【日経平均】日米の政治がからんだ乱高下の末に28円高

2013年10月01日 20:16

 NYダウは128ドル安と大幅続落。30日中に暫定予算案が議会を通過しないと政府機関が一時閉鎖になるというデッドラインが強く意識され、週末に急浮上したイタリアの政局混迷も影を落とし一時は170ドルを超える全面安。連邦議会は与野党平行線のまま。10月1日朝方の為替レートは、ドル円が98円台半ば、ユーロ円が133円近辺で、前日より若干の円安になっていた。

 取引時間前発表の8月の国内雇用統計は、完全失業率は4.1%で7月から0.3ポイント悪化し市場予測を下回った。調査時期は東京五輪開催決定前。有効求人倍率は7月比0.01ポイント改善の0.95倍で市場予測と同じ。9月の日銀短観は東京五輪開催決定後の調査。大企業製造業現状判断DIは+12で、6月調査の+4を8ポイント上回り3四半期連続改善で2007年12月以来の高水準。市場予測平均の+8も上回った。非製造業は6月調査の+12を上回る+14だった。先行き判断DIは大企業製造業が+11、大企業非製造業が+14で、中小企業の現状DIも改善し、消費増税の最終判断材料としては十分だった。

 日経平均は62.18円高の14517.98円で始まり、14552円まで上昇後に一時14500円を割り込み、上がっても14550円近辺を天井に押し戻される展開。前日の大幅下落からの反発力は弱かったが、午前11時頃からいきなり14600円を突破し、円安も急進。アメリカで共和党保守派のマッシー下院議員が「下院共和党指導部は最終的には妥協し、オバマケアの変更などの条件を盛り込まない暫定予算案を提出する」という見通しを示したというロイターの速報が入ったためだった。

 その時、ワシントンは30日夜10時で、日本時間午後1時のデッドラインまでの2時間でワシントンから朗報が届くかと期待されたが、事態は全く進展せず後場は14600円割れのスタート。時間切れでアメリカの政府機関の閉鎖が始まった直後の1時2分には14471円まで下落する。だが15分ほどで日経平均は再び上昇し始め14600円にもタッチ。今度は日本の安倍首相が政府与党の政策懇談会で来年4月1日の消費税の8%への引き上げを表明という第一報がきっかけだった。その後、2時30分すぎに14500円を割り込んでTOPIXはマイナスに沈み、大引けまで乱高下した末、終値28.92円高の14484.72円で日米の政治がからんだ波瀾万丈の1日を終えた。TOPIXは-0.66の1193.44で「NTねじれ現象」。売買高は27億株、売買代金は1兆9283億円で、連日の2兆円割れとなった。

 値下がり銘柄964は値上がり銘柄658より300以上多く、業種別騰落率も13対20でマイナス優勢。プラス上位は金属製品、空運、情報・通信、非鉄金属、保険、証券など。マイナス下位は電気・ガス、石油・石炭、海運、ガラス・土石、繊維、その他金融などだった。

 日経平均プラス寄与度1~3位は「御三家」が独占し、合計の寄与度は+35円で上昇幅28円をオーバー。この3銘柄がなければ日経平均はマイナスになっていた。その一角ソフトバンク<9984>は、孫正義社長が東京のティファニー銀座ビルを約300億円で購入したニュースで170円高、会社が買ったわけではないが売買代金トップの人気だった。マイナス寄与度トップは9月26日の採用以来4日続落で90円安の日東電工<6988>。それに続く新規採用を翌日に控えた東急不動産HD<3289>は東急不動産、東急リバブル、東急コミュニティーが経営統合してこの日発足・上場したばかり。インデックスファンドなどの買いが144億円あるとみられたが、大引け直前の数分で1070円台から1031円に急落して終値は1045円まで戻すなど激動した。売買代金は157億円で5位。一方、この日限りで225種から除外になる三菱製紙<3864>は売りが13億円とみられたが、大引けでマイナス圏から急騰し1円高。どうやら日経平均の採用、除外がらみの売り買いに真っ向勝負を挑んだサムライ勢力がいたらしい。

 自動車はトヨタ<7203>は値動きなしだったが、ホンダ<7267>は35円高、富士重工<7270>は24円高。前週に価格カルテル問題の影響で下げた自動車部品メーカーはデンソー<6902>が85円高、アイシン精機<7259>が65円高など復調。ベアリング最大手の日本精工<6471>は今期の経常利益を19.6%上方修正し、純利益は前期比2.1倍。配当も増額して33円高になった。

 この日、古河スカイが住友軽金属工業を合併して世界第3位のアルミメーカーUACJ<5741>が誕生したが初日は値動きなし。合併からちょうど1年が経過した新日鐵住金<5401>は宗岡正二会長がインタビューで「3年で3000億円の資産圧縮目標を今期中に前倒し達成する」と語って5円高になった。

 様子見の地合いでは材料株物色が盛んになり、ノーベル賞期待もはらんだバイオ関連は新日本科学<2395>が256円高で値上がり率4位。168円高のマザーズのタカラバイオ<4974>の親会社の宝HD<2531>は30円高だった。しまむら<8227>は前日発表した中間期決算の利益が軒並み過去最高で、中間配当も期末配当も5円増配し、630円高で値上がり率13位に入っていた。

 この日の主役はグローブライド<7990>。旧ダイワ精工で、釣具を主力に「オノフ」のゴルフ用品、テニス用品、自転車で知られている。27円高で年初来高値を更新し値上がり率3位、売買高2位、売買代金14位に入る大商いで、「特殊筋の買い」と解説されていたがこの日最大のミステリーだった。値上がり率ランキングを見ると、20位以内に300円未満の低位株がこの銘柄も含めて9銘柄もあり、2ケタの超低位株も2銘柄で見慣れぬ銘柄名もチラホラ。それらに大量買いを仕掛けて株価を一本釣りしていった〃その筋〃は、爆釣・大漁の1日だっただろうか。(編集担当:寺尾淳)