経済政策による企業の果実(収益)を労働者への給与に反映させ、所得増を図るとともに、消費を増やす。消費増で企業の果実が膨らむという経済循環を目指す安倍政権の経済政策が、末端の労働者のところにまで本当に反映するのか。最も注視しなければならない局面に入ってきている。
安倍総理は大企業の税負担を軽減し、設備投資や雇用の拡大、従業員の給与引き上げにつなげたい考えだが、減税効果も含め企業の収益分が内部留保や株主配当、役員報酬にとどまり、従業員給与にどこまで還元されるのか、経営側の判断ひとつに委ねられ、収益の何割を従業員給与として還元するというような法的担保がないためだ。しかも、予定通り、来年4月からの消費税引き上げ実施の可能性は限りなく高い。
共産党の志位和夫委員長は「消費税と一体的にやるのは社会保障の充実でなかったか。庶民から(消費税で)空前の吸い上げ、大企業への空前のバラマキを許すな」と消費税4月実施への反対、大企業へのバラマキ優遇を批判する。
安倍政権は設備投資減税、復興法人増税の1年前倒しでの廃止など企業の負担軽減に加え、労働市場でも労働力の流動化に弾みをつける『雇用特区』創設のための法案を臨時国会に提出する意向だ。
志位委員長は「雇用特区では、どんな雇用も自由で、労働時間規制がなくなり、残業代も休日・深夜労働の割増賃金も出なくなり、短期雇用の使い捨て労働に」と経営側に有利で、労働側には労働環境の悪化を招くとして断固反対の姿勢を明確にした。志位委員長は「雇用特区はブラック企業特区」との認識で「ブラック企業特区をつくる企てには断固ストップを」と共闘を呼びかけている。
雇用特区で残業や解雇などの雇用条件が柔軟に設定できるようになれば、企業側は優位に雇用調整ができる反面、まだまだ買い手市場の中で、労働側は従わざるをえない状況に追い込まれる可能性も否定できない。
特区なので、当初は地域限定での話だが、個々の所得が上がらないまま、雇用数が増えるなど、一定の結果が出れば、雇用創出効果があったとして全国に広がる可能性もあり、就業条件(労働時間や残業、賃金など)や解雇の一定の規制など、これまで労働界が労働者の権利として歴史的な闘いの中で勝ち得てきたものまでが危機にさらされかねない。臨時国会では重要案件の中で、この法案もそのひとつになりそう。(編集担当:森高龍二)