【日経平均】急落3回の乱高下の末に10円高で4日続伸

2013年09月05日 20:12

 NYダウは96ドル高で続伸。シリア攻撃は連邦議会本会議再開まではペンディング状態で、金や原油の先物価格は下落。8月の自動車販売台数が市場予測を大きく上回って自動車株が上昇し、地区連銀経済報告(ベージュブック)もおおむね良い内容だった。5日朝方の為替レートはドル円は99円台後半、ユーロ円は131円台後半になっていた。

 日経平均は86.33円高の14140.20円で始まるが、午前9時30分すぎにはマイナス圏まで急落する「忘れた頃のナイアガラ」。3日続伸の過熱感を意識した先物の利益確定売りとみられる。それでも14000円の大台は割り込まず反転し、10時すぎプラスにタッチするが、売り買いが交錯して前日終値をはさんだ小動きが前引けまで続いた。

 日銀の金融政策決定会合の結果は市場予測通り金融政策は現状維持で、景気判断は「緩やかに回復している」に上方修正。後場の午後0時45分頃から「本日のナイアガラ・パート2」の急落が始まる。14000円をあっさり割り込み1時に13981円まで下げるが、そこからV字回復し30分ほどでプラスに戻す。2時前から為替の円安が進んでドル円が100円に迫ると急騰して14100円を突破し14156円をつける。ところが2時30分頃に為替レートが引き返せばまた急落し「本日のナイアガラ・パート3」。だが今度はマイナス圏でも14000円台を割らず踏みとどまり、後は前日終値近辺でもみあった末にプラスに滑り込んで10.95円高の14064.82円で4日続伸した。ジェットコースターのような値動きで日中値幅は175円。TOPIXは+1.54の1157.84。売買高は24億株で前日より増えたが売買代金は1兆7810億円で、2兆円割れはこれで19日も続いている。

 ブエノスアイレスでの竹田恒和JOC会長の記者会見では福島第一原発の放射能汚染水漏れ問題を延々と追及され続けて東京のネガティブイメージが深刻だったが、8月最終営業日と9月4日の株価指数終値を比較すると、日経平均が3日続伸で+4.96%、マドリード・IBEX35指数も3日続伸で+2.40%、イスタンブール・ナショナル100(XU100)指数は上昇、下落、下落で+0.86%で、東京市場が最も大きく上昇している。海外の機関投資家から「東京決定」を先取りした買いが入ってこの日も終値はプラスだったが、もちろん結果はゲタをはくまでわからない。

 指数はプラスでも値上がり銘柄684より値下がり銘柄924のほうが多い。上昇した業種は鉄鋼、海運、電気・ガス、パルプ・紙、保険、石油・石炭など。下落した業種は食料品、空運、小売、その他製品、情報・通信、水産・農林などだった。

 日経平均寄与度プラス寄与度トップはホンダ<7267>で+6.81円。マイナス寄与度トップはKDDI<9433>で-7.21円。マイナス3位のソフトバンク<9984>は、「レポ取引」で1000億円を調達すると報じられ20円安。SPC(特別目的会社)に保有するヤフー<4689>株を差し入れ貸株市場に出すことで資金調達するスキームで、銀行借入よりコストは安くなるという。ヤフーは300円高だったが、ガンホー<3765>株でも同じ手が使える。

 メガバンクで上昇は30円高の三井住友FG<8316>だけ。証券ではSBIHD<8473>が23円高と買われていた。ソニー<6758>はデジカメ専用機並みの撮影機能を持つ新型スマホ主力機「エクスペリアZ1」をお披露目し17円高。テレビもゲーム機も不振の中、NTTドコモ<9437>の「ツートップ」にも「スリートップ」にも選ばれたスマホ事業に大きな望みをかけている。

 三井住友建設<1821>は朝から約2億2000万株も取引され売買高トップになり、4円高で値上がり率14位。火をつけたのは日経新聞朝刊の記事で、橋梁の橋桁の鉄筋を繊維素材に変えて寿命を100年に延ばす新技術が紹介された。ただでさえ低位株トレードが盛んなのに「国土強靱化」テーマが加わったらこの2ケタ銘柄は買いが一気に燃え上がる。その記事で炭素繊維でサビを補修する技術が紹介された新日鐵住金マテリアルズの親会社の新日鐵住金<5401>は後場急伸し11円高で年初来高値を更新し、売買高4位、売買代金6位。業種別騰落率トップの鉄鋼セクターはメリルリンチ証券がセクター全体に強気の見通しを出し、新日鐵住金については投資判断を2段階も引き上げた。東京製鐵<5423>も41円高で年初来高値を更新し値上がり率7位。同じ素材セクターの住友金属鉱山<5713>は25円高だった。

 三井ハイテック<6966>は1月期決算の純利益見通しを上方修正して43円高で値上がり率9位になった。海運株は中国、ヨーロッパの景況改善と円安の追い風を受けて業種別騰落率2位。日本郵船<9101>は売買高7位で5円高、商船三井<9104>は売買高14位で9円高、川崎汽船<9107>は売買高5位で7円高と3日続伸した。

 一方、食品、小売などディフェンシブ系はおおむね軟調で、セブン&アイHD<3382>は45円安、丸井G<8252>は23円安。しまむら<8227>は8月中間期の営業利益が計画未達と報じられ90円安。マツモトキヨシHD<3088>は185円安で値下がり率2位になり、ヤマダ電機<9831>は26円安で年初来安値を更新した。

 この日の主役は自動車株。アメリカの8月の新車販売台数は前年同期比17%増でリーマンショック前の2007年以来の高水準で個人消費の力強さを裏付けた。日本車も大健闘し、トヨタ<7203>は23%増でGMに次ぐ2位、ホンダ<7267>は27%増、日産<7201>は22%増、富士重工<7270>は45%の大幅増。午前中に発表された8月の国内車名別新車販売ランキングで「アクア」が2カ月連続で首位だったトヨタは売買代金3位、20円高。世界最高の燃費1リットル36.4キロの新型「フィット」ハイブリッドモデルを午前中お披露目したホンダは売買代金5位の85円高。北米市場で好調なハイブリッド車の生産を倍増すると報じられた富士重工は売買代金8位の30円高。地方自治体と組み今年度150台の超小型電気自動車を公道で走らせると報じられた日産は6円高だった。新興国需要の後退懸念で低迷していたスズキ<7269>は46円高と大きく反発し、日野<7205>もプラスだったが、いすゞ<7202>や三菱自動車<7211>は下落した。(編集担当:寺尾淳)