18日のNYダウは292ドル高で16000ドル台に乗せた。住宅着工件数が市場予測を大幅に上回りやや堅調だったところへFOMCの結果が出た。量的緩和政策は1月から縮小開始で、米国債、住宅ローン担保証券(MBS)はそれぞれ50億ドル減らし、市場からの買い入れは100億円減の月750億ドル。フォワードガイダンスとバーナンキFRB議長の記者会見ではFF金利の実質ゼロ金利政策は失業率が下がっても当面継続し、ハードランディングしないことが確かめられ市場に安心感がひろがった。不透明感が一掃され、経済指標が出るたびに「学校の成績がいいと親が怒り出す」ようなNY市場の倒錯した反応はなくなりそうだ。アメリカの長期金利は2.9%台まで上昇し、為替はドルが1円以上高くなりドル円は2008年10月以来の104円台。19日朝方の為替レートはドル円104円台前半、ユーロ円142円台半ばと円安が進んだ。
CME清算値は15895円だったが、日経平均は221.63円高の15809.43円と控えめに始まる。午前9時9分に15879円まで上がるが、その後は15800円台前半でもみあう展開で前場はそのまま水平飛行で終わった。軟調な上海、香港市場と、ドル円が104円台を一時割り込んだことが日経平均の上昇を阻んだ。後場も午後1時台までは15800円台前半の小動き。2時台になるとドル円が104円台に戻ってようやく動きが出て2時12分に15891円まで上昇するが、あっさり抑えられ終値は271.42円高の15859.22円。終値ベースは12月3日の年初来高値を更新したが、高値ベースは5月23日の年初来高値15942円にあと51円及ばずに終了。20日は利益確定売りがきつくなる3連休前の金曜日で更新は期待薄。日中値幅は93円で動きに乏しかった。TOPIXは+12.58の1263.07でNT倍率は12.55倍に拡大。売買高28億株、売買代金2兆8260億円と商いはにぎわった。
日経平均大幅高でも値上がり銘柄は894で全体の半分で、692で終わった値下がり銘柄が数で上回る時間もあった。それでも下落セクターは空運1業種だけで、上昇セクター上位は不動産、その他製品、保険、鉱業、石油・石炭、その他金融など。下位はパルプ・紙、情報・通信、倉庫、繊維、化学などだった。
日経平均採用225種は値上がり185銘柄、値下がり26銘柄。プラス寄与度1位は1750円高で5月24日以来の株価4万円台に乗せたファーストリテイリング<9983>で+68円、年初来高値更新の2位のファナック<6954>は+29円で合計+97円もあり、NT倍率も大きく開くはず。マイナス寄与度1位は「四天王」の一角のKDDI<9433>で-0.78円、2位はJT<2914>で-0.59円に過ぎなかった。ソフトバンク<9984>はマイナスの時間帯もあり結局、値動きなしだった。
みずほ<8411>が値動きなしでも三井住友FG<8316>が110円高で年初来高値更新と、同じメガバンクでも大きな差がついた。三菱UFJ<8306>は11円高。自動車は三菱UFJ証券がレーティングを引き上げた富士重工<7270>が72円高、三菱UFJ証券がレーティングと目標株価を引き上げたマツダ<7261>が9円高で年初来高値更新、ホンダ<7267>が45円高と上昇したが、トヨタ<7203>はこんな日でも値動きなしで、やっぱりおかしい。電機はソニー<6758>が売買高12位で40円高、同10位のパナソニック<6752>はクレディスイスが目標株価を引き上げて30円高で年初来高値更新と、どちらも商いを伴って上昇。新日鐵住金<5401>は8円高、売買高4位と買われた。
東京エレクトロン<8035>は通期最終利益見通しを230億円の黒字から220億円の赤字に大幅下方修正したが20円高。クボタ<6326>は1200万株上限の自社株買いを発表し55円高だった。任天堂<7974>は3日続伸の650円高で値上がり率13位。「Wii U」向けソフト「ZELDA無双」の来年夏の発売を発表した。セブン&アイHD<3382>は3~11月期の営業利益が15%増で5年ぶりの過去最高益という業績観測報道が伝わり145円高。セブンイレブンは「セブンカフェ」の大ヒットもあり絶好調で、駆け込み需要もあってスーパーや百貨店も底打ちしている。
来年度予算案では診療報酬がトータルで横ばいで、中医協の薬価専門部会の薬価見直しではジェネリック医薬品の価格帯が3つに絞られ事実上は引き上げで、関連銘柄は軒並み安。値下がり率ランキングでは、1位に305円安の東和薬品<4553>、6位に330円安の沢井製薬<4555>、10位に33円安のあすか製薬<4514>が入っていた。王将フードサービス<9936>は朝7時に本社の前で掃除をしていた大東隆行社長が何者かに銃で撃たれて殺害され、気の毒ながら110円安で値下がり率12位。兜町は非情だ。
猪瀬東京都知事の辞任も含め朝からニュースが多い中、新規IPOは4件。店舗、厨房設備の維持・保全サービスを行うシンプロメンテ<6086>がマザーズに新規上場し、公開価格950円に対し1時55分に2235円の初値がついた。浄化槽など水処理設備の製造、施工、販売、維持管理を行う松山市のダイキアクシス<4245>が東証2部に新規上場し、公開価格1300円に対し9時6分に1351円の初値がついた。人材派遣、業務請負、人材紹介を行うウィルグループ<6089>が東証2部に新規上場し、公開価格2870円に対し9時9分に2750円の初値がついた。足利銀行の金融持株会社の足利HD<7167>が2003年の経営破たんから10年で東証1部に新規上場し、公開価格420円に対し9時16分に451円の初値がついた。時価総額で今年、サントリー食品<2587>に次ぐ規模の注目の大型IPOは売買高7位と順調な滑り出しで、スポンサーの野村HD<8604>は8円高。ウィルグループは昨年12月20日に東証2部に上場したパンチ工業<6165>以来の黒星(公開価格>初値)で、引き分けをはさむ連勝記録は365日目に52でストップ。双葉山、白鵬どころか千代の富士にも及ばなかった。
この日の主役は業種別騰落率1位の不動産セクター。大手財閥系の三井不動産<8801>は135円高、三菱地所<8802>は86円高、住友不動産<8830>は120円高と大幅高。値上がり率ランキングでは前日に今期見通しの営業利益を60億円、純利益を15億円それぞれ上方修正した東京建物<8804>が71円高で年初来高値を更新し6位、東急不動産HD<3289>が58円高で7位、サンフロンティア不動産<8934>が90円高で8位、NTT都市開発<8933>が59円高で11位に入った。アメリカの金融緩和政策が縮小するとマイナス材料だがソフトランディングの方針が明確になり、資金流入期待はむしろ盛り上がった。20日に黒田日銀総裁が追加緩和をほのめかせば、いっそう期待できそうだ。(編集担当:寺尾淳)