ここ数年、日本ではハイボール人気に引きずられる恰好でウイスキーの売上が伸びている。2012年度のサントリー決算書によると同社ウイスキーの売上は前年比103%と堅調で、アルコール飲料全般の長期低落傾向とは逆のベクトルが存在するわけだ。なかでも、日本で10数年ほど前から人気に火が付いた「シングルモルト・ウイスキー」人気が東アジアに広がり、台湾、韓国、中国では凄い勢いでウイスキーの消費が伸びている。シーバスリーガルなどを中国で販売するペルノリカール社の極東担当の話では、売上は毎年50%前後の伸びだという。また、拙著書『シングルモルトの愉しみ方』(学研/2008)が、2010年にまずハングルに訳され出版。ついで台湾語となって台湾・香港で出版。今年中に中国語で上海の出版社から発行となる。このことを見ても、ウイスキー人気が東アジアで広がり、日本でも堅調な売上をマークしていると言えそうだ。
日本でもブレンデッドウイスキーがハイボール人気に後押しされて“じわり”と伸長。サントリーのブレンデッドを代表する「角瓶」は2012年に前年比111%の伸びを記録している。
この密かなウイスキー人気をバックに、スコッチウイスキーの代表ブランド、シーバスリーガルが日本市場限定のウイスキーを発売する。「Chivas Regal MIZUNARA Special Edition」だ。シーバスリーガルの特定の国の市場に向けて商品開発するユニークなマーケティング手法が日本にも持ち込まれたわけだ。同ブランドが東アジア、なかでも中国向け製品開発を積極的に進めるなかで編み出した手法を、日本向けの高品位商品に応用したものだろう。
この日本限定スコッチの特徴は、日本人の味覚に対応した高品位なブレンデッドウイスキーのブレンド後の熟成(マリッジ)を、日本のオーク「ミズナラ」を使った樽で行なったことにある。
ミズナラ樽によるウイスキーの熟成は、サントリーがシングルモルト「山崎」で既に行なっている手法で、独特で日本的な香味が特徴。ただ、「山崎」の場合は最初から熟成樽がミズナラ樽で、そこで30年ほど寝かせていた製品だ。今回の「シーバス・ミズナラ」は、ブレンド後の熟成「後熟(マリッジ)」にミズナラ樽を使っている。
製品の基本的なスペックは、アルコール度数40%/700ml、熟成年数12年以上。価格オープン。2013年10月1日発売である。発表された資料には後熟の期間やブレンドに使ったモルトのスペックなどには触れられていない。また、ミズナラ樽は新樽なのかリプレースなのかも分からない。この辺りはブレンダーのコリン・スコット氏に会う機会があったなら尋ねてみたい。(編集担当:吉田恒)