「就職列車に揺られて着いた 遠いあの世を思い出す 上野はおいらの心の駅だ」昭和39年に発売された、青森県出身の井沢八郎(1937~2007年)さんのヒット曲 『あゝ上野駅』の歌詞である。
JR上野駅が7月28日で、開業130周年を迎え、寝台特急が発着する13番線ホームの発車ベルが、『あゝ上野駅』のメロディに変わった。高度成長期に、北の東北地方から集団就職で上京し、上野駅に降り立った多くの若者たちの心の支えとなった。
このメロディと歌詞は”金の卵”世代の心に、それぞれの思いが、現在も忘れる事の出来ない郷愁を感じている人は多い。
駅構内では、28日、この日を記念して、セレモニーが開かれ、JR東日本の音楽隊が『あゝ上野』を演奏すると、駆け付けた年配の来場者などが、一斎に歌詞を口ずさんでいたのが印象的であった。
当時集団就職で上野駅に降り立った71歳の男性は、「実家にいる母親に会いたくて、返ろうか、どうしょうか迷った時は、いつの間にか上野駅の改札口にきていた」と当時の北の玄関口、上野駅の印象を語る。
また同じく就職列車で上京した70歳の女性は、「今でも同窓会は上野駅に集まり、最後に必ず全員で『あゝ上野』を合唱するという。この歌が発車ベルに採用されたことは集団就職した人たちにとって、感慨深いものがあろう。
上野駅前にある『あゝ上野』の歌碑には、今でも多くの人が訪れるという。当時上野駅に降り立った多くの若者たちの心の支えになり、辛い寂しいときに口ずさんだ懐かしいメロディは、永遠に語り継がれていくことであろう。
集団就職列車とは、昭和29年から50年まで、全国の農村から大都市へ就職する中学・高校新卒者を運んだ臨時列車。当時18番線ホームが、就職列車用に使われ、同ホームは平成11年に廃止され、13番線ホームは宇都宮、高崎線の他、札幌行寝台特急「北斗星」と青森行き同「あけぼの」が発着する。(編集担当:犬藤直也)