NYダウは16ドルの小幅高。4~6月期実質国内総生産(GDP)改定値が速報値から上方修正されて前期比2.5%増になり、新規失業保険申請件数が前週より減少したが、経済指標が良くても量的緩和縮小懸念は出なかった。シリア攻撃はオバマ大統領が「決定は下していない」と繰り返し、マーケットでは「すぐには行われず、行われても小規模」という見方が優勢になり金や原油の先物価格も石油関連株の株価も下落した。英国議会下院が参戦を否決した30日朝方の為替レートは、ドル円が98円台前半、ユーロ円が130円台前半で、ドル円が少し円安に振れていた。
月末最終営業日なので取引時間前は国内経済指標の発表ラッシュ。7月の生鮮食品を除く全国消費者物価指数(CPI)は+0.7%で6月から0.3ポイント上昇し市場予測を上回った。8月の東京都区部消費者物価指数(CPI)は+0.4%で市場予測通り。7月の完全失業率は3.8%、有効求人倍率は0.94倍で、それぞれ6月から0.1ポイント、0.02ポイント改善し有効求人倍率は市場予測を上回った。7月の家計調査の実質消費支出は+0.1%で6月の-0.4%から改善したが市場予測には届かない。7月の鉱工業生産速報値は+3.2%で6月のマイナスから急回復。全般的に好調な数字が揃っていた。
月末のドレッシング買いと金曜日の利益確定売りが重なり、経済指標の影響もTOPIXのリバランスの影響も出そうな日経平均は113.53円高の13573.24円で始まり、13600円にも一時タッチ。欧米株の堅調と軍事緊張の小康状態が後押しするが、それも1時間限り有効だった。午前10時を回るとまずTOPIXがマイナスになり、日経平均も13500円を割ってマイナス圏に落ち、さらに13400円も割り込む急落を喫する。しばらく13400円前後でもみあうが11時台は一段安で、前引値は13369円になった。
後場は午後2時頃に一時13367円まで下げる場面もあったが、大半の時間帯はマイナス圏、13400円をはさんで行ったり来たりする方向感のない小動きで推移。土壇場の波乱は起きず終値は70.85円安の13388.86円で1勝4敗、前週末比271円安で今週の取引を終えた。7月末と比べると279円安で8月を締めくくり、これで4ヵ月連続マイナス。売買高は22億株で8月23日以来の20億株台に乗せたが、売買代金は1兆9703億円で2兆円に少し足りなかった。
値上がり銘柄272に対し値下がり銘柄は全体の8割近い1393もあったが、業種別騰落率では海運、電力・ガス、その他金融の3業種がプラス。マイナス幅が小さい業種はゴム、サービス、電気機器など。マイナス幅が大きい業種はパルプ・紙、その他製品、非鉄金属、鉱業、石油・石炭、化学などだった。
日経平均プラス寄与度トップはファーストリテイリング<9983>で+4円。マイナスのほうは三菱UFJモルガン・スタンレー証券が投資判断を引き下げたTDK<6762>がトップで-5円。プラスもマイナスも寄与度が特定銘柄に偏ることなく分散していた。
薄商いの中、東京電力<9501>の売買が膨らみ続け、売買高5位、22円高で値上がり率3位に入ったCVSベイエリア<2687>に代表される低位株物色ばかり盛り上がるという、8月は何度も見てきた展開。メガバンク3行も証券大手もマイナスだったが、その他金融のオリックス<8591>が15円高で売買代金8位に登場していた。自動車大手はトヨタ<7203>の120円安を筆頭にマイナスが並び、上昇は2円高のマツダ<7261>、5円高のいすゞ<7202>、8円高のスズキ<7269>、4円高のダイハツ<7262>で、いずれも小幅高だった。
電機はソニー<6758>が3円高。パナソニック<6752>は21円高で売買高11位、売買代金6位と買われた。個人向けスマホ事業から撤退して選択と集中を進める中、中間配当5円を出して2年ぶりに復配するのが好感された。シャープ<6753>はデンソー<6902>の加藤宣明社長の「20~30億円を出資する」というインタビュー記事、マキタ<6586>が100億円を出資する方針を固めたという記事が朝日新聞に載り3円高。第三者割当増資に応じるデンソーは30円安、マキタは40円安だった。電子部品のミツミ電機<6767>は三菱UFJモルガン・スタンレー証券が投資判断を引き上げ、37円高で値上がり率13位になっていた。
エイチ・アイ・エス<9603>はゴールドマン・サックス証券が投資判断を引き上げて200円の大幅高。サイバーエージェント<4751>は9月30日を基準日に1株を100株とする株式分割を発表し1万円高(+4.13%)だった。売買単元も100株に改める。決算関連ではパーク24<4666>が前日に10月期第3四半期決算を発表し、駐車台数は8%増、純利益は16%増で過去最高になり56円高。半導体用シリコンウエハーのSUMCO<3436>は販売が好調で7月中間期の営業利益が120億円を超えるという業績観測報道が出て13円高と買われていた。
一方、シリア危機が遠のいた観測で石川製作所<6208>は8円安で値下がり率6位になり、原油価格が下落に転じて国際石油開発帝石<1605>は3日ぶりに反落した。任天堂<7974>は機能を落とした「2DS」の評判がよほど悪いようで720円安で3日続落し値下がり率10位。9月7日に東京五輪誘致に成功すれば「お台場カジノ」構想が具体化する思惑で関連銘柄の日本金銭機械<6418>は66円高で値上がり率15位、オーイズミ<6428>は42円高で同18位に入った。
この日の主役は「放射能除染」。値上がり率1位のJBR(ジャパンベストレスキューシステム)<2453>はストップ高比例配分の7万円高(+21.54%)で年初来高値更新。大林組<1802>と共同で放射性物質を吸着する藻を活用する道路除染システムを開発したと発表した。同2位のアタカ大機<1978>もストップ高比例配分の80円高で年初来高値更新。灰から放射性セシウムを分離・除去する装置を開発。同じく灰の中の放射性セシウムを安全に処理できる装置を開発した東証2部の神鋼環境ソリューション<6299>も一時ストップ高の100円高と買いを集めた。
放射能除染が注目された理由の一つはオリンピック誘致。3円高で3日ぶりに上昇した東京電力・福島第一原発の放射能汚染水漏れについて、政府は9月に処理設備の増設や国費の投入などの対策を公表するが、そのスケジュールは「IOC総会に間に合わせる」と共同通信が報じた。IOC委員が東京に入れる票を減らさないためにも、「フクシマ」の放射能対策はいま急務になっている。(編集担当:寺尾淳)