25日、新潟県の泉田裕彦知事は県庁内で東京電力<9501>の広瀬直己社長と会談を行い、柏崎刈羽原発の改良工事についての東京電力側の要望書を受け取った。泉田知事は会談の最後に広瀬社長に対して、「(要望書を)お預かりする」と述べた。
会談後、広瀬社長は、「柏崎刈羽原発の6号機、7号機の、原子力規制委員会への規制基準適合申請は県知事が了解してから行うつもりか?」という記者の質問に対して、「そのつもりで考えている」とコメントした。
今回東京電力が泉田県知事に了解を求めたのは、緊急時に原子炉格納容器の圧力を下げるために行われる排気の際に、放射性物質を1000分の1に減らすことの出来る「フィルター付きベント設備」の設置だ。東京電力が採用している「沸騰水型軽水炉」では、この設置が再稼働の条件として求められている。
泉田知事は、これまで東京電力側が提示していた「フィルター付きベント設備」に関して、「原子炉建屋と一体でない」と懸念を示していた。さらに泉田知事は、2007年の新潟中越沖地震の時に起きた、柏崎刈羽原発のトランス(変圧器)火災事故を引き合いに出し、「原発内の敷地が1.5メートル程度下がり、そのずれによりトランスとの間のパイプが外れ、油が漏れて発火した。フィルター付きベント設備の配管で同じようなことが起これば、大量の放射性物質が外に排出される恐れがある」と述べた。
広瀬社長はこの日、泉田知事に「フィルター付きベント」の設置計画について説明を行った。その配管に揺れを吸収する構造を採用することで、「地震の際の揺れは吸収出来ると考えている」と述べ、さらに「県民の安心・安全を考えて、フィルター付きベントをもう1つ作る」という計画も発表した。「地下を掘り下げ、本体建屋の岩盤に限りなく近づけることで、本体と揺れをほとんど同じにすることが出来る」と説明し、安全に関して万全を期す姿勢を強調した。
泉田知事は、7月5日にも広瀬社長と会談を行ったものの、その3日前に東京電力が県への事前通告もなしに、原子力規制委員会への申請方針を取締役会で決議したことに対し猛反発し、「東京電力は嘘をつく会社なのか」と広瀬社長に詰め寄り、その日東京電力が持って来ていた「フィルター付きベント」の申請書を受け取ろうとはしなかった。(編集担当:滝川幸平)