【日経平均】外電速報たびたび143円高で14000円台回復

2013年10月09日 20:28

 NYダウは159ドル安で続落。8月27日以来の安値に沈んだ。オバマ大統領はベイナー下院議長に、財政削減など共和党との交渉は暫定予算案が成立して債務上限問題が解決した後だと改めて伝え、一歩も引く構えなし。長期戦覚悟の見方も出ている。9日朝方の為替レートは、ドル円は96円台後半、ユーロ円は131円台後半で前日とあまり変わりなく、円の高止まりも長期戦覚悟か。

 取引時間前、オバマ大統領が9日にFRB新議長にイエレン副議長を指名するという速報がCNBCなど海外メディアから流れた。日経平均は104.72円安の13789.89円で始まり13700円台で低迷。ここで債務上限問題で共和党に直接交渉の用意があるというウォールストリート・ジャーナルの速報が入り、円安が進行してドル円が97円台に乗せた。日経平均は午前9時20分過ぎに13800円を突破すると下げ幅を圧縮し、TOPIXはプラスにたびたびタッチ。しかし日経平均はソフトバンク<9984>の大幅安が重しで先物も現物もなかなかプラスに浮上できず「NTねじれ現象」が続く。11時頃からようやくプラスになり、13900円台に乗せて上値を追って前引けは13955円だった。

 14000円台回復が期待された後場だが、13998円まで接近してはね返される。一昨日の下値支持ラインが天井の抵抗線に化けていた。「まもなく政府機関一時閉鎖が解除される」というプリッカー商務長官発言の速報が入ったが、シンガポールでの発言でリップサービスの気配濃厚。それでも円安はさらに進む。1時間以上もみあった末、午後1時45分すぎにようやく14000円にタッチし、2時台はそれをはさんだ小動きで推移する。SQ週の魔の水曜日でありながら143.23円高の14037.84円で高値引けで続伸。外電の速報が何度も入って、朝の安値から286円戻した1日だった。TOPIXは+16.77で1166.90と全体的に堅調。売買高は24億株、売買代金は1兆8441億円で商いはまだ復調していない。

 値下がり銘柄234に対し値上がり銘柄は全体の82.8%の1450もある全面高。業種別騰落率のプラスセクター上位は不動産、その他金融、鉱業、証券、鉄鋼、保険など。下位は医薬品、その他製品、小売、電気・ガスなどで、情報・通信と空運の2業種がマイナスのセクターだった。

 終日、日経平均の上昇を阻む逆噴射エンジンを吹かし続けたのがソフトバンクで、マイナス寄与度-49円は2位以下を大きく引き離し突出。シティグループ証券がレーティングを下げ、420円安でガラにもなく値下がり率4位になっていた。

 金融関連は「ギャングスターズ・ファイナンス」問題で火だるまのみずほ<8411>が2円安だったが、片棒を担いだオリコ<8585>は5円高で続伸。野村HD<8604>が16円高、マネックスG<8698>が23円高など証券は堅調。トヨタ<7203>と富士重工<7270>は、前場は安かったが後場は大きく上昇しトヨタは180円高、富士重工は42円高。中国での新車販売が昨年9月の2倍に増えたホンダ<7267>は70円高。マツダ<7261>は「アクセラ」を全面改良した同社初のHVを11月に発売すると発表し10円高。日産<7201>はNY州裁判所からNYのタクシー「イエローキャブ」への独占供給契約無効の判決を受けたが15円高だった。

 ソニー<6758>は大引け前にプラスに浮上し売買代金4位で6円高。パナソニック<6752>は今年度末にプラズマパネル事業から撤退し尼崎工場を売却すると発表。赤字の元凶を手放すのを好感され15円高。東京電力<9501>は柏崎刈羽原発を来年4月に再稼働するという見通しを金融機関に示したが4円安。高浜原発の再稼働のために防潮堤を年内に完成させる関西電力<9503>は29円高。原発再稼働期待の木村化工機<6378>は41円高で値上がり率18位に入っていた。

 花王<4452>は来年1月に白斑問題を起こしたカネボウ化粧品の研究、生産部門を統合・吸収すると発表し29円安。将来は販売部門も統合するという。ローソン<2651>は8月中間期決算を発表し、売上高は微減でも採算が改善し営業利益は前年同期比3%増で80円高。2014年度も社員の年収を2~3%上げるという。Jフロントリテイリング<3086>は今期業績見通しで経常利益が過去最高と発表しても市場予測を下回り13円安。三越伊勢丹HD<3099>も3円安。ビックカメラ<3048>は前期の当期純利益を24億円に上方修正して450円高になっていた。

 建設、不動産関連も前日に続き好調。住友不動産<8830>150円高、三井不動産<8801>135円高、三菱地所<8802>103円高で春頃よくあった「財閥系3銘柄3ケタ高揃い踏み」が復活し日経平均プラス寄与度も4、7、10位。背景にはイエレン氏のFRB議長就任による金融緩和継続期待があり、金融株もノンバンク株も上昇した。セメント業界トップの太平洋セメント<5233>は9月中間期の純利益が過去最高の90億円の観測で12円高。復興需要、国土強靱化、東京五輪と建設資材需要は切れ目がない。同業のデイシイ<5234>は99円高で値上がり率1位、アスファルトのニチレキ<5011>は71円高で同16位に入っていた。不動産再生事業を展開するサンフロンティア不動産<8934>はいちよし経研が新規で好レーティングをつけ、124円高で値上がり率3位だった。

 前日、マザーズに上場したエナリス<6079>は9時22分に公開価格280円に対し717円の初値がついた。終値は867円。楽天<4755>イーグルスの田中将大投手は前夜、昨年以来28連勝を記録したが、新規IPOの初値が公開価格を上回る記録はこれで昨年12月20日のユーグレナ<2931>、シュッピン<3179>以来35連勝中(J-REIT、東京PROを除く)。直近黒星の東証2部のパンチ工業<6165>は8円高。マーくんとIPO初値のどちらが先に連勝がストップするか。

 この日の注目はノーベル物理学賞受賞のヒッグス粒子関連。加速器LHCの超電導電磁石を開発した東芝<6502>は5円高、超電導線材を製造する古河電工<5801>は6円高、冷却装置を製造するIHI<7013>は8円高と堅調。検出装置ATLAS用の低温真空容器を開発した川崎重工<7012>は7円高、光ファイバーを製造したフジクラ<5803>は4円高。ATLASの素粒子検出用センサーを供給した85円高の浜松ホトニクス<6965>は、2002年に小柴昌俊氏が「ニュートリノ」で物理学賞を受賞した時も、実験施設「スーパーカミオカンデ」で脚光を浴びていた。

 その浜松ホトニクスの技術力が再び活躍しそうなのが次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」で、候補地として日本では北上山地が専門家から推薦されているが、下村博文文部科学大臣は9月20日に2014年度の誘致表明を見送ると表明した。素粒子物理学の先端研究施設の誘致に二の足を踏むなど、日本からノーベル賞級の研究成果を生み出したいという成長戦略に逆行していると、改めて批判の声があがりそうだ。(編集担当:寺尾淳)