【日経平均】GDP成長率が市場予測を下回って95円安

2013年08月12日 20:12

 前週末9日のNYダウは72ドル安。めぼしい経済指標も決算発表も地区連銀総裁発言もなく手がかり難。一時は150ドルを超える下げだった。12日朝方の為替レートは、ドル円は96円台前半、ユーロ円は128円台前半で前週からの円高傾向が続いていた。

 取引時間前に4~6月期の四半期実質国内総生産(GDP)が発表され、GDP成長率の年率換算の速報値は3四半期連続プラスだったが、市場予測の+3.6%を1.0ポイント下回る+2.6%だった。安倍内閣が消費税引き上げの判断材料にするのは9月9日に発表される確定値だが、「数値が悪いと消費増税への慎重論が高まるから株価が上がる」という、アメリカの量的緩和縮小にまつわる市場の思惑の日本版のような見通しも語られていた。

 しかし、それとは正反対にドル円が一時96円を割り込む円高に見舞われ、日経平均は145.49円安の13469.70円で今週の取引がスタート。それでもショックからの立ち直りは早くて15分ほどで13500円台に戻し、ドル円も96円台前半に戻った。10時30分に始まった上海、香港市場が上げ幅をどんどんひろげる展開で、為替も円安が進んだため午前11時すぎ、ロケットのように100円を超える上昇をみせてプラス圏に達し、前引けは10銭のプラスで終える。甘利経済産業大臣が「引き続きいい数字が出てきた」、安倍首相が「順調に景気は上がっている」と、消費増税に臨む態度は揺るがないと解釈できるコメントを出したことも、財政不安を懸念する外国人投資家の買い戻しを誘ったとみられる。

 後場は為替が円高方向に戻ったのでマイナス圏の13500円台に下げてリスタートし、午後1時30分すぎには為替と連動してさらに下げて13460円近くまで下落。その後は13500円をはさんで一進一退になり、終値は95.76円安の13519.43円だった。TOPIXは-6.29の1134.62。売買高は17億株。売買代金は1兆5971億円で今年最低を記録した。商いが薄くても上下228円も大きく振れる。

 値下がり銘柄1087に対して値上がり銘柄は544で意外に多い。東証1部33業種別騰落率は12業種がプラスで、その上位はゴム、鉱業、非鉄金属、空運、卸売、電力・ガスなど。マイナス業種は不動産、その他金融、証券、情報・通信、海運、銀行などだった。

 ソフトバンク<9984>とファーストリテイリング<9983>の2銘柄だけで日経平均を44円引き下げ、業種別騰落率最下位の不動産の大手、住友、三井、三菱の3銘柄のマイナス寄与度が17円で、合計61円で下げ幅の64.2%に及んだ。プラスのほうは103円高の日立建機<6305>が寄与度4円でトップ。中国市場の大幅上昇を受けコマツ<6301>も95円高で寄与度4位に入った。

 メガバンクも証券大手も揃ってマイナス。自動車ではトヨタ<7203>は20円高が目立つぐらいで、主力銘柄は低調だった。その中で資源関連の住友金属鉱山<5713>が44円高、三菱マテリアル<5711>が5円高と健闘。精密機器はキヤノン<7751>は65円上昇したがニコン<7731>は39円安で4日続落し年初来安値を再び更新した。ブリヂストン<5108>は9日発表の1~6月中間期決算で営業利益42%増と市場予測を上回る結果を出し、通期営業利益見通しも3820億円から4000億円に上方修正。それを好感されて95円高になった。大日本スクリーン製造<7735>は決算発表がパッとせず、ゴールドマンサックスが投資判断を2段階も引き下げて24円安だった。

 三菱商事<8058>を中心とする日本の企業連合がミャンマーのマンダレー国際空港の運営オペレーションの優先交渉権を得たと報じられ三菱商事は17円高。同じミャンマーでJFEHD<5411>は同国政府と合弁でインフラ建設にたずさわると報じられ1円高。ミャンマーで昔から実績を築いてきた丸紅<8002>は16円高だった。日経新聞に、日本の海外直接投資が中国では18%減の一方でASEAN諸国が4.2倍で東南アジアへのシフトが進んでいるという記事が出たが、ASEANの最後発国「ミャンマー」はいま、株が買われるキーワードの一つになっている。

 日本カーバイド工業<4064>はストップ高の80円高で値上がり率トップ。9日に9月中間期の営業利益見通しを1億円上方修正すると発表し、売買高7位と人気を集めた。全国で大型農場を経営し野菜をPB販売すると報じられたイオン<8267>は1円高。日本マクドナルドHD<2702>は12月期通期の純利益見通しを9%下方修正したので62円安だった。

 5月の連休の谷間もそうだったが、夏休みをとったサラリーマン個人投資家が日中ザラ場のトレードに参戦したようで、Sサイエンス<5721>、ランド<8918>のような「遊べる超低位株」や、猛暑関連のセイヒョー<2872>、TPP・農業関連の日本農薬<4997>、3D関連のMUTOHHD<7999>といったテーマ株の売り買いが盛り上がった。個人投資家に人気があるゲーム関連も同様で、DeNA<2432>は朝から上昇して28円高で売買代金5位に入り、スクエニHD<9684>は52円高で年初来高値を更新した。

 この日の主役はシチズンHD<7762>。朝から買いを集めて一時ストップ高の91円高で値上がり率2位に入った。9日に4~6月期の決算を発表し、営業利益は2.9%増で通期の売上高見通しを2925億円から2945億円に、営業利益見通しを190億円から195億円に上方修正。最終損益見通しは5億円上方修正して105億円の黒字を見込んでいる。前期の88億円の最終赤字からV字回復するだけでなく、その中身も電子デバイス事業がハイブリッド車向け、スマホ向けと好調なマーケットをおさえていて、高級腕時計の売れ行きも好調。業績の伸びしろがあるとみてJPモルガンは投資判断を引き上げた。昭和の時代から春の進入学・新社会人商戦を繰りひろげた相手のセイコーHD<8050>も高級腕時計がよく売れていて好決算を発表し、35円高で値上がり率8位だった。(編集担当:寺尾淳)