総理補佐官の磯崎陽輔氏は「政府の公式見解ではない。私的見解」と断り書きのうえで「集団的自衛権は行使できないと限定的な考え方をしたのは内閣法制局の解釈ですから、それを変更するのも、内閣法制局の解釈でいいはず」と憲法改正の手続きを経なくとも集団的自衛権の行使は解釈の変更によって可能だとする論理を自身のホームページ(私の主張)で展開している。9月18日にアップした。
歴代政府は「現行憲法下では集団的自衛権の行使は認められない」としてきた。時の政府によって憲法解釈が変われば法的安定性は大きく損なわれると危惧する声もある。解釈変更でなく「憲法改正が必要」と枝野幸男元官房長官は断言する。
憲法は一般法令と違い「権力に向けられたルール」(枝野元官房長官)であり、憲法の意図するところに反する解釈が時の政府の所管官庁の責任で『運用解釈』という自由裁量で、ころころ変えられたのでは法的安定性は大きく損なわれる。
法令解釈担当大臣でもあった枝野元官房長官は「内閣は憲法によって拘束されている当事者なので、恣意的な判断で解釈を勝手に変更できたのでは憲法によって拘束している意味がなくなり、立憲主義を根本から破壊することになる」とし「安倍内閣はよもや、立憲主義に反することを最終的に行うとは思わないが」とけん制するが、磯崎氏の私的見解では歴代政府が堅持してきた『集団的自衛権の行使は現行憲法下ではできない』とする解釈も『運用解釈』の範疇だとして、改憲を待たずに『行使』可能にできるとしている。
磯崎氏は「解釈にも法令の規定の文字そのものに沿って一定の結論を導き出す『文理解釈』と法令の運用上『かくあるべし』と所管官庁が判断する『運用解釈』がある」とし、「法文の意味において争いがあるときは、所管官庁は内閣法制局にお伺いを立てなければならないことになっているが、運用解釈においては所管官庁において判断されている」としたうえで、「自衛権の行使が必要最小限度の範囲でなければならないというのは憲法9条の文理解釈だと考えるが、集団的自衛権は行使できないというのは運用解釈に属することではないかと考える」と所管官庁の裁量で判断できる範疇に組み入れた私的見解を述べた。
さらに、「仮に間違っていない解釈であっても、社会政治状況が変化してくれば、解釈を変更しなければならない場合も生じてくる」と論理を飛躍。現況に合わなくなったとすれば憲法改正であったり、法令の改正であったり、まさに国会で審議し、国民の理解を得て、規定そのものの変更により、政権が変わっても、誰が解釈しても1通りにしか解釈できないものにすべきだろう。
枝野元官房長官は「我が国の平和と安全を確保する上で必要最小限の自衛権とはどのような範囲なのか、 現行の9条に続けて、より具体的かつ明確な新たな規定を追加することが必要」と加憲の考えを示し「そのことで、恣意的な解釈変更や拡大解釈を阻止すると同時に、現実的な安全保障政策を推進することが可能になる」と提言している。どちらに一貫性があるかは読者の判断に委ねたい。(編集担当:森高龍二)