特定秘密保護法案に「知る権利」明記は必須条件

2013年09月28日 12:09

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日本の防衛・安全保障体制はどこに向かっているのか。

 安倍政権下で拍車がかかる「日米同盟の深化」に、北朝鮮問題や竹島問題、尖閣諸島問題など日本を取り巻く安全保障環境の変化が後押しする格好で「集団的自衛権の行使」の見直しや日本版NSC(国家安全保障会議)、これに連動する「特定秘密保護法案」、防衛大綱の大幅見直し、さらに、そのさきの「憲法改正」へ流れを加速させている。日本の防衛・安全保障体制はどこに向かっているのか。

 北朝鮮問題や竹島問題、尖閣諸島問題などが顕著になってきたので、日米同盟の深化がより一層求められることになったのだと反論されそうだが、米国の財政事情も背景に、日米安全保障、アジア太平洋地域での日米役割分担の中で日本の役割増強を求める動きは年々、強くなっていた。なので、こうした動きを結果的に北朝鮮問題など日本周辺の環境変化が後押しする状況になっており、安倍総理や自民党にとっては集団的自衛権の行使など、世論に訴えるのに追い風になっている。

 世界平和を希求する理念に変わりないにしても、世界の最先端を行く憲法第9条、そして『武力を背景としない徹底した平和外交での国家防衛姿勢』の仕組みそのものが、今後、どこかで変質していくのではないかと懸念を抱くのはわたしだけだろうか。

 集団的自衛権の行使に対する政府・国会レベルでの本格議論は安保法制懇の結論待ちのため、年を超えてからになりそうだが、特定秘密保護法案は「秋の臨時国会での成立をめざす」(菅義偉官房長官)と断言している。

 パブリックコメントで同法案への意見は9万件のうち、8割が反対意見だった。民主主義国家の根幹にかかわる「表現の自由」「報道の自由」、「知る権利」の保障が危険に晒されないか。これらの権利をどのように保障、担保するのか。政府案では「報道の自由に十分配慮する」と明記されたが「国民の知る権利」の規定は明記されていない。「知る権利」の規定は確実に設けることが必要だ。

 あわせて、特定秘密保護法案にいう「特定秘密」に指定する際の客観的な統一基準や特定秘密に指定された情報について、統一基準に照らして合致しているのかどうかが検証できる仕組みづくりも求められる。

 情報公開を求めた場合に情報公開審査会に特定秘密を提示すること、国会や裁判所からの求めに応じて(公開しないことを条件として)政府が特定秘密をすべて提示するように義務づけること。また情報公開審査会や国会、裁判所、統一基準に合致しているかどうかを検証する機関が『特定秘密』にあたらないと判断した場合、政府は速やかに特定秘密の指定を解除し、通常の情報として誰でも閲覧できるように公開情報に切り替えること、こうした担保が確実になされていなければ、時の政府に、都合による『特定秘密』指定や国益に反しても政権に有利な恣意的解釈や判断の余地を残すことになるだろう。少なくとも国民の懸念する材料は法案成立を図る前に、法案の中に『縛り』を明記しておく必要がある。

 菅官房長官は27日の記者会見で「パブリックコメントに15日間で9万件の意見が寄せられた。法案に対する国民の関心がいかに高いかということが示されたと思う」との受けとめを語った後「特定秘密保護法案はわが国の安全と平和のために極めて大事な法案なので、その必要性に理解をいただけるようありとあらゆる機会に努力していきたい」と理解を求めていくとした。

 一方で、国民の知る権利を規定に明記していないことについて「国民の知る権利や報道の自由については十分に配慮しながら、様々な論点について検討をする。与党内で十分な議論を頂きながら、早期に国会に提出したい。(報道の自由の明記に加え)知る権利についてもさらに検討していく必要があると考えている」と知る権利の明記についても一歩踏み込んで検討していく考えを伺わせた。国民の理解を得るには「国民の知る権利」を明記することは「必須条件」といえよう。法案を注視しなければならない。(編集担当:森高龍二)