【日経平均】前場は急落、後場は急上昇して終値27円高

2013年08月21日 20:12

 NYダウは7.75ドル安。ベスト・バイなど小売業の好決算に刺激されて15000ドル割れから上昇を見せたがシカゴ連銀全米活動指数は5ヵ月連続マイナスで長期金利は高止まりし、終盤にマイナスになり結局5日続落。終値15000ドル台はかろうじて維持した。NASDAQはアップルの新型iPhoneの9月出荷指示の観測などもありプラス。21日朝方の為替レートはドル円は97円台前半、ユーロ円は130円台後半で、新興国の通貨安、株安で「リスク回避の円買い」が進行していた。

 取引時間前の外資系証券注文動向は2日連続の売り越しだったが、日経平均は34.90円高の13431.28円で始まり、前場途中までTOPIXが時々マイナスになりながら日経平均は13400円台のプラス圏で推移し、一時13500円にあと1銭に迫った。しかし午前10時30分に上海市場が開いた「危険な時間帯」の30分足らずの間、上海総合指数の急落に合わせ為替の円高とセットで13400円、13300円を割り込み13272円まで急落した。

 前引けは13290円で、後場もしばらく13300円前後の水準をウロウロしていたが、午後1時40分頃からわずか15分ほどで100円を超える上昇をみせプラス圏まで浮上する。円安とインドのムンバイなど一部の新興国市場の株価指数が持ち直したのが要因。2時台にはさらに上げ幅を拡大するが朝方と同じくTOPIXはマイナスに。終盤は一時マイナスになったが終値は27.95円高の13424.33円と反発した。前場は急落、後場は急上昇で日中値幅は約250円。TOPIXは-3.53の1121.74で「NTねじれ現象」が出現した。売買高は21億株、売買代金は1兆8059億円で、商いはお盆休みの14日よりも少なく盛り上がりを欠いた。

 事実上は下落の日で、値上がり銘柄は577で値下がり銘柄1016の6割以下で、業種別騰落率も13対19で下落のほうが優勢。上昇セクター上位は空運、機械、精密機器、不動産、金属製品、証券など。下落セクター下位は電力・ガス、水産・農林、パルプ・紙、輸送用機器、陸運、海運などだった。

 日経平均採用225種だと値上がり91銘柄対値下がり118銘柄で差は接近する。プラス寄与度トップは140円高のKDDI<9433>で+11.21と上げ幅の約4割を占めた。マイナス寄与度トップは130円安のトヨタ<7203>で-5.21だった。ファーストリテイリング<9983>は日経平均と同じく忙しく浮いたり沈んだりし150円高で終えている。

 薄商いの市場の最大の動きは東京電力<9501>への売り浴びせ。売買高、売買代金ともトップで57円安は値下がり率2位。福島第一原発で数千兆ベクレルの放射能汚染水が漏れ、原子力規制委員会は「レベル3(重大な異常事象)」とした。福島県産農水産物の風評被害の再発が心配される。

 主力輸出株は下落銘柄が多く、プラスは15円高のキヤノン<7751>、30円高のコマツ<6301>、150円高のファナック<6954>、7円高のニコン<7731>など数えられるほど。その中で東京エレクトロン<8035>は、7~9月の半導体製造装置受注がサムスン電子のメモリー投資需要を取り込んで1050億円前後増える見通しで4~6月から7%増と伝えられ155円高。半導体製造装置の関連銘柄は通期業績の上振れ期待があり、アドバンテスト<6857>が20円高、大日本スクリーン<7735>が15円高、ディスコ<6146>が180円高。一方、富士通<6702>は半導体生産を見直して三重工場を高機能品に特化するというニュースを好感され8円高だった。

 クレディスイス証券が投資判断を引き上げて東邦チタニウム<5727>は67円高で値上がり率4位、大阪チタニウム<5726>は165円高で値上がり率6位と大きく上昇した。チタンの市況は回復する見込み。中途採用求人が7月は前年の5割増で5年半ぶりの高水準と報じられ、求人サイトのリブセンス<6054>は195円高で値上がり率13位。同じ成功報酬型モデルの求人サイトを運営するジャスダックのエン・ジャパン<4849>はいちよし経研が投資判断を引き上げて大幅上昇し、転職情報サイトを運営するキャリアデザインセンター<2410>も900円高だった。

 ヒトも動けばカネも動く。近鉄<9041>は後場、最大780億円の公募増資を9月に実施すると発表し希薄化懸念で27円安になり値下がり率8位。超高層ビル「あべのハルカス」の工事代金、借入金返済にあてる。JT<2914>は配当性向を50%に引き上げる株主優遇策を発表し10円高。7月のコンビニ売上高が0.8%減と2ヵ月ぶりのマイナスで、ローソン<2651>は60円安でもファミリーマート<8028>は20円高だった。

 この日の主役は人気のゲーム関連銘柄で、業界地図を変えそうなニュースがあった。15社が連合を組み、スマホ向けゲームで新しいプラットフォームを構築しグリー<3632>やDeNA<2432>のSNSと手を切るという。15社の中の大手のセガサミーHD<6460>が33円高、カプコン<9697>が17円高になる一方、収益源を失うグリーは61円安で値下がり率7位、DeNAは売買代金5位の153円安と売り浴びせられて値下がり率4位になった。15社に入っていないKLab<3656>は77円安で値下がり率3位。連合の参加企業は年内に約30に増え、利用者数はのべ4000万人以上になる見通しという。SNSをベースにゲームに誘導する「ソーシャルゲーム」は一世を風靡したが、スマホの急速な普及の中で短命に終わるのだろうか。しかし、もっと古いジャンルのゲーム専用機「プレステ4」の予約注文が100万台を突破したニュースで、ソニー<6758>は朝から買いを集めて10円高になっていた。(編集担当:寺尾淳)