【日経平均】終了前4分間で11円高まで急騰する大逆転

2013年12月20日 20:41

 19日のNYダウは11ドル高で史上最高値更新。新規失業保険申請件数が悪化し、中古住宅販売件数が2年半ぶりに前年同月比マイナスで、フィラデルフィア連銀製造業景況指数が市場予測を下回ると午前中はマイナス圏で低迷し、NY市場は「学校の成績が悪いときちんと叱る親」に〃正常化〃。それでもCB景気先行総合指数が上振れして底堅くプラスに浮上した。20日朝方の為替レートはドル円は104円台前半、ユーロ円は142円台前半と、前日と変わらない水準だった。

 3日で706円上昇した後の「利益確定売りの金曜日」でしかも3連休前とあって下落覚悟の日経平均は68.53円安の15790.69円の反落でスタートする。15800円台にも時々タッチするが、おおむね15700円台後半でもみあい、そのまま前引け。昼休みに日銀の金融政策決定会合の結果が発表されたが、予想通り金融緩和政策は現状維持で「緩やかに回復している」という景気判断は据え置きだった。

 後場も15700円台後半の水平飛行が続き、時々15800円にタッチしては抑えられプラス圏は遠かった。午後2時前からはドル円104円台半ばまで円安が進行し、上抜けして15800円台に定着。2時30分頃からさらに下げ幅を圧縮し、大引け前の残り4分から誰の演出なのか棒上げの「大逆転・高値引けショー」開演。残り1分でまさかのプラスに浮上し、15820円台から一気に50円近い急騰をみせ11.20円高の15870.42円で4勝1敗、前週末から467.31円上昇して今週の取引を終えた。日中値幅115円の日経平均は4日続伸したが、TOPIXは-1.43の1261.64で4日ぶりに反落しNT倍率は12.57に拡大。売買高は25億株、売買代金は2兆3670億円だった。

 TOPIXはマイナスなので、東証1部全体では値上がり銘柄574に対し値下がり銘柄が1059と約6割を占め、実態は下落。業種別騰落率も15対18でマイナスが優勢だった。プラス上位はその他金融、パルプ・紙、ゴム製品、その他製造、海運、ガラス・土石など。マイナス下位は食料品、石油・石炭、医薬品、電気・ガス、空運、サービスなどだった。

 日経平均採用225種も上昇84銘柄、下落118銘柄で下落優勢。大逆転の主役は言わずと知れた1100円高でプラス寄与度1位のファーストリテイリング<9983>で+43円。2位の+4円のファナック<6954>の10倍のパワーで土俵際でうっちゃった。マイナス寄与度1位はKDDI<9433>で-12円。2位は京セラ<6971>で-5円だった。

 メガバンクにプラス銘柄はなく、証券も野村HD<8604>4円安などふるわない。自動車は高安まちまちで、マツダ<7261>は売買高1位と買いを集め17円高で3日続伸し、富士重工<7270>も7円高、ホンダ<7267>が40円高だった一方、日産<7201>は売買高10位、売買代金9位と商いは多いが前日に三菱UFJ証券がレーティングを引き下げたために売られ21円安。トヨタ<7203>は30円安で、前週末比で10円の下落。騰落率3位と好調のゴムセクターは、横浜ゴム<5101>が今期の営業利益が19%増の590億円前後で2期連続過去最高益更新という業績観測報道が出て22円高。ブリヂストン<5108>も20円高で4日続伸した。

 電機では携帯電話事業が来期は黒字の見通しと報じられた富士通<6702>が21円高で年初来高値更新。その来期に半導体2工場を閉鎖するパナソニック<6752>は2円高。ソニー<6758>は7円高。今期減益見通しから一転、増益見通しに上方修正した堀場製作所<6856>は95円高だった。

 今週、新製品期待で連日値上がり率上位だったショットモリテックス<7714>はストップ安の80円安で値下がり率1位になり、逆に社内不祥事で連日値下がり率上位に入っていたリソー教育<4714>は買い戻されて39円高で値上がり率4位と、3連休前にポジション整理がなされていた。

 設備投資に支えられた「工作機械」関連は好調続きで、この日は年初来高値の更新ラッシュ。ゴールドマンサックスが目標株価を引き上げたキーエンス<6861>は2100円高で値上がり率12位、SMC<6273>は280円高、オークマ<6103>は5円高、牧野フライス製作所<6135>は39円高で値上がり率18位、DMG森精機<6141>は34円高、アマダ<6113>は9円高。ファナック<6954>も120円高で売買代金14位に入った。

 ディフェンシブ系の大型株が商いを伴って売られ、JT<2914>は売買代金4位で110円安、値下がり率15位。三菱地所<8802>は売買代金13位で29円安。ユニ・チャーム<8113>は270円安で値下がり率7位に入った。良品計画<7453>は2014年2月期の純利益を56%増の171億円に上方修正して170円高。日本マクドナルドHD<2702>は12月期の通期業績見通しを売上高は50億円、営業利益は85億円それぞれ下方修正し、売上高は5ヵ月、客数は7ヵ月連続で前年同月割れと深刻で株価は38円安。期待の「マックカフェ」も、ヒット商品のコンビニ入れたてコーヒーとの異業種対決でやられた。

 個人投資家が低位株で小遣い銭を稼ぐ「師走のもちつき相場」たけなわで、材料などなく相場解説で無視される株価1、2ケタの超低位株が連日ランキング入り。この日も子供服メーカーのキムラタン<8107>が売買高2位で値上がり率5位、繊維のユニチカ<3103>が売買高3位、オーディオのティアック<6803>が売買高5位で値上がり率3位。ニッケルと不動産と学習塾という〃ヌエ〃的事業展開のエス・サイエンス<5721>も値下がり率10位で存在感を示していた。

 この日の主役はインフラ輸出の目玉「シンカンセン」。JR東海<9022>、JR東日本<9020>、JR西日本<9021>、JR九州(非上場)が来年4月をメドに高速鉄道規格の国際標準化を進める組織を設立し、新幹線やリニアの輸出で連携すると日経新聞が報じた。海外の高速鉄道プロジェクトの受注で足並みを揃える。前日にはJR東海の山田佳臣社長が東海道新幹線の最高時速を現在の270キロからスピードアップするための走行試験を進めていると明らかにし、日本車輌<7102>はJR東海から「N700A」新幹線車両12編成192両を受注と発表した。JR各社の株価は東海が値動きなし、東日本が60円安、西日本が15円高とまちまちだったが、日本車輌は19円高、ATCなど新幹線の信号システム技術を持つ日本信号<6741>はみずほ証券が目標株価を引き上げ43円高で値上がり率7位に入った。海外から見れば、乗客の死亡事故ゼロで来年で開業50周年を迎えるシンカンセンは、まだ営業運転していないリニアよりも魅力的な交通システムに映るだろう。(編集担当:寺尾淳)