東京都は開催による直接的な経済効果を、新国立競技場や晴海地区の選手村の建設費など施設整備費3557億円、大会運営費3104億円を含めて1兆2000億円、日本全体の生産誘発効果を含めると2兆9600億円(そのうち東京都は1兆7000億円)で、約15万人の雇用を生み出すと試算している。二次的な波及効果も含めると5兆円を超えるといわれ、その中には観戦のついでに日本各地を旅行する観光客の滞在費や、観光地の宿泊施設や土産物店の従業員の所得が増えてマイカーを買い替えるなど個人消費が拡大する分も含まれている。政府は2020年の訪日外国人数目標として現在の約2倍の2000万人を掲げる。
開催決定の翌年から開催年までの7年間のGDP成長率の平均は、前回の東京大会、ソウル大会、北京大会が2ケタ成長、バルセロナ大会、シドニー大会、アテネ大会がほぼ4%だったが、今回の東京大会は4%ぐらいの成長は望めるだろうか。
開催決定は株式市場にはポジティブ・サプライズで、特に海外資金の動向が注目されるが、それは次の3段階になると思われる。
第1段階は興味本位のお試しも含めた来週限定の超短期の「東京、日本に対するご祝儀買い」。第2段階は「オリンピック関連銘柄」とされる建設、不動産や、東京ベイエリアに倉庫、百貨店、レジャー施設などを持つ含み資産関連銘柄、交通、ホテル、旅行会社、スポーツ用品メーカー、スポーツ用品店、スポーツクラブなどが買われて上昇する時期で、投機色も帯びながら9月いっぱいは続きそうだ。第3段階は、7年後の東京大会までのロングスパンの日本の経済成長を見据えた「日本買い」で、年金資金など「筋がいい」と言われている長期資金が主体になり、年内いっぱいかけてゆっくり入ってくると思われる。そんな資金は昨年11月以来のアベノミクス相場でも「なかなか入ってこない」「入ってくれば相場は本物」と言われ続けてきただけに、相場を底上げして底堅くしてくれる存在として、市場関係者からの期待は大きい。
さて来週は、ご祝儀買いと関連銘柄物色で東京市場の売買は急回復し、日経平均の上昇は確実とみられるが、今週も2~5日の4日間で日経平均が675円も上昇し、6日は下落したが週間471円のプラスで終えていた。薄商いの中でも「東京決定」を先取りしたかのように関連銘柄が買いを集め、日経平均が先物主導で上昇していた。チャートではいわゆる「三角もちあい」の最終局面の収れん後の「上放れ」が、フライングして先にきてしまったような格好だ。
もっともその「オリンピック期待分」が乗った今週の日経平均の水準は来週、下値の支えになってくれるだろう。6日は「マドリード有利」の報道が流れて下落したので、5日の14064円がその下値ライン。アメリカの8月の雇用統計がかんばしくなかったことが下げる要素になっても、14000円割れはちょっと考えにくい。
一方、東京市場が買いでにぎわっても上値の「一気に15000円超え」もまた考えにくい。今週のオリンピック期待分である程度は先取りしている上に、13日の金曜日にはメジャーSQが控えているからだ。海外のヘッジファンドあたりが日本に対する投資戦略を練り直し、「裁定のポジションをこの日までに解消して出直そう」と考えているかもしれない。9日、10日に上昇したとしても「SQの週の水曜日」にあたる11日あたりは裁定解消売りに要警戒。さらに、シリア攻撃が来週中にいよいよ始まるかもしれない。そうしたことも考慮すると来週は終値ベースでは14500円あたりが上限で、15000円超えはその次の週のお楽しみになるのではないか。
ということで、兜町も祝賀ムードでおおわれる来週の日経平均終値の変動レンジは14000~14500円とみる。54年前で時代が全然違うが、前回の東京大会の開催決定翌日のダウ式平均株価(日経平均の前身)は0.94%しか上昇せず、2週間後でも3.6%上昇というおとなしいものだった。(編集担当:寺尾淳)