【日経平均】上海市場と為替に振り回された末に70円安

2013年10月29日 20:15

 NYダウは1.35ドルの小幅安で3営業日ぶり反落で、29~30日のFOMC(連邦公開市場委員会)やアップルの決算を前にひと休み。鉱工業生産指数は7ヵ月ぶりの高い伸びでも中古住宅販売仮契約件数が悪化し、製薬大手のメルクが減益決算を発表したが、10月いっぱい続く7~9月期決算発表はこれまで約7割の企業が市場予測を上回っていて株価は底堅い。29日朝方の為替レートは、ドル円は97円台後半、ユーロ円は134円台後半で、前日とあまり変わらない水準だった。

 大幅高から一夜明けた日経平均は107.32円安の14288.72円と利益確定売りで反落して始まる。午前10時30分頃まではおおむね14200円台後半で推移したが、「中国人民銀行が2週間ぶりに短期金融市場に130億元(21億4000万ドル)の資金供給」というニュースに反応し1%を超える上昇をみせた上海総合指数ととともに日経平均も11時前には前日終値近辺の14395円まで上昇した。

 しかし後場は14200円台後半まで下がる。午後1時台には14300円台後半まで上がる場面もあったが、2時台は一転下落して14300円近辺で小動きしたかと思うと、そこから14350円を超えてまた下げるという目まぐるしい「方向感なき展開」。その原因は、中国の銀行間の短期金利が下がらず一転軟調になった上海総合指数と為替レートで、ドル円は97円台40~70銭の範囲で日中2往復半もした。終値は70.06円安の14325.98円で、22日からの星取が○●○●○●ときれいに並ぶ。TOPIXは-4.86の1193.50。売買高は29億株、売買代金は1兆8741億円で、前日よりも少し増えていた。

 値上がり銘柄566に対して値下がり銘柄は1.9倍の1071もあり、業種別騰落率の値上がり銘柄は8にとどまる。その上位は非鉄金属、電気・ガス、医薬品、水産・農林、食料品、鉄鋼など。値下がり業種は機械、海運、空運、ゴム製品、証券、銀行などだった。

 為替と連動した先物主導の相場だったので日経平均マイナス寄与度の1~3位は「御三家」が君臨。3銘柄合わせて-32円と下げ幅の45%以上を占めた。プラス寄与度1位はKDDI<9433>で+9円、2位は京セラ<6971>で+3円。ともに好決算を受けて連騰している。

 前日大きく上昇したメガバンクにプラス銘柄なし。自動車株は明暗が分かれ、スズキ<7269>はインドの子会社マルチスズキの7~9月の純利益が前年同期の約3倍になり27円高。ホンダ<7267>は10円高だったが、トヨタ<7203>が40円安、富士重工<7270>が58円安、日野<7205>が62円安と不振で、マツダ<7261>も2円安。タイヤのブリヂストン<5108>も45円安だった。自動車部品ではショックアブソーバーのKYB<7242>が34円安になった他、ジェイテクト<6473>が66円安、日本精工<6471>が55円安とベアリングメーカーが売られていたのが目立った。

 電線メーカーのフジクラ<5803>は前日、9月中間期の営業利益97%増の好決算を発表し、通期の営業利益見通しを10億円上方修正。同時に上限1000万株の自社株買いも発表して「鬼に金棒」で、51円高で値上がり率3位に入った。この日は18円高で売買代金4位の東京電力<9501>や、23円高の低位材料株の日本冶金工業<5480>に買いが向かい、日本冶金は売買高4位、売買代金5位だった。

 塩野義製薬<4507>は9月中間期の営業利益を上方修正して63円高。川崎重工<7012>は11時に発表した9月中間期の営業利益が前年同期の2.6倍という好決算でも市場予測に届かなかったため下落し24円安で値下がり率10位。通期見通しの据え置きも投資家の心証を悪くした。対照的なのが同時刻に通期の業績見通しの下方修正を発表したクラレ<3405>で、中国やヨーロッパでの販売不振が響いたものの数字が市場予測よりも上だったので一時59円高まで急上昇。しかし終値は10円高だった。

 前日の主役の低位建設株はこの日、続伸、反落が入り乱れつつ、売買高ランキングにはズラリと並ぶ。東証がまた信用規制をかけて28円安の熊谷組<1861>は値下がり率4位、32円安の大豊建設<1822>は同5位に入ったが、安藤間<1719>は2時に9月中間期の営業利益の9億円から37億円への上方修正を発表するとマイナス圏から急浮上し25円高で年初来高値を更新した。売買代金でも6位。値上がり率ランキングでは業績見通しを上方修正した矢作建設<1870>がストップ高の100円高で年初来高値を更新し2位、道路舗装材のニチレキ<5011>が10位。土木に強い13位の世紀東急工業<1898>は売買高でも11位に入っていた。

 アイロムHD<2372>は300円高で連日のストップ高比例配分。値上がり率のトップに立ちiPS関連銘柄強し。アップルの7~9月期決算は、売上高、1株当たり利益が市場予測を超えたものの粗利益率の低下が嫌気されて時間外取引で株価が低下した。アップル関連銘柄のフォスター電機<6794>は40円安、村田製作所<6981>は130円安、太陽誘電<6976>は26円安、航空電子<6807>は11円安と売られた。

 この日の主役は190円安と売り込まれて値下がり率3位、売買代金1位になったコマツ<6301>。前日大引け後の決算発表で通期の業績予想を下方修正し、営業利益は増益から一転、減益になってネガティブサプライズが走った。同業種・中国関連の弟分のように扱われる日立建機<6305>も、コマツと同じく業績を下方修正して127円安で値下がり率11位になっていた。(編集担当:寺尾淳)