【日経平均】アメリカの財政問題不安が重苦しく304円安

2013年09月30日 16:59

 前週末27日のNYダウは財政問題が依然混迷し70ドル安と反落。ミシガン大学消費者信頼感指数が5ヵ月ぶりの低水準で下落に拍車をかけた。上院は暫定予算案を民主党の賛成多数で可決したが、オバマケア(医療保険改革法)の分が含まれ共和党優勢の下院では否決必至。政府機関の一時閉鎖を避けるには修正案で両党がどこまで歩み寄れるかが焦点になる。イタリアのレッタ内閣の閣僚5人が辞任して連立政権が危機に陥りユーロが下落し、ドルも一段安。30日朝方の為替レートは、ドル円は97円台後半、ユーロ円は132円近辺と前週末よりも円高が大きく進んだ。

 8月の鉱工業生産速報値は市場予測を下回る前月比0.7%低下。3週間ぶりの月曜日の取引で、日経平均は229.45円安の14530.62円と大幅続落で始まる。すぐに14500円台を割り込み、前場は14400円台での安値もみあいが続く。中国のHSBC製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値が51.2から50.2に下方修正されて上値が抑えられたが、それでも前引けでは14500円にタッチした。

 後場は14500円台で始まり14600円にもタッチ。ドル円も98円台に乗せ「月末のドレッシング買い出動か?」と思いきや、その後はもみあいながら14600円前後から徐々に下げる展開。アメリカの財政問題に加え、翌日の経済対策発表前の様子見も影響していた。大引け前は上半期末の手じまい売りに押されたかのように急落し、終値は304.27円安の14455.80円。それでも8月末と比べると1066円の大幅上昇で、東京五輪開催が決定した9月は4月以来5ヵ月ぶりのプラスで締めくくった。TOPIXは-23.42の1194.10で1200割れ。売買高は27億円、売買代金は1兆8942億円と、月末らしくない少なさだった。

 値下がり銘柄1376に対して値上がり銘柄は302しかない全面安で、東証1部33業種別騰落率のプラスは電力・ガス1業種だけ。マイナス幅が小さいのは鉱業、繊維、ガラス・土石、空運、水産・農林など。マイナス幅が大きいのは鉄鋼、海運、証券、その他金融、ゴム、保険などだった。

 日経平均マイナス寄与度トップはファーストリテイリング<9983>で-35円。この日、中国・上海に世界最大のユニクロ旗艦店が開店した。2位はファナック<6954>で-16円。プラス寄与度トップは燃料電池関連で買われた千代田化工<6366>だが、+1円だけ。

 みずほFG<8411>は27日、金融庁が反社会的勢力との取引を放置したとしてみずほ銀行に業務改善命令を発動し9円安。オリコ<8585>などが保証する自動車の提携ローンを230件融資していたといい、オリコも13円安。他のメガバンクも三菱UFJ<8306>が17円安、三井住友FG<8316>が135円安と連れ安した。野村HD<8604>が26円安など証券セクターも悪かった。

 大幅な円高でトヨタ<7203>170円安、ホンダ<7267>105円安、ファナック<6954>430円安、京セラ<6971>150円安、信越化学<4063>150円安など輸出系主力株は3ケタ安続出。鉄鋼は新日鐵住金<5401>が19円安で値下がり率9位、JFEHD<5411>が137円安で同13位に入り業種別騰落率最下位に甘んじた。そんな中、後場に柏崎刈羽原発の再稼働や電気料金再値上げを行わなくても今期の経常黒字は可能と報じられて東京電力<9501>は14円高。毎日のように材料が出てデイトレーダーを喜ばせる。

 東レ<3402>は、27日に家庭用浄水器の逆浸透膜を製造する韓国のウンジンケミカル社を買収すると発表し1円高。水処理膜で世界シェアトップのダウケミカルに迫る。クラレ<3405>は通期の営業利益見通しを下方修正したが後場に買い戻され11円高。アステラス製薬<4503>は富士工場をジェネリック医薬品の日医工<4541>に売却すると報じられ30円安。日医工は17円高。総合物流のハマキョウレックス<9037>は27日に佐川急便の持株会社SGHDとの資本業務提携を中止すると発表し、177円安で値下がり率6位になっていた。

 取引時間前に発表された小売業販売額はほぼ市場予測通りの+1.1%でも、大型小売店既存店販売高は市場予測を大きく下回る-0.1%。コンビニのローソン<2651>は8月中間期で営業利益が過去最高の見通しと報じられたが50円安。同業のポプラ<7601>は後場に今期の業績予想を発表し、営業損益を黒字から赤字に下方修正し期末配当を5円から無配としては急落し26円安もやむなし。まだら模様の小売業だが、消費増税前の駆け込み需要が望み薄のコンビニは厳しそうだ。

 国土交通省が東京五輪までに東京都内の「電線地中化」を加速させる検討に入ったと伝わり、電気工事関連の関電工<1942>は2円高で年初来高値を更新し、住友電設<1949>も42円高。電線メーカーも昭和電線HD<5805>が9円高で年初来高値を更新し値上がり率9位で、売買高も3位だった。沖電線<5815>は10円高で値上がり率15位、東京特殊電線<5807>は7円高で値上がり率16位に入った。なぜか電柱を製造する日本コンクリート工業<5269>が42円高で年初来高値を更新して値上がり率7位。電線地中化の技術も持っているという。

 燃料電池車に対応する世界初の大型水素基地を建設する千代田化工は32円高、水素を日本に輸入するための水素輸入船の建造が報じられた川崎重工<7012>は前場に年初来高値を更新したが、終値は4円安だった。

 この日の主役は「酸化チタン」関連銘柄。来週はノーベル賞発表ウィークだが、「酸化チタンの光触媒反応」を発見した東京理科大学学長の藤嶋昭博士の受賞が有力視され、前週に続き買いを集めていた。チタン工業<4098>は80円高でストップ高比例配分で、年初来高値を更新し値上がり率トップに立った。堺化学工業<4078>も27円高で年初来高値を更新し値上がり率8位。テイカ<4027>は18円高で値上がり率14位。石原産業<4028>は売買高7位で年初来高値を更新したが、後場に利益確定売りに押され1円安。東邦チタニウム<5727>は6円安だった。藤島博士はJR東海<9022>機能材料研究所所長を兼任するがJR東海は300円安。ノーベル化学賞は10月9日に発表される。(編集担当:寺尾淳)