ブラック企業に関する様々な話題が、このところ継続的にメディアで取り上げられている。ただし、ブラック企業の定義も解釈によって変わってくる。しかしながら、シンプルでわかりやすいブラック企業か否かを見極める方法の一つとしては離職率が考えられるだろう。この率が異常に高い企業は、ブラック企業である確率が高いのではないかと、筆者は漠然と考えていた。そうした中で、厚生労働省が、興味深い立ち入り調査を行っている。
対象となった企業は全国の、離職率の非常に高い企業等5111カ所。その結果、このうちの82%、4189カ所、で何らかの法律違反があった。残業をさせる為に必要な労使協定を締結してなかったり、協定で定めた上限時間を超えて労働を強制していたケースが43.8%、残業代未払い23.9%、賃金・勤務時間などの労働条件を提示していなかった違反が19.4%などとなっている。業種別に見ていくと、飲食業などの「接客娯楽業」は調査対象となった事業所の87.9%で何らかの違反があったほか、運輸交通業85.5%、教育・研究業80.3%で違反が見つかっている。
具体的な事例としては、長時間労働等により精神障害を発症したとする労災請求があった事業場で、その後も、月80時間を超える時間外労働が認められた企業。社員の7割が係長職以上の者を管理監督者として取り扱い、割増賃金を支払っていなかった会社。賃金が、約1年にわたる長期間支払われていなかったことについて指導したが、是正されない会社があったという。
厚生労働省は、違反・問題等が認められた企業に対して、是正勧告書等を交付し、是正に向けた指導を行っている。是正がなされていない企業については、引き続き、是正の確認を行っていくとしている。それでもなお、違反を是正しない企業については、送検も視野に入れて対応して、送検した場合には、企業名等を公表するとしている。
社会的な大きな問題になりつつブラック企業。厚生労働省の取り組みは、頼もしいが、やはり一番大切なことは、自分でネットを始めとしたツールで、ブラックか否かを見極める目を持つことだろう(久保田雄城)