EUの二酸化炭素(CO2)削減計画は欧州メーカーをハイブリッド開発へとシフトさせる?

2013年12月04日 08:42

BMW i8

2014年にも発売予定のハイブリッドスポーツ「BMW i8」。駆動モーターと1.5リッター3気筒ガソリンエンジンを組み合わせ、フロントモーターとリアのエンジンで、スポーツモード4輪駆動となる。

 ヨーロッパ連合(EU)では、地球温暖化対策の大きな柱に、自動車が排出する二酸化炭素(CO2)の削減計画を発表している。2011年から欧州委員会が検討してきた原案によると、現状で自動車の走行距離1kmあたりのCO2排出量が約160gであるのに対し、計画では2015年に130gに抑える必要がある。

 この規制値は各メーカーが販売した新車1台の平均値で、もし達成できない場合には多額の課徴金の支払い、もしくは自動車メーカー廃業もあり得るという厳しい内容。このためEU加盟国の承認は全体として得られていないが、規制値そのものは日本のメーカーなどの多くのモデルが先取り達成している現状を鑑み、そのまま適用されるというのが大方の見方だ。

 当初、欧州のメーカーの多くは、ディーゼルターボ技術でこの規制をクリアと踏んでいたようだ。規制値はメーカー別の平均値だから、「販売台数の多い中・小型車にディーゼルエンジンを搭載して燃費を稼げば、利益の大きな大型プレミアムモデルやスポーツモデルには手を付けなくても済む」。どうやら、こう考えていた節がある。しかし、軽油は炭素の含有量がガソリンよりも多い。このため、思惑どおりにCO2排出量を下げることが出来なかった。

 そこで2011年あたりから日本の独壇場で欧州メーカーは、それまでほぼ無視し続けたハイブリッド(HV)やプラグインHV(PHV)開発に向けてシフトし、アクセルを踏み込んだのだ。

 今回の第43回東京モーターショー(TMS)にHVやPHV、さらにEV(電気自動車)を展示した欧州メーカーは多い。基本的にHVは小さくて軽量なコンパクトカーには向かないとされる。理由は駆動用モーター、エネルギー回生機器、駆動用電池にそれらのコントロールユニットが、通常のエンジンに加わり大きな重量増となって省燃費を阻害するからだ。だからハイブリッドシステムは大きなクルマほど省燃費に効果的といえるのだ。

 こうした意味でメルセデス・ベンツが展開するSクラスとEクラスのHVは非常に理に適っている。なかでもドライバーズカーとしてグローバル販売されるEクラスのHVが販売の主軸になれば、ダイムラーのCO2排出の平均値低減に大いに貢献するはず。そうなることで、同時に発表された6リッターV12ターボを積んだ堂々たるプレミアムサルーン「SクラスAMGロング」も生産・販売できるわけだ。

 ところが、フォルクスワーゲン(VW)は、いちばん小さな「up!」のPHV「Twin up!」を参考出品した。完成度は相当に高い。同モデルの駆動ユニット(システム総合パワーは55kW)は、800ccのディーゼルTDIエンジン(35kW)、電気モーター(35kW)、7速DSG、パワー制御電子機構で構成する。燃費は何と90.9km/リッターだという。VWはダウンサイジングコンセプトで排気量を落としてCO2低減を目指してきたが、ここへ来てPHVに進出することになるのか?

 一方、独メーカーのプレミアムブランドBMWはスポーツカーでPHVを出品した。ドライビング・プレジャーを高めながら燃費を削減することを追求したモデル「BMW i8」だ。BMW i8の技術的なハイライトは、駆動モーターと組み合わせる1.5リッター3気筒ガソリンエンジンが新開発・搭載された。このフロントの電気モーターとリアのガソリンエンジンで、スポーツモードでは4輪駆動として高いトラクション能力を発揮する。しかもシステム合計出力362 ps(266 kW)のパワー発揮。燃費は40km/リッターを達成する。

 同様にアウディもA3でPHVを発表(別項参照)。すでに、ポルシェもパナメーラHVを発表しており、EUのCO2削減計画は、各メーカーのHV進出へのアクセルとなりそうだ。

 なお、今回のTMS展示車でCO2排出量を公表したスポーツプレミアム・モデルの代表をピックアップすると、ジャガーFタイプRは259g/km、日産GT-Rは267g/km。(編集担当:吉田恒)