【日経平均】地震直後の134円安から大台に乗せて75円高

2013年09月04日 20:31

 3連休明けのNYダウは23ドル高。日本、ヨーロッパの株高を受けて午前中は一時120ドルを超えたが昼前に急落し、その後は前日終値近辺の値動きに終始した。ISM製造業景況指数が2年2ヵ月ぶりの高水準の55.7で量的緩和早期縮小懸念が再燃したためではなく、共和党が優勢な連邦議会下院のベイナー議長、民主党のペロシ院内総務がシリアへの軍事介入支持を相次いで表明したため。長期金利も金や原油の先物価格も上昇した。マイクロソフトは「合併、買収は大きいほうの株価が下がる」という原則通りの大幅安になった。4日朝方の為替レートは、ドル円は99円台後半、ユーロ円は131円台前半で、前日とほぼ変わらない水準だった。

 2日で589円上昇した日経平均はさすがに利益確定売りが入り103.27円安の13875.17円で始まる。前場は何度も13900円台にタッチするが長続きしない。午前9時19分頃に関東では最大震度4の地震が起きて一時134円安まで急落する場面があった。後場は為替の円安を受けて午後1時前に13900円台に定着。TOPIXから先にプラスになり、日経平均も2時前から先物主導で前日終値と14000円を一気に突破した。終値は75.43円高の14053.87円で3日続伸。TOPIXは+7.12の1156.30だった。売買高は22億株、売買代金は1兆7881億円。終値300円未満の銘柄が売買高ランキング20位以内に9銘柄、値上がり率ランキング20位以内に8銘柄も入り低位株人気は衰えない。これでは売買代金が2兆円になかなか届かないのも道理だ。

 マイナスの時間帯が長かったので値上がり銘柄1019に対して値下がり銘柄は589と多いが、下落セクターは非鉄金属、パルプ・紙、食料品、電気・ガス、保険、精密機器の6業種だけ。上昇セクター上位は海運、証券、不動産、鉄鋼、その他製品、銀行などだった。

 日経平均寄与度プラス上位は上からソフトバンク<9983>とキヤノン<7751>。マイナス上位は上からテルモ<4543>とオリンパス<7733>だった。ファーストリテイリング<9983>は値動きなしで寄与度ゼロ。前日発表した8月の国内ユニクロ既存店売上高は猛暑効果で28.9%増と3年10ヵ月ぶりの高い伸び率だったが、日中はずっと業績と無関係に売られマイナスに沈む悲哀を味わった。ユニクロの商品が売れても売れなくてもシステム上で「9983」が指数にらみで売買操作されるだけ。もし日経平均採用銘柄でなければ素直に好感されて大幅高だったろう。

 メガバンクは揃って上昇し野村HD<8604>も11円高と続伸。自動車株はトヨタ<7203>は30円高、富士重工<7270>は43円高。ホンダ<7267>は通期で10円積み増すニュース、インドに二輪車工場を新設するニュースで20円高。インドの先輩のスズキ<7269>は7円安だった。日産<7201>はメキシコで小型車年15万台をダイムラーと共同生産すると報じられたが1円高どまり。新興国需要に支えられるトラックメーカーの日野<7205>は12円安、いすゞ<7202>は15円安。電機は19円高のソニー<6758>や7円高のシャープ<6753>が後場浮上したが、全般的にふるわなかった。

 アップルが10日の新製品発表会のイベント招待状を発送したと報じられ、iPhoneは新興国向け廉価版と「5S」後継機が発表されるとみられる。ソフトバンクは70円高、KDDI<9433>は40円高だったが、「iPhone採用か?」と噂ばかり先行するNTTドコモ<9437>は1400円安。アップル関連のフォスター電機<6794>は55円高、イビデン<4062>は6円高、ミツミ電機<6767>は13円高、太陽誘電<6976>は17円高と上昇していた。その一角の日東電工<6988>が240円高と大きく上昇したのは、「日経平均採用銘柄入れ替え」という材料もあるため。本命は330円高の任天堂<7974>と目されているが、日東電工も野村證券がプッシュする。大和証券がプッシュするJPX<8697>は380円高。除外候補筆頭の三菱製紙<3864>は値動きなしだった。

 三井海洋開発<6269>は洋上石油プラントを5割増産と報じられ132円高。大型タンカーを改造し、ブラジルなどで1000億円規模の大型受注にも対応する。家庭用物置で知られる稲葉製作所<3421>は7月期決算の純利益を3.8倍の12億円に上方修正し114円高で値上がり率10位。自治体の防災倉庫では「100人乗っても壊れない」丈夫さが評価され引き合いが相次いでいるという。

 電力株は原油価格の高騰で燃料費の増加が懸念されて朝から売られ、東京電力<9501>は15円安で値下がり率7位。10電力でプラスは10円高の中部電力<9502>と28円高の九州電力<9508>だけだった。オリンパスは英国の重大不正捜査局(SFO)から刑事訴追を受けたと発表し82円安で値下がり率8位。その株主で昨年夏に統合提案をしていたテルモも105円安と連れ安した。重大不正ではないが大証移籍組の元気印で前日まで3連騰していた王将フードサービス<9936>は、新潟で社員、金沢では来店客が食品衛生上よくない行為を行いネットに投稿したため、その店の営業を停止し60円安だった。

 この日の主役は売買代金5位と買いを集めて115円高のキヤノン。前日に1800万株、500億円上限の自社株買いを発表した。昨年8月に続き2年連続で、実施期間は9月4日から11月1日まで。約7000億円の手元資金を活用し、デジカメの世界的販売不振で低迷する株価を下支えするのが目的で、保有比率の34.7%(昨年12月31日時点)を占める外国人投資家の売りに歯止めをかける狙いがある。もし期末配当の増配まで行えば今期の純利益のほとんどを株主に還元することになり、ますます「株主に優しい銘柄」になる。時には身銭を切ってまで株主にサービスするその姿勢は、「会社は誰のものか?」という本質論の議論の糸口にされそうだ。(編集担当:寺尾淳)