9日のNYダウは5ドル高。中国の11月の貿易統計の輸出が12.7%増というサプライズな速報値が好感されて38ドル高までいったが、タカ派の地区連銀総裁3人が相次いで量的緩和政策の早期縮小開始を訴えて上値を抑え、最後は利益確定売りを浴びてかろうじてプラス。S&P500は史上最高値を更新した。大手銀行が「ボルカールール」を裁判にかける話も出た。10日朝方の為替レートはドル円は103円台前半。ユーロ円は141円台後半で、一時142円に迫る場面もあった。
前日発表の11月の景気ウォッチャー調査は、現状判断は1.7ポイント上昇の53.5、先行判断は0.3ポイント上昇の54.8。発表には「消費増税前の駆け込み需要」という言葉が頻出し、それを割り引いて考える必要がある。日経平均は16.24円安の15633.97円で始まり序盤は15562円まで下げ幅拡大。しかし10時までに15600円台を回復してTOPIXは一時プラスになるなど底堅い。10時台はおおむね15600円台前半の小動きだったが11時台には下落し、前引けは15593円だった。
ユーロ円が142円台に乗せた後場は当初、15630円にタッチした後に15600円を割り込むなど少し大きく動いた後はマイナス圏の15600円をはさんでもみあう展開が大引けまで続く。それでも前場はマイナスが続いたTOPIXは後場ほとんどの時間プラスだった。日経平均終値は38.90円安の15611.31円で3日ぶり反落。日中値幅は71円しかなかった。TOPIX終値は+1.01の1256.33で3日続伸。売買高は21億株、売買代金は1兆9513億円でメジャーSQを控えて2兆円は超えない。
値上がり銘柄734、値下がり銘柄865とそれほど差はなく、業種別騰落率もプラス17、マイナス16とほぼ拮抗。上昇セクターは鉱業、不動産、その他金融、石油・石炭、電気・ガス、精密機器など。下落セクターは証券、輸送用機器、海運、ガラス・土石、機械、繊維などだった。
日経平均採用225種は値上がり93銘柄、値下がり111銘柄。プラス寄与度1位に三菱地所<8802>、2位に三井不動産<8801>、4位に住友不動産<8830>が入り、合計で日経平均を6円押し上げた。不動産は業種別騰落率2位。3位はゴールドマンサックスがレーティングを引き上げた安川電機<6506>が入った。マイナス寄与度1位はファーストリテイリング<9983>で-21円。2位は-4円のトレンドマイクロ<4704>だった。
メガバンクはみずほ<8411>値動きなし、三菱UFJ<8306>1円高、三井住友FG<8316>20円安とまちまち。証券は業種別最下位に沈むほど悪く野村HD<8604>は4円安。自動車が属する輸送用機器セクターはそれに次いで悪く、ホンダ<7267>45円安、富士重工<7270>38円安、トヨタ<7203>30円安、マツダ<7261>2円安。もっとも自動車部品メーカーのデンソー<6902>は40円高で年初来高値を更新していた。
電機もふるわずソニー<6758>は36円安。シャープ<6753>も1円高で売買高1位、売買代金3位と商いだけ盛ん。中国の東風汽車と合弁契約を結んだ井関農機<6310>は4円高。中国関連銘柄としてコマツ<6301>とペアで名前が出る日立建機<6305>は不振の鉱山機械が通期2割の減益と報じられたが、この日発表の中国の工業生産高や小売売上高に良い数字が出たこともあり32円高。コマツも3円高。大手ゼネコンで決算が最も良かった清水建設<1803>はクレディスイスがレーティング、目標株価を引き上げ9円高だったが、熊谷組<1861>は11円安で7日続落し値下がり率10位だった。
がん分野の再生医療製品を治験にかけるニュースがあったテラ<2191>は105円高。旧・大阪曹達のダイソー<4046>は日経新聞に大阪府立大学と共同でレアメタルの使用量を大幅に減らせる「有機2次電池」を開発という記事が載り、年初来高値更新の26円高で値上がり率10位。「シェール革命」でJXHD<5020>は石油化学製品が6割増益で、掘削機器を製造するタダノ<6395>は今期、過去最高益を更新すると報じられJXHDは6円高、タダノは42円高。羽田発アジア路線を6路線新・増設するANAHD<9202>は1円高。配当性向を引き上げる伊藤忠商事<8001>は16円高だった。
岡山県のスーパー、天満屋ストア<9846>に2割出資と報じられたセブン&アイHD<3382>は5円高。天満屋ストアはストップ高比例配分の150円高で年初来高値を更新した。29円高で3日続伸のヤフー<4689>が前日入ったゴールドマンサックスの最上位レーティング「コンビクションリスト」に、この日はコスモス薬品<3349>が入り470円高。逆にツルハHD<3391>はそこから格下げされたため50円安になった。
値上がり率ランキングでは、1位のユニデン<6815>はストップ高の80円高で年初来高値更新。スマホ用ゲームに参入してゲーム関連銘柄視されている。4位のサイボウズ<4776>は株式分割を好感されて4700円高で年初来高値を更新した。8位の学情<2301>は前日発表した本決算で今期2.9倍の大幅営業増益を見込み89円高になった。大学新卒者の採用が復活しているためだというが、当の就活生にその実感はあるか?
マザーズのLINE関連のアドウェイズ<2489>は76円高で年初来高値を更新し、売買代金は東証1部銘柄を大きく上回る1456億円。LINEゲームのエイチーム<3662>もストップ高比例配分の700円高で値上がり率2位に入り、「LINE」の旗が向かうところ敵なし。ドワンゴ<3715>は180円安で値下がり率7位だったが、誰かに狙いうちされたのかミクシィ<2121>はストップ高比例配分の1500円高で10日続伸し、その間に終値は4.59倍に。もう、どうにもとまらない。
前日マザーズに新規上場したホットリンク<3680>は9時29分に初値がつき、公開価格2700円の2.6倍の7170円。この日の新規IPOはマザーズにブイキューブ<3681>が上場し、10時43分に公開価格3300円より51.8%高い5010円の初値がついた。これで「公開価格<初値」の連勝記録は44に伸びた。11日の新規IPOは2件ある。
この日の主役は過去の人気株、「オワコン」扱いされるゲーム業界旧勢力のDeNA<2432>とグリー<3632>。301円高のDeNAは値上がり率6位、売買高9位、売買代金はソフトバンク<9984>を抜いてなんと1位。150円高でストップ高のグリーは値上がり率5位、売買高16位、売買代金11位。3、4年前の「青春の日々」がよみがえったようにランキング上位に入った訳は、初冬の桜の狂い咲きか、高額報酬で一本釣りした人材の厚みがあり復活できるという読みか、それとも「鶏ガラからまだダシが取れる」という見方か。(編集担当:寺尾淳)