住宅のゼロエネルギー化や低炭素化への取り組みが、先進国を中心に加速している。イギリスでは2016年までに全ての新築住宅を、フランスでも2020年までに全ての新築住宅及び建築物をゼロエネルギー化するように規定されている。
日本国内でも、これらの世界的な動きと連動して、経済産業省、環境省及び国土交通省が「低炭素社会に向けた住まいと住まいかた推進会議」を共同で実施しており、先般発表された中間取りまとめによると「2020年までに標準的な新築住宅でネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)を実現し、2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現する」という目標が定められた。他国に比べると、ややスロースタートと言えなくもないが、現実的な計画としては妥当な予定ではないだろうか。
住宅業界ではすでに、各ハウスメーカーにおいてZEH基準をクリアした住宅の導入が活発化している。
ダイワハウス<1925>では、ハイブリッドエコロジールーフを採用したネット・ゼロ・エネルギー住宅「xevoYU(ジーヴォ・ユウ)」を展開しているし、住友林業<1911>が資材提供や技術支援を行うイノスグループのコンセプト商品「ENETOMOの家(えねとものいえ)」は、全熱交換型換気システムの採用と高断熱、高気密化によってZEHを実現している。このようにコンセプト商品としてZEHを投入している住宅メーカーが多い中、業界トップの積水ハウス<1928>は、今年の4月にゼロエネルギー住宅「グリーンファースト ゼロ」を発表しているが、いわばZEH仕様として全ての商品に展開が可能としている点に、企業としての本気度がうかがえる。実績も突出している。今年度中には新築住宅の約40%をZEH仕様にし、14年には60%にまで高める目標を掲げていたが、好調な受注を受け、今年度の目標を50%に上方修正。8月の受注実績は63%に達している。
確かに、住宅の環境で重視すべきことは、エコやエネルギーに関することだけではない。住む人にとっての環境とは、「暮らしやすいかどうか」であり、それがないと絵に描いた餅になってしまいかねない。家は家族にとっての憩いの場所。ZEH住宅が今後どれだけ進化したとしても、そこが疎かになるようなことがあってはならない。(編集担当:石井絢子)