前週末5日のNYダウは147ドル高で15000ドルを突破し15100ドル台を回復した。アメリカの6月の雇用統計は、失業率は7.6%で5月と同じだったが、非農業部門雇用者は19.5万人増加で、4月、5月のデータも上方修正された。失業率は0.1ポイント減の7.5%の市場予測を下回ったが、非農業部門雇用者数の増加は1万人減の16.5万人の市場予測を3万人も上回った。長期金利が2.7%台に上昇してマイナスの時間帯もあったが結局、NYダウは大幅高で引け、ドル高が進行してドル円は101円台に乗せた。8日朝方の為替レートはドル円は101円台前半で、ユーロ円は130円にタッチした。
日経平均は181.10円高の14491.07円で始まる。TOPIXは1200にタッチするが日経平均は14500円台に乗らない。午前10時すぎには14400円台前半に下がり、上海市場がマイナスで始まった10時30分には14400円を割り込んでどんどん下げる。為替も円高方向に振れて11時前にはマイナスに転落し、「チャイナ・ブラックホール」が、アメリカの雇用統計と円安がもたらした上昇分を全て、黒く塗りつぶしてしまう。その震源地は7月5日に中国国務院が出した「金融行政・政策の指針」というペーパー。「穏健な金融政策を維持する」というその内容に預金準備率の引き下げなど金融緩和策を期待していた上海市場の関係者が失望し、朝からの大幅安につながり東京市場にも大きく影響した。日経平均は14300円割れ寸前からいったんプラスに持ち直すが、後場の午後1時台にはマイナス圏に下落して14300円をあっさり割り込む。追い討ちをかけるように中国政府は主要官庁に「歳出の5%削減」の財政緊縮を指令し、上海市場は大幅安のまま2時に再開した。
同時に内閣府が発表した6月の景気ウォッチャー調査は、現状判断は-2.7ポイントの53.0と3ヵ月連続で悪化し、先行判断も-2.8ポイントの53.6。基調判断は「このところ持ち直しのテンポがゆるやかになっている」と引き下げられ、前週の日銀短観とは全く正反対の景況感を示した。為替も徐々に円高に向かい、悪材料ばかりで日経平均は一段安になり14200円も割り込む。終値は200.63円安の14109.34円で安値引け。TOPIXも-16.00の1172.58でこれも安値引け。売買高は32億株、売買代金は2兆5155億円で、前週の様子見の薄商いから回復した。前週末が上がりすぎとも言えるが、日中値幅で388円も下落し、大きなイベントを好結果で通過して円安が進んだとはとても思えない、外の猛暑とは正反対の冷え冷えとした相場だった。
東証1部は値上がり銘柄325に対し値下がり銘柄は1285と4分の3以上あり、33業種別騰落率のプラスはパルプ・紙1業種のみ。マイナス幅が小さかったのは小売、鉱業、その他金融、非鉄金属、電力・ガスなどで、マイナス幅が大きかったのは不動産、建設、情報・通信、空運、鉄鋼、倉庫などだった。
日経平均マイナス寄与度1位は-24円のソフトバンク<9984>。スプリント買収がFCC(連邦通信委員会)から承認されたが、S&Pが格付けをジャンク級に引き下げ200円安。中国関連の230円安のファナック<6954>、71円安のコマツ<6301>、60円安の日立建機<6305>、30円安のダイキン<6367>の合計の寄与度は-15円だった。
売買代金ランキング上位のプラス銘柄は、26円高の東京電力<9501>、75円高、値上がり率9位のアイフル<8515>、16円高のケネディクス<4321>、257円高で値上がり率3位に入り、ガンホー<3765>とともにゲーム関連の新しい主役に浮上したKLab<3656>、61円高で値上がり率4位の群栄化学<4229>、11円高のSBIHD<8473>ぐらいで、メガバンク、証券、自動車、電機、不動産などの主力銘柄は壊滅状態。その中で20円高のセブン&アイHD<3382>、3~5月期は営業利益2.5%増の好決算で210円高で上場来高値を更新したローソン<2651>、そのフランチャイジーで値上がり率2位に入ったCVSベイエリア<2687>、決算は悪かったが値上がり率6位のダイエー<8263>、値上がり率12位のジーンズメイト<7448>など、小売の健闘が目立っていた。
前週末に梅雨明けして猛暑が襲来し清涼飲料が主力のサントリー食品<2587>は20円高で上場日から3日連騰。飲料大手はアサヒGHD<2502>は8円高、サッポロHD<2501>は2円高でも、キリンHD<2503>は16円安だった。富士通<6702>は会津若松市の半導体工場を転用した植物工場でレタス生産を行うと報じられ、雇用維持に努力すれば地元も「ならぬものはならぬ」とは言わないが1円安。ネット画面を映すテレビのCMを民放各社に「ならぬ」と拒否されたパナソニック<6752>は16円安。大和ハウス工業<1925>は公募増資で1378億円を調達する希薄化懸念で185円安と大幅続落し値下がり率1位。飯野海運<9119>は最大9.9%の株式売出しによる需給悪化懸念で53円安と売られ値下がり率2位になった。
この日、多くの市場関係者が気にしたはずなのが「ボーイング777関連銘柄」。日本時間7日早朝にサンフランシスコ国際空港で韓国アシアナ航空の旅客機が着陸に失敗して炎上し乗客2名が死亡した。1995年に就航した777は三菱重工<7011>をメインに川崎重工<7012>、富士重工<7270>、川崎重工の100%子会社の日本飛行機、新明和工業<7224>の5社が開発と生産に参加し、日本企業の分担比率は21%。その実績が評価され後のボーイング787プロジェクトにつながった。もっとも20年も前の話で、事故原因の解明はこれからでパイロットが訓練中だったというニュースも入ったためか、三菱重工は2円高、川崎重工は6円高、富士重工は他の自動車株ともども45円安、新明和工業は7円安と、悪材料にはなっていなかった。むしろ今年3月末時点で777を46機保有するJAL<9201>が150円安、52機保有するANAHD<9202>が2円安と、他社でも死亡事故が起きると乗客離れが心配される航空会社の株価のほうが影響を受けていた。(編集担当:寺尾淳)