【日経平均】シリア戦争準備のリスクオフで203円安に

2013年08月28日 20:16

 NYダウは170ドル安で6月25日以来の安値に沈んだ。アメリカと英国、フランスなどの「有志連合」によるシリアへの軍事攻撃開始は不可避という観測でリスクオフの動きが急速に広がり、株が売られて米国債が買われ長期金利は低下した。消費者信頼感指数やS&Pケース・シラー住宅価格指数が小幅に改善しようと、ティファニーが市場予測を上回る好決算を出そうと戦争準備の前では影が薄い。金、原油の先物価格は高騰し、リスク回避でスイスフランや日本円が買われてドル円は一時96円台をつけ、28日朝方の為替レートはドル円が97円台前半、ユーロ円が130円台前後と円高が大きく進んだ。

 取引時間前の外資系証券の売買注文動向は売り越し。日経平均は257.34円安の13285.03円と大幅に下げて始まる。13210円まで下げてから折り返し13300円にもタッチするが、前場はおおむね13200円台で推移。後場早々、ドル円の97円割れに伴って13200円を割り込む。それでも徐々に値を戻して13200円台で安定していたが、午後2時10分すぎから為替の円安に連動して一段高になり13300円台に乗せる。13400円まであと8円まで迫るものの終値は203.91円安の13338.46円だった。日銀がETF買い入れを行った効果も出て、全面安で3日続落しても終盤は明日に希望がつながるような終わり方だった。TOPIXは-19.99の1114.03。売買高は19億株だが売買代金は1兆6454億円で、事実上の9月相場入りでも薄商いには変わりなかった。

 値上がり銘柄137に対し値下がり銘柄は全体の89%の1565もあったが、業種別では鉱業セクターが唯一プラスで踏ん張っていた。マイナス幅が小さいセクターはゴム、空運、水産、陸運、医薬品など。大きいセクターは電力・ガス、その他金融、証券、石油・石炭、輸送用機器、鉄鋼などだった。

 日経平均採用225種でプラスは9銘柄だけ。プラス寄与度トップは+1.08円のGSユアサ<6674>で、シティグループ証券がレーティングと目標株価を引き上げ、値上がり率4位の27円高で売買高9位、売買代金17位に入った。マイナス寄与度トップは-16.02円のファーストリテイリング<9983>で、8月期決算の権利落ちの日でもあり売買代金10位で400円安。2位のソフトバンク<9984>は120円安で寄与度-14.41円だった。

 東京電力<9501>は21円安で反落。銀行も証券も自動車もほぼ全滅状態で、TPP対策で政府が自動車取得税撤廃に代えて軽自動車税の増税を検討するという記事が毎日新聞に載り、ダイハツ<7262>は51円安、三菱自動車<7211>は41円安。スズキ<7269>はアジア市場が全面安でインド・ムンバイ市場も軟調だったことも影響して、117円安で5.38%の大幅下落だった。

 ハイテク系はパイオニア<6773>5円安、キヤノン<7751>43円安、ニコン<7731>8円安、半導体検査装置のアドバンテスト<6857>13円安で、4銘柄とも年初来安値更新。しかしミツミ電機<6767>はクレディスイス証券が目標株価を引き上げて19円高で値上がり率14位。パナソニック<6752>は後場に買い直され1円プラスで終えた。ソニー<6758>は日経新聞1面に「ヒトゲノム解析参入」の見出しが躍ったが70円安。アメリカのイルミナ社と合弁会社を設立し遺伝子データの解析受託や遺伝子データベースの販売を行う。ビッグデータ処理のような技術を活かしてITとヘルスケアが融合する「e-Health」は、次世代の有望分野だ。

 ガンホー<3765>はニンテンドー3DS用の「パズドラZ」を12月12日に発売すると発表して前場は高かったが、後場は急落し終値マイナス。しかし売買代金は東証1部のトヨタや東京電力より多かった。任天堂<7974>は360円安。JAL<9202>は後場プラスになり10円高。アシックス<7936>は引き続き東京五輪期待で買われ38円高だった。

 内田洋行<8057>は前日、7月期決算の業績予想を上方修正したのが好感され13円高で値上がり率5位。前期は6.5億円の赤字だった最終損益は9.5億円の黒字になる。政策期待で買われていたテンプHD<2181>は公募増資や新株予約権付社債で324億円を調達すると発表し希薄化懸念で349円安、値下がり率1位になった。

 イオン<8267>は2月期中間期の権利落ち日で57円安。ヤマダ電機<9831>は110円安で年初来安値を更新。鉄スクラップ価格高騰で原材料高が利益を圧迫するとみられ電炉メーカーの東京製鐵<5423>は43円安で値下がり率6位になり、石炭の住石HD<1514>は6円高で値上がり率9位だった。

 この日の主役は朝から買いを集めた防衛関連銘柄。北朝鮮が「無慈悲な鉄槌を下す」などと吠えていた春頃以来の人気が戻ってきた。代表格の石川製作所<6208>は値上がり率3位の9円高で、売買高でも6位に入った。ジャスダックの重松製作所<7980>も13円高。もっとも後場は全般に利益確定売りに押され、東京計器<7721>は売買高14位だったが4円安、豊和工業<6203>は9円安、興研<7963>は5円安とマイナスで終えた。兜町界隈では「ミサイルで軍事施設のピンポイント爆撃限定か」「都市の空爆や地上軍の投入はない」「首都制圧、政権転覆は考えないから数日で終わる」など〃作戦会議〃があちこちで開かれ「気分はもう戦争」だったが、ペンタゴンの統合参謀本部が立案する本物の作戦はさて、どうなるか。(編集担当:寺尾淳)