NYダウは8ドル安で5日ぶり反落。利益確定売りで低調になり、午後2時にFOMCの議事要旨が公開されて一時高くなっても、すぐ元に戻った。11日朝方の為替レートはドル円が98円台後半、ユーロ円が130円前後。日本時間で午前5時すぎに伝わったバーナンキFRB議長の「予見できる将来は非常に緩和的な金融政策が必要」「失業率が6.5%を下回ってもすぐ政策金利を引き上げるわけではない」という講演後の質疑応答の内容を受けてドルは対円で100円を割り込んで98円台前半まで急落した。量的緩和縮小は「9月になれば」が市場の既定路線になっているので、「先月、いきなり火をつけて世界を混乱させたあんたが今さら何を言う」という反応か。なお、原油先物価格は続伸し106.52ドルと1年4月ぶりの高値になった。
取引時間前に内閣府が発表した5月の機械受注は+10.5%でポジティブサプライズだったが、為替の急速な円高ドル安、原油高のほうが影響大で日経平均始値は141.34円安の14275.26円と大幅安。だがすぐに14300円台に乗せ、30分ほどで14400円にタッチしてプラス圏に浮上した。要因はドル円レートの急速なリカバリーで、反転するとあっさり下落して10時台には14400円を割り込み再びマイナスに。SQ前日でもあり為替レートにデリケートに反応しながら中国市場が開く「危険な時間帯」の午前10時台を迎えたが、上海も香港も3日続伸で始まったのでプラス浮上。しかし為替が再び98円台になったために前引け前に再びマイナスになった。
午前11時47分に日銀金融政策決定会合の結果発表。金融政策の現状維持を全員一致で決め、景気判断は7ヵ月連続で引き上げ、「持ち直している」を「緩やかに回復しつつある」に改めた。「回復」の文字が入るのは2年半ぶり。4月の展望リポートの中間評価では、2015年までの各年の実質GDP、消費者物価指数(CPI)の見通しの数字をわずかに下方修正したが、目標年の2015年のCPI「+1.9%」は変えていない。
後場の日経平均は変化が激しい。円高進行で急落し一時14300円を割るが、98円台の円高基調そのままに午後2時頃から急回復し、14400円を突破してプラス圏に浮上し一時は14500円まであと4円まで迫った。その背景は上海市場が一段高でアジア市場が揃って堅調になったこと。日経平均はプラスに浮上するがTOPIXはたびたびマイナスで、終値も日経平均が55.98円高の14472.58円に対しTOPIXは-0.43の1194.77で「NTねじれ現象」で終わった。売買高は27億株、売買代金は2兆2305億円だった。
値上がり銘柄754よりも値下がり銘柄825のほうが多く、業種別騰落率でプラスは不動産、鉱業、ガラス・土石、機械、水産・農林、証券など。マイナスはパルプ・紙、電気機器、保険、化学、繊維、精密機器などだった。
日経平均プラス寄与度トップは大引け後の8月期第3四半期決算がよかった700円高のファーストリテイリング<9983>の+28円で、上げ幅のちょうど半分。オリンパス<7733>が96円高でプラス寄与度4位に入った。110円高の住友不動産<8830>、55円高の三菱地所<8802>など不動産大手も寄与度上位で、後場急進して50円高の不動産証券化のケネディクス<4321>は売買高4位、売買代金5位に入った。一方、下落銘柄が10円安のトヨタ<7203>、40円安のソフトバンク<9984>、14円安の日立<6501>、30円安の三井住友FG<8316>、9円安の東芝<6502>、20円安のホンダ<7267>、50円安のキヤノン<7751>、50円安のKDDI<9433>、60円安のNTT<9432>など時価総額の大きい主力株に偏り、それがTOPIXをマイナスに抑えた。
