資格は持っているが、現在看護職には就いていない。いわゆる潜在看護職員である看護師、准看護師は65万人を超えるともいわれるようになった。慢性的に不足している看護師をどのようにして確保するか、この問題は病院レベルを超え、市町村や都道府県、国レベルでの大きな課題となっている。潜在看護職員に向けた復職のための研修や講座は少なくはない。とはいえ、潜在看護職員側からみれば、いざ復職を考えたとき、大きな不安が残る。「今になって夜勤勤務が勤まるだろうか」「激務に対し、心と体がついてくるだろうか」と。
看護師の活躍の場は、病院だけにとどまらず広がりをみせている。イノーヴ株式会社は、2013年2月よりマンションの管理業務に看護師を起用している。通常、マンションの管理人といえば、清掃業務や受付業務、設備の点検業務などを行うが、同社が提案するマンション管理業務のひとつである「ナースな管理人」では、管理人看護師による「健康相談」「人間ドッグサポート」「応急手当」「医療情報提供サービス」「見守りホットライン」などのサービス提供がある。具体的には、健康や介護・育児に関する相談受付サービスや人間ドッグのデータを元にしたアドバイスの提供、かすり傷や軽い怪我などの応急手当の実施、ひとり住まいの高齢者などに対する自宅への定期的な挨拶伺いなどがある。同社によれば「ナースな管理人」は、マンション居住者に対し、安心できるゆたかな生活を提供するだけではなく、超少子高齢化社会に伴う医療費増大などの社会的な問題への寄与や潜在看護師の新たな働き方や雇用を創出する側面への期待も持つという。
また、自治体の動きとしては、島根県の「半農半看護」という取り組みがユニークである。ひとりの看護師がその活動の場を病院内だけに留まらせず、週の半分を看護師として勤め、また残りの半分を農業従事者として勤めるというライフワークを提案している。この制度は本来「半農半X(エックス)」として、週の半分を農作業に充て、他の半分で、会社に勤めたり自営業者として活動するというものであるが、「半農半看護」を希望する看護師を受け入れても良いとする病院は県内に多数あるため、看護師のIターン、Uターンは歓迎ムードである。
看護職から離れた有資格者たちが、再び病院に戻るのと病院外で看護職として活動するのとでは、描く未来がまったく異なる。そして、看護師による多角的なサービスの提供は、私たちの暮らしの大きな支えとなることであろう。(編集担当:中村小麦)