【日経平均】配当権利落ちの日でも178円高で高値引け

2013年09月26日 20:18

 NYダウは61ドル安で5日続落と深刻。8月の耐久財受注、新築住宅販売件数は市場予想を上回ったが、債務上限引き上げ問題も新年度予算案審議もトンネルの出口が見えず足を引っ張る。ルー財務長官は「デフォルト回避の緊急措置は10月17日に限界に達する」と警告。小売大手のウォルマートが発注を減らしたという話も個人消費の先行き不安をあおっていた。取引終了後に安倍首相が取引所内で講演し「Buy my Abenomics(アベノミクスを買ってください)」と日本買いをアピールした。26日朝方の為替レートは、ドル円は98円台半ば、ユーロ円は133円台前半で前日とあまり変化がなかった。

 前日は3月期決算企業中間期の権利付き最終売買日で、一夜明けて「配当権利落ち」の日。配当落ち分は日経平均は約80円、TOPIXは約8.5ポイントと推計されていた。配当が再投資に回ったり先物で手当てされれば配当落ちの影響が緩和されるが、日経平均は67.47円安の14553.06円で始まり、しばらくは前日比マイナス配当落ち分近辺の小動きだったが、午前9時30分頃から急落して15分ほどで14410円まで下げる。TOPIXも1200を割った。その後は徐々に戻し、11時台には共同通信が「消費増税に伴う政府の経済対策で『法人税引き下げを早期に検討』と明記することで最終調整に入った」と報じたことで円安が急進して99円にタッチし、日経平均は14500円、14600円を突破してTOPIXをマイナスに置いたままプラスに浮上した。

 権利確定イベント通過の影響を前場で消化したようで後場は一時14700円台にタッチしてTOPIXもプラスになったが、為替の動きが止まり円高方向に戻るともみあいからジリ安に転じる。それでも午後2時台になると一段高になり14700円台に乗せ、さらに上昇。この日の午後6時に出されるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用見直しの中間報告で、債券から株式へのシフトが明記されるという観測が浮上したのがその根拠だった。結局、日経平均は178.59円高の14799.12円と14800円にあと88銭と肉薄して高値引け。日中値幅が389円もある大波乱の配当権利落ち日だった。TOPIXも+9.34の1220.49でこれも高値引け。売買高は30億株、売買代金は2兆1534億円だった。

 値下がり銘柄546に対し値上がり銘柄は1043で東証1部全体の約6割を占め、セクター別の騰落率は33業種中29業種が上昇。プラス上位は海運、ゴム、保険、金属製品、パルプ・紙、倉庫などで、下位は空運、陸運など。マイナスは医薬品、卸売、石油・石炭、化学の4業種だった。

 最近のNT倍率は12倍近辺だが、前日の下げ幅は30.1倍、この日の上げ幅は19.1倍で、値動きで日経平均はTOPIXにレバレッジを効かせている。人呼んで「先物の空中戦」で奮戦したのはご存知〃御三家飛行隊〃で、日経平均プラス寄与度は合計+86円で上げ幅の約半分という〃殊勲甲〃。日経平均新規採用初日の新人パイロット、日東電工<6988>が売買代金1位の売りの機銃掃射を浴びせられ、830円安で値下がり率1位、マイナス寄与度トップの-32円と初陣でいきなり大撃墜されても、それをカバーした。その先輩のソフトバンク<9984>は子会社アリババのNY上場観測が出て240円高で売買代金2位、ファーストリテイリング<9983>は新製品発表会で新「ヒートテック」をお披露目し1250円高で売買代金9位に入っていた。

 フォルクスワーゲンが中国での日本メーカーの牙城の広東省に新工場を建てるというニュースが入り40円高のトヨタ<7203>も35円高のホンダ<7267>も前場は元気がなかったが、富士重工<7270>ががんばり終値は97円高になった。任天堂<7974>とゲーム機の技術開発で提携すると報じられたパナソニック<6752>は7円高。任天堂は40円安。アドバンテスト<6857>は通期見通しが最終赤字25億円で3期連続赤字と報じられ50円安で4日続落し値下がり率12位。お祭り騒ぎから一夜明けた東京エレクトロン<8035>も40円安と反落した。

 自動車用モーターを生産する三菱マテリアル<5711>の子会社、三菱マテリアルシーエムアイを100億円で買収と発表した日本電産<6594>は200円高。三菱マテリアルは8円高。「親方スリーダイヤ」に慣れた社員が「休みたいならやめればいい」という永守イズムについていけるか、ちょっと心配。三菱ケミカルHD<4188>は大陽日酸<4091>に300億円超の追加出資を行い、出資比率を2倍の約30%に上げると日経新聞が報じた。大陽日酸は18円高で7日続伸。三菱ケミカルHDは4円安だった。

 24日にバルチック海運指数がほぼ2年ぶりに2000台を回復した流れを受けて日本郵船<9101>は9円高で3日続伸。商船三井<9104>は17円高、川崎汽船<9107>は8円高。NSユナイテッド海運<9110>が39円高で値上がり率3位、第一中央汽船<9132>が12円高で同13位に入り、海運セクターは業種別騰落率トップになった。陸のスピード王者リニアは安倍首相がアメリカで「NY-ワシントン間は1時間を切る」とトップセールスしてJR東海<9022>は高く始まったが、結局70円安だった。

 この日の大きな話題は「百分割銘柄」。9月30日付けで株式分割を行う銘柄が全市場で160近くあり、この日の売買分から適用された。1株を100株に分割する百分割は103銘柄で、100株を超える分割を行うのが19銘柄。合わせて122銘柄もあった。

 有名どころでは、国際石油開発帝石<1605>(400分割)、スターバックス<2712>、ドワンゴ<3715>、ニフティ<3828>、インフォコム<4348>(200分割)、フジメディアHD<4676>、ヤフー<4689>、サイバーエージェント<4751>、デジタルガレージ<4819>(200分割)、WOWOW<4839>、マネックスG<8698>、第一生命<8750>、スカパーJSAT<9412>、NTTドコモ<9437>、NTTデータ<9613>などがあり、その15銘柄の株式分割の影響を除いた前日比の星取は9勝5敗1引分の好成績で市場から歓迎されていた。4分割でもカルビー<2229>は174円高で6.24%上昇したが、前日の値上がり率1位で百分割銘柄の一つ、東京エレクトロンデバイス<2760>は8.78%の大幅安で値下がり率2位になっていた。

 NISA(少額投資非課税制度)の年間投資額の上限は100万円で、株式分割や最低売買単位の引き下げで最低購入金額を100万円以下に抑えれば「NISAが使える株」になる。前日まで東証1部で最低購入金額が100万円をオーバーする銘柄は100を超えていたが、この日は84まで減った。株式市場で個人投資家の「NISA特需」が起きるかどうかはわからないが、百分割銘柄はその恩恵を受けるための努力はしている。(編集担当:寺尾淳)