支援し、求人広告などを見ても「配偶者扶養控除内での勤務」という言葉が目立つ。また、103万円は超えても社会保険料の負担を避けるために130万円を超えないように調整する雇用主や労働者も少なくはない。しかし、16年10月より執行される社会保険の適用拡大により、従業員501人以上の企業に勤務するパート労働者については、この130万円の壁が大きく崩れる。
この適用拡大が執行されれば、1年以上の雇用期間があり、年収105万6000円(月収約8万8000円)以上でなおかつ勤務時間が週20時間以上のパート労働者は社会保険に加入することになる。長期的にみれば社会保険の加入は、労働者にとってプラスであることが多い。ただし、パート労働者の中には、将来の給付金より、今どのように生活するかという問題を抱え、手取り額を減らしたくないという考えを持つ者も多数いる。株式会社アイデムの人と仕事研究所が発表した『平成25年版パートタイマー白書』によると、パート・アルバイトで働く者のうち、32.5パーセントが自分の収入がなくなったら「最低限の生活すら送れなくなる」と回答。また、既婚女性に対する、自身と配偶者の収入を合わせた世帯年収の調査では「400~500 万円未満」が最も多かった。
12年の2人以上世帯の世帯年収の平均は約600万円といわれている。妻がパートに出ながらも世帯年収が500万円未満の世帯であれば、妻の社会保険加入は、やはり負担が大きいであろう。パート労働者が抱える「収入がなくなれば最低限の生活すら送れなくなる」という危機感。社会保険加入による手取り額の減少を前に、この危機感は無職にならずとも、大きくなるであろう。(編集担当:中村小麦)