売買高、売買代金1位はこの日も東京電力<9501>が独走し8円高。アイフル<8515>は59円高。自動車株でプラスだったのは、インドに商用車の新工場を設け乗用車も2割増産すると報じられて4円高の日産<7201>。初のHV「スバルXVハイブリッド」の受注が月販目標の10倍と伝えられた3円高の富士重工<7270>、38円高のスズキ<7269>、1円高のマツダ<7261>ぐらいだったが、ブリヂストン<5108>は30円高で年初来高値を更新した。
中国関連銘柄は明暗が分かれ、ファナック<6954>は100円高、ダイキン<6367>は85円高だったが、ロボット大手の安川電機<6506>は朝から不調で49円安で値下がり率14位。コマツ<6301>はずっとマイナス圏だったが大引けで1円高に浮上。日立建機<6305>も17円高だった。
NTTドコモ<9437>は6月の携帯電話契約者数純減がよほどショックだったらしく、他社から乗り換えると2万円をキャッシュバックする販促策を2ヵ月ぶりに復活させると報じられたが、競合するKDDI、ソフトバンクとともに株価は下落。国際帝石<1605>、JXHD<5020>、出光<5019>、昭和シェル<5002>は原油高で、アサヒGHD<2502>、キリンHD<2503>、サッポロHD<2501>は猛暑効果で、揃って株価を上げていた。サントリー食品<2587>は無敵の6連騰。220円高で値上がり率19位、売買代金4位に入った。前日、東証マザーズに新規上場したフォトクリエイト<6075>は午前9時5分に3775円の初値がついた。公開価格1670円の2.26倍で、終値は4070円。
3Dプリンター関連銘柄は、図研<6947>は値上がり率2位、アルテック<9972>は値上がり率4位、売買高8位、MUTOHHD<7999>は値上がり率14位、売買高3位、売買代金2位。しかし群栄化学<4229>は売買高7位、売買代金8位に入りながら後場は利益確定売りで一時マイナスで終値はかろうじて1円高だった。耐火レンガの黒崎播磨<5352>は32円高で値上がり率3位で、同業の品川リフラクトリーズ<5351>(旧・品川白煉瓦)も8円高で4.17%上昇した。
大成建設<1801>は9円高で年初来高値を更新。橋梁関連の宮地エンジニアリング<3431>が値上がり率5位、日本橋梁<5912>が同11位に入り、横河ブリッジHD<5911>が年初来高値を更新した。前日の決算発表の内容が良くても、ABCマート<2670>は150円高で年初来高値を更新したものの、眼鏡店チェーンのJIN<3046>は直近四半期がアナリスト予想を下回ったのが問題視され410円安で値下がり率3位に甘んじた。ABCマートと同業のチヨダ<8185>は減益の決算内容そのままに219円安で値下がり率ランキング2位になっていた。
この日の主役は「厚生労働省」。安倍首相はテレビで「今年度の改定で最低賃金の10円以上の引き上げは十分可能だと思う」と話し、新聞に政策関連の記事が何本も出た。「2014年春から70~74歳の医療費2割負担をめざす」と高齢者に負担増を強いるかと思えば、「育児休暇中の所得補償を賃金の6割まで拡充を検討」と少子化対策も懸命。だが市場に最もインパクトがあったのが「iPS細胞について治療・創薬の安全基準を統一して2年で承認がおりるようにする」で、iPS細胞関連銘柄が買われた。東証1部の新日本科学<2395>は9円高、宝HD<2531>は14円高、大日本住友製薬<4506>は9円高。新興市場のタカラバイオ<4974>は22円高、ナノキャリア<4571>は5700円高、リプロセル<4978>は240円高。記事によると文部科学省、経済産業省との間で縦割り行政を廃し、承認までの期間を3分の1に短縮し再生医療のスピーディーな実用化を図るという。お役所仕事は何でもそうあってほしいが、ノーベル賞受賞、アベノミクス成長戦略の目玉という「錦の御旗」のご威光はひときわ強力なようだ。(編集担当:寺尾淳)