【日経平均】政治家の口のせいで株価は冷えて297円安

2013年08月15日 20:12

 NYダウは113ドル安で7月10日以来の安値。4~6月期のGDP成長率は、フランスが+0.5%、ドイツが+0.7%、ユーロ圏全体が7四半期ぶりプラスの+0.3%と続けざまにポジティブな数字が発表され「ヨーロッパの夜明け」を感じさせたが、エジプト情勢の緊迫化で原油高リスクが意識されロンドン市場のFTSE100は下落。NY市場では長期金利の高止まりが買い意欲を鈍らせ、セントルイス連銀のブラード総裁の「量的緩和の継続はインフレを招く」という趣旨の発言がとどめを刺して大幅安になった。15日朝方の為替レートはドル円が97円台後半、ユーロ円が129円台後半で前日より円高だった。

 日経平均は204.52円安の13845.64円で始まる。さすがに2日で530円も上昇すると利食い売りに押される。それでも底堅く午前10時30分すぎには13900円台に乗せ14000円の大台まであと19円まで迫ったが、11時台に為替が円高に振れて日経平均も100円を超える下落。その原因は「政治家の口」で、菅官房長官が13日付日経新聞朝刊の「首相が法人減税を指示」について「指示した事実はない」と否定し、麻生財務大臣が「法人減税の効果は少ない」と発言した。この日発表された政府の月例経済報告に「デフレ状況ではなくなりつつある」と書こうと、株価は閣僚の口に反応する。後場ははじめ13800円をはさんで一進一退だったが、徐々に変動域が下がって終値は297.22円安の13752.94円と3日ぶりに反落。日中値幅はこの日も270円もあった。TOPIXは-19.52の1151.82。売買高は20億株、売買代金は1兆6886億円だった。

 値上がり銘柄235に対して値下がり銘柄は1446で82.4%を占め、業種別騰落率では海運セクターだけ値上がりした。マイナス幅が小さい業種は鉱業、非鉄金属、水産・農林、石油・石炭、精密機器など。大きい業種はゴム、証券、不動産、パルプ・紙、金属製品、情報・通信などだった。

 日経平均採用225種でプラスは21銘柄だけ。前日と正反対に「御三家」は日経平均マイナス寄与度1~3位に入り-82円。京セラ<6971>、KDDI<9433>がそれに続いた。

 唯一の上昇セクターの海運は中国に加えてヨーロッパにも景気底入れ期待が出てバルチック海運指数が+5.3%と大幅続伸し、商船三井<9104>は14円高で値上がり率15位、政府が導入を目指す日本初のLNG燃料船の補助事業に内定という材料が出た日本郵船<9101>は3円高、川崎汽船<9107>は4円高になった。資源関連株として連日買われていた太平洋セメント<5233>は、大気汚染を理由に中国の南京市政府から工場閉鎖命令を受け10円安。中国での生産の3~4割が影響を受けるという。逆に三菱マテリアル<5711>は銅やニッケルの取引価格が上昇して6円高で年初来高値を更新した。

 電子書籍関連のKADOKAWA<9477>はこの日も買われて155円高で値上がり率10位。3Dプリンター関連のMUTOHHD<7999>は10円高とテーマ株物色は衰え知らず。前日の続きで澁谷工業<6340>は連日のストップ高比例配分、400円高で値上がり率トップになり、JIN<3046>は続落して150円安になり値下がり率19位に入っていた。

 小売セクターでは「リアル店舗対ネット通販」の話題が尽きないが、1~6月のネット通販の利用額がスマホの普及にも後押しされ前年同期比で12%増と、半期で過去最高を記録したと総務省が発表した。その代表銘柄の楽天<4755>は電子書籍端末「コボ」を新興国でも積極導入して「キンドル」のアマゾンドットコムに対抗すると報じられ34円高。狙っているのはネット通販注文端末としての普及である。

 ニコン<7731>は9日に通期業績と年間配当の下方修正で288円の大幅安を喫した後、12日に年初来安値をつけ、13日は2円高、14日は1円安と底値圏を這っていたが、この日は32円高で売買代金10位と買いを集めた。材料は理化学研究所と組んで移植用のiPS細胞の量産に道を開く装置を開発したという新聞記事。半導体検査装置の技術を活用して、現状は目視に頼るiPS細胞の検査を自動化し低コストでがん化のリスクを抑えて移植の治療費を大幅に低減するという。社会に貢献する実用化技術とはまさにこれ。刺激を受けてリプロセル<4978>などiPS細胞関連銘柄もテーマ物色されていた。

 この日の主役はグリー<3632>。前日に6月期本決算を発表し、スマホ転換が遅れたツケで純利益53%減の減収減益、初の減配で通期見通しも出せずと全くいいところなし。しかし朝から熱く買われて売買高、売買代金ともにトップになり、109円高で値上がり率2位に入った。数年前にはグリーと「ソーシャルゲームの一番星」と並び称されたDeNA<2432>も32円高で売買代金13位だった。今をときめくガンホー<3765>は利益確定売りで下落。ゲームマニアは、どんな分野でもいったん落ち目になると「終わったコンテンツ」を意味する「オワコン」のレッテルを貼って粗大ゴミ扱いする傾向があるが、個人投資家はグリーを「オワコン」とみておらず、まだ〃うま味〃のあるダシが取れるとみているのだろうか。それとも本決算で〃パンドラの箱〃から悪材料が全部出尽くして、箱の底に残った「希望」が買われたのだろうか。(編集担当:寺尾淳)