NYダウは64ドル安で3日ぶり反落。その要因は「シリア攻撃開始か?」という地政学的リスクの高まり。ケリー国務長官が「化学兵器を使用したシリア政府にオバマ大統領は責任をとらせる決意だ」と記者会見で発言すると、耐久財受注が7.3%の大幅減で市場予測を下回り量的緩和縮小が遠のく思惑で小高く始まっていた週明けのNYダウがたちまち下落した。ダラス連銀製造業活動指数が良かったこと、連邦政府の財政問題は10月中旬に債務上限に達すると報じられたことも投資家心理を冷やした。27日朝方の為替レートは、ドル円は98円台前半、ユーロ円は131円台半ばで、朝は円高方向に進行中だった。
日経平均は84.53円安の13551.75円で始まり、マイナス圏の13500円台での静かな値動き。午前10時30分に上海も香港も反落スタートしたが、すぐに上海がプラスに転じ、ドル円も円安に動いて日経平均は下げ幅を圧縮。午前11時を回ると13600円台に乗せ、前引けはTOPIXともどもプラスで終える。後場は小幅安で始まったが為替の円安とともに午後1時前にはプラスに転じる。それでも上値は抑えられ、1時45分頃から下落が始まって13560円近辺まで下落する。その時間帯には国産ロケット「イプシロン」が発射直前の秒読み中に打ち上げが中止になるという出来事があった。2時30分すぎから為替の円高も加わって一段安で下落幅が100円を超える「逆噴射」ぶり。後場ピークの1時からボトムの2時52分までに161円下げた。終値は93.91円安の13542.37円と続落。TOPIXは-5.98の1134.02。売買高は17億株、売買代金は1兆4323億円で前日から持ち直した。
値上がり銘柄495に対し値下がり銘柄は62.6%の1098。値上がりセクターは16で非鉄金属、電気・ガス、空運、ガラス・土石、電気機器、パルプ・紙など。値下がりセクターは17でその他金融、石油・石炭、小売、陸運、サービス、不動産などだった。
売買代金2位と買われ56円高で株価2000円台を回復したソニー<6758>が日経平均プラス寄与度トップだったが+2円。他に+1円を超えたのは京セラ<6971>、武田薬品<4502>、TDK<6762>だけだった。一方のマイナス寄与度1~3位には「御三家」が君臨し合計-25円。御三家筆頭のファーストリテイリング<9983>はブルームバーグが「香港上場計画」を報じたが動じる気配もなく450円安。この日は8月決算の権利付き最終日だったが、「ユニクロ」の店で商品が割引で買えるような株主優待制度は一切ないので値動きも商いもいつも通りだった。
メガバンクも大手証券も自動車大手も全てマイナス。しかし電機大手はソニーの他に三菱電機<6503>が5円高、前場のマイナスから浮上したパナソニック<6752>が売買代金14位で18円高。14円高のコニカミノルタ<4902>も同じような値動きをした。日経新聞で銅やニッケルなど金属市況の改善が報じられ、下期の業績好転期待で住友金属鉱山<5713>は15円高、三菱マテリアル<5711>は7円高になり、非鉄金属セクターは業種別騰落率トップに立った。
ランキングをにぎわせたのが3Dプリンター関連銘柄で、アメリカでシティグループが関連銘柄の投資判断を引き上げた影響で1円高の群栄化学<4229>は売買高7位、売買代金10位。25円安で値下がり率13位のMUTOHHD<7999>は売買高2位、売買代金7位。ローランドDG<6789>は107円高で値上がり率8位に入っていた。
ANAHD<9202>はミャンマーの中堅航空会社アジアン・ウィングス・エアウェイズに49%出資するニュースがあったが1円安。アジアの航空市場にくさびを打ち込み、9月7日に「東京オリンピック」が実現すれば来日外国人観光客の増加が期待できる。それを迎える空港施設<8864>は21円高で、JALUX<2729>も27円高で年初来高値を更新。五輪関連銘柄のアシックス<7936>も14円高と買われたが、会場の東京ベイエリア含み資産銘柄の東京都競馬<9672>は売買高10位ながら27円安で値下がり率4位になり、不動産大手も軒並み安だった。
オリンピックが地上の夢なら、宇宙にも夢がある。しかし「イプシロン」打ち上げ中止で子会社でそれを製造するIHI<7013>が後場にプラス圏から急落して7円安。地上には夢もあれば、戦火がやまない現実もある。シリアへのアメリカの軍事介入が現実味を帯び、防衛関連銘柄の石川製作所<6208>が14円高で値上がり率1位になっていた。
ストップ高を連発して株価が約3倍になった澁谷工業<6340>はこの日から信用取引の規制強化措置がとられ前場はマイナスだったが、後場急騰し117円高と続伸し値上がり率7位。NTTドコモ<9437>は「9月から新型iPhone提供開始か?」という噂がやまず2500円高と続伸していた。
LIXILG<5938>がエディオン<2730>株の8%を取得して筆頭株主になったが、LIXILGは38円安、エディオンは値動きなし。日経平均採用銘柄の入れ替え発表時期が近づき有力候補の日東電工<6988>が50円高。それ以外の有力候補の任天堂<7974>は130円高、村田製作所<6981>は10円高、日本電産<6594>は100円高だった。
この日の主役は東京電力<9501>。前日、茂木敏充経済産業大臣が福島第一原発を訪れ「国主導で汚染水対策をする」と表明。8日ぶりに反発し値上がり率2位の58円高で株価500円台を回復。ケタ違いの2.9億株が出来て売買高、売買代金ともトップだった。東北電力<9506>が45円高で値上がり率13位に入るなど10電力全て株価が上昇した。