【日経平均】今年最低の薄商いで8月で6回目の高値引け

2013年08月19日 20:11

 前週末16日のNYダウは30ドル安で3日続落。1週間で344ドルも下がった。住宅着工件数も住宅建設許可件数もミシガン大学消費者信頼感指数も市場予測を下回ったのに加え、バーナンキ後継はサマーズ元財務長官という観測が強まり長期金利が一段高の2.8%台に上昇しては、下落幅がこの程度でよくおさまったというところ。金利上昇でドルが買われ、19日朝方の為替レートはドル円は97円台後半、ユーロ円は130円台前半と、前週末より少しだけ円安になっていた。

 7月の貿易収支は1兆240億円で市場予測を大幅に超える記録的な赤字。赤字は13ヵ月連続だが為替は発表後に少しだけ円安。お盆休みが明けて日本経済リスタートの日の日経平均は19.63円高の13669.74円と少し反発して始まった。しかし午前10時前にはドル円レートが円高に転じてマイナス圏に定着する。13600円を割り込んでも一瞬だけで前場の値動きはほぼ100円以内にとどまり、上海、香港市場のマイナススタートにも反応薄だった。決算発表シーズンは完全に終わり、政界はまだ夏休み。月曜日で海外市場や経済指標の影響が乏しい手がかり難の真空状態で、前週に続き日経平均は為替と連動した先物主導、市場はゲーム、シェールガス、インフルエンザ、子育て支援など特定テーマの材料株や超低位株がアトランダムに物色されるだけという状況が続く。それでも11時をすぎると為替が円安方向に切り替わって日経平均は再びプラスになった。後場はプラス圏の13600円台後半と13700円台前半を行ったり来たりしたが、午後2時30分すぎから為替の円安に歩調を合わせて上昇。大引け間際に急騰し終値は108.02円高の13758.13円で高値引け。これで8月は7回目の「ないとこ引け」。TOPIXも+6.48の1149.13で高値引け。投資家は新興市場に関心が向いて東証1部は薄商いが極まり、売買高は14億株、売買代金は1兆2566億円で今年最低を更新した。

 値上がり銘柄は1101、値下がり銘柄は493で東証1部33業種別騰落率のマイナスは空運、電気・ガス、鉄鋼、繊維の4業種にとどまった。プラス上位は石油・石炭、パルプ・紙、建設、金属製品、その他製品、鉱業など。プラス下位は非鉄金属、証券などだった。

 日経平均寄与度のプラス寄与度1、2位はソフトバンク<9984>とファーストリテイリング<9983>で、合わせて値上がり幅の約4分の1の+26円押し上げた。マイナス寄与度の上位はKDDI<9433>、武田薬品<4502>、ヤマトHD<9064>などだった。

 みずほ<8411>と三菱UFJ<8306>が揃って値動きなしで野村HD<8304>も2円高など金融関連銘柄は概して影が薄く、輸出関連企業の主力株もトヨタ<7203>が30円高、富士重工<7270>が8円高、ホンダ<7267>が10円高、ソニー<6758>が12円高で、いずれも値上がり率が1%未満で上昇の勢いは小さかった。

 JXHD<5020>は三菱UFJモルガンスタンレー証券が投資判断を引き上げ21円高で売買高10位。ゼリア新薬<4559>は鉄欠乏症治療薬「フェリンジェクト」の国内販売でスイスのビフォーファーマ社と独占的契約を締結したと発表して買いを集め、191円高で年初来高値を更新し値上がり率4位。貧血など鉄欠乏症の人は国内に約1800万人いるという。「クレベリン」でインフルエンザ関連テーマ株の大幸薬品<4574>は岩井コスモ証券が投資判断を引き上げて131円高で値上がり率5位になった。同ランキングは1位のネオス<3627>がスマホアプリ関連、3位の石井鐵工所<6362>がシェールガス関連など、テーマ株の花盛りだった。

 前週に3日連続ストップ高と人気沸騰した澁谷工業<6340>は待ったがかかり304円安で値下がり率2位。グリー<3632>は8円高と反発したが、DeNA<2432>は売買代金4位ながら67円安で値下がり率13位。KLab<3656>は63円高で値上がり率12位とゲーム関連株は高安まちまちだった。

 主力株がふるわない中、川崎重工<7012>は値上がり率2.17%で8円高。日経新聞朝刊にロールスロイスと共同で航空機エンジンを開発し、燃費を3割改善して航続距離を伸ばし小型機で日米間の太平洋横断飛行が可能という記事が出ていた。初飛行は2019年の予定。大空への夢のある買い材料だった。

 その大空への玄関口の「羽田空港」がこの日の主役。滑走路の沖合移転や国際線ターミナルの新設で空き地になった跡地を「国家戦略特区」に指定する構想が政府内に浮上したと産経新聞が報じ、11時すぎから関連銘柄が急騰した。羽田空港内の施設を所有する空港施設<8864>は一時ストップ高の100円高で値上がり率2位、ターミナルビルを所有する日本空港ビルデング<9706>は54円高で年初来高値を更新した。記事によると空港に隣接した「羽田グローバルアライアンスセンター地区」と六郷川対岸の川崎市の「ライフイノベーション地区」に中小製造業支援、クールジャパン、先端医療の3分野の企業を集積し、国際展示場を設け、対日投資を呼び込む「保税特区」の指定など大胆な規制緩和も実施するという。両地区に空港線、大師線の鉄道アクセスが通じる京浜急行電鉄<9006>は19円高、東京モノレールを子会社に持つJR東日本<9020>は110円高だったが、JAL系商社で空港売店を運営するJALUX<2729>は年初来高値をつけたものの後場急落して5円安だった。(編集担当:寺尾淳)